2022年4月27日水曜日

八十日間世界一周(1956)

映画「八十日間世界一周」(1956)を初めて見た。BSでやってたので録画しておいたものを見た。まだヴェルヌの原作は読んだことがない。監督はマイケル・アンダーソン。
テーマ曲がすごく有名。当時この映画を見たすべての人は世界旅行に憧れたはず。

主人公のフォッグ氏(デヴィッド・ニーヴン)は変わり者独身中年英国紳士。有閑階級の社交クラブ(改革クラブ)で「80日で世界一周できるか?」という賭けにチャレンジ。

この映画が大英帝国植民地紀行。ヴィクトリア朝時代の英国と世界を実写映像で描いていて大変に興味深い。この映画が作られた当時はまだまだヴィクトリア朝時代生まれの人々が生存してたし、親がヴィクトリア朝時代人という人が大勢。馴染みがあって懐かしい風景だったに違いない。
フォッグ氏の世界一周旅行が成功するか否かで賭けの対象。ブックメーカーの風景も興味深い。登場する英国紳士たちがみんなモーニング姿にシルクハット。
ところどころで「ルール・ブリタニア」が流れる。おそらく、韓国人はこの映画を見ると「植民地支配を美化してる」と頭に血が上って見れないに違いない。

今回見て驚いたのだが、映画のほとんどが話の本筋と関係ない。お調子者で女好きで元軽業師の従僕パスパルトゥ(マリオ・モレノ、カンティンフラスとして有名だったコメディアン)が巻き起こす騒動とドタバタパントマイムがむしろメイン。原作ってそんななの?
あと、倶楽部メンバーたちがわりとみんな高齢な印象。昔の作品は登場人物たちがわりと中高年。

フランスから熱気球で移動するのだが、アルプスをこえる時優雅にサンドイッチ食べてる場合じゃないと思う。寒さで震えてるはず。それに風まかせなので、むしろ時間制限のある旅行の乗り物には向いていないのでは?

スペインでの闘牛シーンもまるで19世紀にタイムスリップしたかのようでとても楽しい。
撮影当時のスエズは動乱期。なのでほぼスタジオ撮影。だがそれでも当時の記録映像を見ているような気分になる。よく描けてる。
インドではなぜかお姫様を救出。このアウダ姫が見た目がぜんぜんインド人じゃない。「ハリーの災難」に出てたシャーリー・マクレーンだ。
フォッグ氏には銀行強盗容疑がかけられ刑事が付きまとう。だいたい以上の4人が旅の仲間。

そしてロンドンで日々入電される電信でフォッグ氏の動向を見守る人々。
どうして今現在の政治家たちはこんな服装と髭をやめてしまったのか?威厳を保つために最適。
(小室圭さんもカイザー髭にモーニングにシルクハット、懐中時計とステッキというスタイルならマスコミにもナメられなかっただろうに。)
インドの鉄道シーンでは象さんが並走。たのしい。大河の鉄橋を鉄道が渡る。このシーンの鉄橋はまだあるんだろうか。
ラングーンから香港、横浜へ。これもほとんどがパスパルトゥの騒動パントマイム。この映画は言葉がわからなくても見ていて楽しい。
ハリウッド映画に出てくる日本は珍妙なものが少なくないのだが、この明治初年ごろの日本風景はわりとまとも。

サンフランシスコの酒場シーンにはマレーネ・ディートリヒさんも出演。さらに酒場ピアニスト役でフランク・シナトラがワンシーン出演。そんなカメオ出演者だらけで成り立ってる娯楽映画。真剣に見るような映画じゃない。
西部を鉄道で横断。自分、インディアン(ネイティブアメリカン)が「アワアワ」と奇声を発しながら蒸気機関車を襲撃してくる映画を初めて見た。弓矢を放ち石斧で列車に乗り込んでくるインディアンを拳銃で撃ち殺していく映画を初めて見た。
(そういえば今のアメリカ人はもうインディアンごっこをしないような気がする。クリーブランドの野球チームも名前を変えるらしい。)

ここでもパスパルトゥが汽車、駅馬車、馬、騎兵隊の追いつ追われつのアクション。パスパルトゥがインディアン(スー族)に捕られらえ救出に向かってる間に蒸気機関車はオマハ(ネブラスカ)へと出発。追いつく方法がさすがヴェルヌらしい。たぶんスピルバーグ監督はこういう映画を見て育ったんだろうと感じた。

ニューヨークからの船は当時は数日に1便。大富豪のフォッグ氏は船を買い取る。
石炭がなくなると船内の木材を全て燃やして追いつく。このシーンで「未来少年コナン」のバラクーダ号シーンも思い出した。だが、女神像やマストも燃やしてしまうのはバカ。
そして英国上陸。鉄道に乗り込もうというその時に銀行強盗容疑でフォッグ氏は逮捕されてしまう。もう制限時間に間に合わない?!
結論から言ってこれはとても楽しい映画。まるで内容がないのだが、ラスト10分を見ると、この映画もSF映画と言っていいのでは?と感じた。当時の人々が思いもしなかった科学的知見で80日以内に旅行が収まってしまった!

あと、アメリカ人が大英帝国の紳士を見て笑おうという意図も感じた。英国紳士ユーモアに未開で野蛮な米国人たちが太刀打ちできていない。英国紳士は常に冷静沈着でクール。大英帝国の威厳を保つふるまい。
ラストの「女人禁制のクラブに女が!」というシーンでの姫へのフォッグ氏の説明もたぶん英国紳士あるあるジョーク?よく意味がわからなかった。

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