これが高木彬光(1920-1995)のデビュー作らしい。名探偵・神津恭介の華麗な初登場らしい。日本推理小説の歴史でわりと有名作なので今回初めて読んでみた。戦後の推理作家としてかなり有名なのに、自分はこの作家の本をまだ2冊ぐらいしか読んだことない。
東京帝大理乙卒業後に中国大陸と南方を経て終戦した元軍医の松下研三(29)は兄が警視庁捜査一課長で、なんとなく大学研究室に戻って法医学など研究してる。
松下は、刺青を愛好する団体の彫勇会で知り合った背中に大蛇の刺青のある美女・野村絹江(父と兄が彫物師)に誘われ、絹江の経営する酒場「セルパン」を訪問。絹江の誘惑のままに関係を持ってしまう。
後日、絹江宅に出向くと、鍵のかかった浴室で女の片腕を発見。ヒイィッ!?
研三は兄捜査一課長と現場を捜査。浴室は密室?!
被害者女の情夫の番頭、刺青に強い執着とこだわりをもつ博士など、容疑者登場。
そして、情夫の拳銃自殺(?)したとみられる遺体の発見。
そして、重大な証人の殺害。そんなこんながあって、3ぶんの2ほど読んだ地点で読者への挑戦。
そして、研三は三四郎池で天才・神津恭介との再会。この男も東大医学部なのに戦地へ行って帰還してたのか。
こいつは自分の頭脳に絶対の自信を持つ探偵。ちょっと見聞きしただけで犯人がわかった様子。密室の謎をささっと解き、アリバイもささっと崩す。そして犯人を罠にかける…。
新憲法以前のおおざっぱで荒い警察の捜査に時代を感じる古くさい推理小説。登場人物たちの会話と口調も古い江戸っ子。
この本を今でも好きだという人は少なくないだろうけど、自分としては「まあこんなものか」という感想。語り口と文体はまだ江戸川乱歩の影響下にあるといえますまいか。
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