2022年11月3日木曜日

岩波新書555「イギリス美術」(1998)

岩波新書555「イギリス美術」高橋裕子(1998)という本が目に留まったので読む。ちょっと前の本だけど読む。
自分、イギリスの絵画と言っても、ターナーとかコンスタブルの風景画、貴族たちの肖像画、ラファエル前派、あとはもうフランシス・ベーコンを思い浮かべたらもう何も出てこない。何かイギリス絵画に関する知識を得るために読む。

ロンドンに留学していた夏目漱石は「坊ちゃん」で赤シャツに「あの松を見給え、幹が真直で、上が傘のように開いてターナーの画にありそうだね」と語らせている。日本人がターナーという画家の名前を知った最初は「坊ちゃん」であった可能性が高い。自分もそうだった。
そして「草枕」ではエバレット・ミレイの「オフィーリア」を「風流な土左衛門」と呼んでいる。この2枚の絵画は漱石に多大なインパクトを与えたようだ。

そういえば英国の中世以前の絵画とか宗教画というものも見たことがない。なんで?それはヘンリー8世の宗教改革によるイコノクラスム(聖像破壊運動)のせいだった。それ以前の教会の聖像はハンマーで破壊されまくってた。
ああ、そうか。そういわれたらそうだな。今までイギリス美術というくくりで考えたことなかったために、そこに考えが及んでなかった。

プロテスタントの土地では宗教画の需要もない。ヘンリー8世やトマス・モアの肖像画を描いたハンス・ホルバインはスイス・バーゼルからやって来た。なのでイギリス人ではない。
最初のイギリス人画家というと、エリザベス女王の細密肖像画を描いたニコラス・ヒリアード(1547-1619)か。

およそ時代の流れに沿って、肖像画、風俗画、歴史・物語画、風景画と、英国の画家たちが何を描いてきたのかをおさらいする。
産業革命は自営農民を没落させ都市部に労働者という貧困層を増大させ社会問題化させた。コンスタブルは田舎風景を描き、ファイルズは救貧院の臨時宿泊所に並ぶ人々を描いた。

19世紀末はギリシャ古典とジャポニスムの影響。ロセッティやバーン=ジョーンズのラファエル前派が登場。
自分、アガサ・クリスティの生み出した老嬢ミス・マープルが好きだというアルマ=タデマとフレデリク・レイトンを知らなかった。

後は英国の絵画以外のジャンル、造園、建築、インテリア、工業デザイン、ウェッジウッドの陶器、ウィリアム・モリス、アーツアンドクラフツ運動、挿絵、カリカチュア、ポップアートなどを駆け足で列挙紹介して終わる。
多くの人名が次々と登場していく。こういうの、いつかその名前に出会ったときに役に立つかもしれない。

あとそういえば、英国では静物画というジャンルがほとんど発達しなかったし人気薄だということも知った。

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