この本、長年作者とタイトルだけ知っていた。あと、この作品が第1回芥川賞受賞作。
その情報、「バースデーカード」という映画でヒロイン橋本愛がアタック25に出場したときに出題された問題w
なのでこの小説がブラジル移民を描いたルポルタージュだとは知らなかった。
石川達三(1905-1985)は実際にブラジル移民船に乗船取材してこの本を書いたとは知らなかった。
第一部「蒼氓」は神戸・三宮にあった全国から集まった移民希望者を収容し健康診断する施設の風景。
蒼氓の氓って、この小説でしか見たことない漢字。今までなんとなくしか目にしてなくて書けない漢字。
この時代は世界恐慌で日本国内に食べていけない貧農が増加。わずかな田畑を処分しお金に変えて、故郷を捨てブラジルへ渡る家族たち。それぞれの面々の描き方が映画ぽいなと感じた。
移民するほとんどが無学で無知で汚らしい身なり。移民を斡旋し面倒を見る係官的な人々も自然と上から下に見る様な蔑むような態度。実質、日本が面倒見切れなくなった人々。
第二部「南海航路」は1000人規模の客船の旅。
自分はブラジル航路っててっきり太平洋を横断して航行するものだと思ってた。神戸から香港、シンガポール、セイロンを経て、南アフリカ・ダーバンを経て、ブラジル・サントスへ向かう。各地で積み荷を積んで運ぶ世界貿易の風景。
この時代は世界で排日が起こってた。日本政府は国費で移民を運営してるわけだが、汚い着物姿の貧農に洋装することを指導。各港で日本人として恥ずかしくないように指導。
45日の船旅。故郷の貧しい村に居る分にはわからなかったことだが、大勢で雑魚寝の三等切符の彼らは、一等船室の乗客と厨房の食材を見て、大きな格差があることを知る。
赤道付近の灼熱でぐったりしたり、生まれたばかりの嬰児が死んだりということもあるけど、甲板では相撲大会などのレクリエーションもあって、それほど悲惨に感じない。
だが、ブラジルではコーヒー輸出単一経済が価格下落で在庫が増え、移民労働者が食べていけないなどの情報が伝わってきて不安…。
第三部「声無き民」
ブラジル移民一世のよほど悲惨な境遇が待ち構えているかと思いきや、諦観というよりも希望を感じさせた。
さらに健康的でな気候と感染症や病害虫や野生動物のいる不毛の土地へ送られ悲惨な生活を強いられた人々もいる。実質的に日本の国家ぐるみの棄民政策。
そういう同胞たちにの事は教科書で事実だけ読んでもあまりピンときてなかった。こういう文学作品の心に訴える力も重要。
今現在の日本の老人たちの親や祖父の時代は貧乏子だくさんを実際に体験し見て育った。人が多すぎて人として扱われない様子を見てきた。
なので団塊ジュニア世代には人口爆発の恐怖と明るい家族計画を力説。中学校では徹底して色気づかないように教育指導。明るい家族計画の結果、生まれる子供が日本の歴史上、最低水準に達した。
今になって労働力不足から海外から移民を入れるとかとんでもない。日本の富を独占する上位1%が5人とか10人とか産み育てて、それでも不足なら検討に入ってもいいかな?っていう課題。
0 件のコメント:
コメントを投稿