辻真先「夜明け前の殺人」(1999)を実業之日本社文庫(2022)で読む。これが初文庫化らしい。
辻真先(1932-)という大ベテラン作家を自分はまだ一冊も読んだことなかった。
この本は110円握りしめてBOに出かけて、タイトルと表紙ジャケットを見てカンで選んだもの。
大手商社三ツ江通産は文化推進事業として劇団を支援。新進気鋭の劇作家・演出家が手掛ける島崎藤村「夜明け前」舞台公演の終盤で、看板女優が謎の服毒死。
そこから10年、舞台で死んだ女優の弟・祐介(舞台俳優志望)が成長してフランスから帰国。姉の死の真相を探る。
これ、事件自体が地味だし暗いし、劇団と商社の広報室社員と部下と家族と会話やりとりが延々と続く。ページをめくってもめくっても面白くなってくれない。
1999年に発表されたものらしいのに、なんだか80年代の松本清張を読んでいるかのよう。ぜんぜん現代の作品という感じがしない。
終盤になってやっと主人公祐介が真相を聴かせてくれる。ただ、読者にはその後の悲劇が示されている。
どうもそのへんが劇的効果があったりしない。むしろ、なんでこんなにテンポ悪い?なんでこんな構成?と読んでて心配になる。
なんか、80年代赤川次郎のような青春ミステリーぽかった。トリックといってもカーディガンの色の件なわけだが、読者のほとんどは「そんなことじゃないかと思ったw」というのが感想だろう。
正直、そんなに意外な真相というわけでもなく、登場人物たちの造形にもトリックにも新鮮さもなく、犯行動機も強引で、それほど面白くも感じなかった。
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