2022年5月8日日曜日

福本莉子「昭和歌謡ミュージカル また逢う日まで」(2022)

スペシャルドラマ「昭和歌謡ミュージカル また逢う日まで」が4月30日にBSプレミアムで放送されたのでチェックした。事前に何も情報を知らなくて慌てて予約した。

舞台は昭和63年東京。場末のカラオケスナックで母(斉藤由貴)の仕事を手伝うヒロイン磯野さえを東宝芸能の若手女優福本莉子が演じる。

ホステスのような接客をしつつステージで歌う。客から指名料?をもらう。振付けありの本気の昭和歌謡ショー。客たちも唄い踊る。
そんなミュージカル要素を取り入れたパラレルワールドファンタジー。
ヒロインは歌手オーディションを受けつつ窓口案内OLとして会社勤め。
上司が分かりやすく昭和なセクハラとパワハラ。飲みに誘ってるのに無下に断るヒロインに対し、後ろから肩をもみながら「オマエさあ、口の利き方に気を付けないと会社にいられないどころか嫁にも行けないぞ。もしかして磯野ちゃん、今日、あの日?」わかりやすい昭和の上司。

こういうのを見ると、平成の人々は「これではいけない」と男女同権を求めて闘ってきた結果が現在の令和なんだなと思える。今を生きる若者は幸せだと。
そんな昭和時代に生きづらさを感じてる昭和ヒロイン。他の時代に生れていれば…と考える。そこに謎の初老の男(塚本晋也)がスナックにやってきて、ヒロインに飴玉を渡す。飴玉を口にしたヒロインはスナックでワンマンショーをしてる最中に倒れ込む。店の前で目を覚ますとそこは、パラレルワールド「令和」だった!

自分、てっきり「またタイムトラベルするヒロインものか」と思っていたのだが、なんとこのドラマは、周囲の人間関係はそのままに、昭和ヒロインだけが令和パラレルワールドへ単身トリップするという「もしもボックス」のようなストーリーだった。
会社の上司たちがすっかり大人しくなっててこちらに気を遣うようになってるし、会社に案内ロボットがいて驚く。自分のバッグの中にスマホがあって母から電話がかかってくるのだが、初めて見るスマホの操作がわからない。

同僚OLたちも髪を逆立て盛ってたのに普通になってる。小さな子どものいたOLが会社に子どもを連れてきている。託児施設があることに驚く。男漁りがディスコでなくてマッチングアプリになっている。そして東京にスカイツリーというでっかい塔が立っていることに驚く。昭和と令和はそれぐらい違っている。
自分は疲れている…ということで会社を早退し実家スナックへ。なんとタピオカを出すカフェになっていて戸惑う。
しかも、劇団作家志望の若い雇われ店長の男(浅香航大)がスナックだった店のステージで寝起きしている。思わず「あなたは私の夫なの?」

ヒロインはカフェで接客を開始するのだが、「マリトッツォ」が言えない。それは昭和をバカにしてるぞ。イタリアの食材が日本に入ってきてメジャーになったのは昭和バブル時代だぞ。
で、カフェに父と来ていた幼い少女と一緒に歌い踊り出してしまう。自分、ピンクレディーの「透明人間」をサビしか知らなかった。こんな歌だったのか。
なぜか周囲も巻き込まれるように歌い踊り出す。歌詞も振付けも知らないはずなのに完璧に歌って踊れる。止めようと間に入った店長も照れながら踊ってしまう。

その様子をスマホで撮影した動画がSNSでバズって人気。「え、テレビ?!」
ヒロインはこの時代が合っていると感じる。かつて父を蝕んだ昭和歌謡が嫌いだったのだが、今では好きだし毎日が楽しい!
だが、令和の負の側面も見えてくる。みんなスマホを見てばかりいる。ネット上で悪口を書かれる。それに、会社の同僚が派遣を切られるという事態。さらに、スナック店長も夢を諦め劇団を解散…。

そしてヒロインは自分の時代へ帰る決心。ラストはちょっと「君の名は」も連想。
これは今まで見た福本莉子の出演作で最高に良い仕事。傑作。とてもよく練られてる。
なにより昭和歌謡ミュージカルというアイデアが良い。福本莉子が「プレイバック PART2」「赤いスイートピー」「また逢う日まで」に合わせて歌い踊る。
とても楽しく面白い90分ドラマだった。この企画は劇場映画にしてもよかったように感じた。
日本はタイムスリップものが多すぎる。これからはパラレルワールドだ!と感じたw

あと、かなりの高確率でヒロインが浜辺美波に見えた。福本と浜辺は同じ東宝芸能。こういったコメディドラマでふたりはライバルになっていくかもしれない。
矢口監督の「ダンスウィズミー」みたいでもあった。こういうの流行ってるのか?と思ったのだが、今のところ昭和バブル時代を懐かしむ昭和歌謡ミュージカルはこれしか知らない。
ミュージカルシーンはもっとあってもよかったが、これ以上増やすと役者の負担が増えるのかもしれない。

ドラマのエンドクレジットを見ると、作 桑原裕子、演出 古厩智之、とある。「作」の方のオリジナル脚本?
演出は福本莉子の東宝芸能のセンパイ長澤まさみ初主演映画「ロボコン」の古厩智之監督だ。
第8代東宝シンデレラ福本莉子がようやくいい感じになり始めた。

0 件のコメント:

コメントを投稿