2021年7月24日土曜日

アガサ・クリスティー「カーテン」(1975)

アガサ・クリスティー「カーテン ポアロ最後の事件」を読む。中村能三訳2004年クリスティー文庫で読む。私的クリスティマラソン79冊目。ポアロ長編33作目。(小説版ブラックコーヒーを含めると34作目)
(現在書店で新刊として買えるクリスティー文庫は田口俊樹訳の新訳。今回読んだものは旧訳。)
CURTAIN : POIROT'S LAST CASE by Agatha Christie 1975
この作品こそが名探偵エルキュール・ポアロが死すポアロ最後の長編。発表されたのはクリスティ最晩年の1975年だが、書かれたのは1943年らしい。一時的に経済的困窮してたクリスティは作品ストックの必要性を感じてたらしい。
これを読めばすべてのポアロ長編全33冊を読み終わってしまうことになる。なので、32冊を読み終わった今になってやっとページを開く。

ポアロ初期にしか登場しなかったヘイスティングズが再登場。懐かしいスタイルズ荘にポアロを訪ねる。ラトレル大佐夫妻の経営するゲストハウスとなってるスタイルズ荘にポアロは召使と滞在中。

すでにポアロは体の自由が効かない衰弱した老人。だが、頭は冴えてる。ヘイスティングズに「この中に殺人者がいる」と知らせる。過去に起こった5つの事件に共通する殺人者Xを探す助手を務めてほしいらしい。
ヘイスティングズもすでに老人。末娘ジュディスは自分の嫌いな男の肩を持つ。それどころか恋仲?ヘイスティングズは怒りと哀しみ。

やがてラトレル大佐が夫人を誤射して怪我を負わせてしまう事件が発生。大事に至らずなにより。
そしてジュディスが師事し助手を務めるフランクリン博士の鬱病妻が薬物中毒で死亡。
さらにバードウォッチが趣味の変わり者男が密室で頭を撃ち抜いて自殺?

これ、5ぶんの4ページほど読んでもぜんぜん面白くなってくれない。ポアロは解ってるようで何もヘイスティングズに教えない。そしたら1行後にはもう死んでる。悲しい。
これは1975年の出版当時にこれを読んだ人々は「駄作中の駄作」だと失望しただろうな…と思っていた。

だが、最後のポアロの残した手記を読んで考えを改めた。やはりポアロは神のように全体像をお見通しだった。それどころかヘイスティングズやスタイルズ荘の人々を騙し、裏で手を回していた。「ポアロの犯罪」とでもいうべき、ラスト作にふさわしい作品だった。クリスティ版「レーン最後の事件」だった。

今作を読了したことでミス・マープル長編に続いて、ポアロ長編全作を読み終わった。
だが、まだ2周目の楽しみが残されている。クリスティは1回読んだものでもすでに誰が犯人だったか忘れているものも多いw

最後に、ポアロ長編33作を読破した今、個人的に面白かったポアロ長編ベスト10(2021年暫定順位)
01.オリエント急行の殺人
02.ナイルに死す
03.エッジウェア卿の死
04.邪悪の家
05.死との約束
06.葬儀を終えて
07.愛国殺人
08.三幕の殺人
09.杉の柩
10.ポアロのクリスマス

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