2021年3月12日金曜日

三谷幸喜「死との約束」(2021)

脚本家三谷幸喜によるアガサ・クリスティー翻案ドラマ第3弾「死との約束」が3月6日に放送された。前回の「黒井戸殺し」が面白かったので期待して見る。

原作では1930年代の中東ヨルダン・ペトラ遺跡が舞台なのだが、三谷幸喜は昭和30年の冬の熊野古道観光に舞台を移している。気候も季節もまるで逆。乾燥して暑い砂漠から、寒々しく湿度の高い紀伊山地に舞台を移設。

とてもクリスティ女史らしさのある古典的名作。自分は原作をすでに読んでいる。なので犯人を知っている状態で見る。
鈴木京香演じる婦人代議士上杉穂波(ウエストホルム卿夫人)の過去を、野村萬斎演じる世界一の名探偵勝呂武尊(エルキュール・ポアロ)に序盤で語らせる回想シーンがあるのには驚いた。

活字で読むクリスティなら強引な力業も許されるかもしれないが、ドラマではこれがないと「後出し」と批判されるかもしれない。なので三谷幸喜はあえて入れてきたシーンかもしれない。
この物語のヒロインである女医サラ・キング(沙羅絹子)を演じたのは比嘉愛未
自分、この人の出演したドラマも映画もあまり見たことがない。あまり三谷ドラマ常連というイメージはない。
この女優は沖縄出身だが、顔はあまり沖縄ぽくない。調べてみたら現在34歳。品のある美人でクリスティドラマのヒロインにぴったり。

熊野古道観光でポアロ野村萬斎と一緒になる。さらに、金持ち資産家本堂家(ボイントン家)の人々と一緒になる。本堂家の次男主水(レイモンド)市原隼人にちょいラブになってる。

本堂夫人(松坂慶子)が、夫の遺産を一身に握って家族を経済的にも精神的にも支配している。家族が家族外の者と口をきくのも気に入らない。息子娘たちの誰も逃げ出さず従順にお仕えしてる。そんな様子を見かねて沙羅医師は主水に自立するように忠告。

この婆さんが英米ならありえなくないけど、戦前戦中戦後を生き抜いた日本人老婆らしくはない。男尊女卑が強い昔の日本なら金を握っていてもこんな人は相手にされない。周囲がちやほやしなければ生きていけない。なのに自分から周囲をすべて敵にしてる。
長女キャロル(鏡子)が最近ドラマに映画に見かけるようになってきた堀田真由。現在22歳で売り出し中の女優。それほど美人と思えないのだが、この役はこの女優にぴったり。声質が良い。
実はこのドラマをチェックした動機のひとつが次女ジネヴラ(絢奈)を演じた原菜乃華。自分はこの子を松井玲奈に教えてもらった。そのときは12歳ぐらいだったけど、今ではもう17歳なのか。
原作を読んだ自分としては今回のドラマは正直それほど面白くはなかった。だが、原菜乃華が可愛らしくて救われたw 女医比嘉に「バカじゃないの?!」って言うシーンは萌えた。ちょい山崎天に似てる。
ポスト広瀬すず、ポスト浜辺美波としてこのまま順調に成長してほしい。この子なら横溝正史「悪魔の降誕祭」のヒロインもできそう。
最後は一同を集めてポアロの推理による真相披露。ポアロはこのシーンがなくちゃポアロじゃない。
家族の誰もが夫人殺害動機を持っていた。家族でかばいあい相互に矛盾するアリバイに勝呂ポアロは挑む。家族以外の犯行だとすると女医比嘉も容疑者?ポアロはひとりずつ検証していく。
消去法でひとりずつ消していって意外な真犯人が浮上。ここが原作で一番面白いところなのだが、加害者の過去を序盤で視聴者に教えてくれるので、それほど意外な犯人でもない。キャスト的にも。

「黒井戸殺し」よりも面白かったという人も多いのだが、自分としてはやや失望の出来栄え。野村萬斎ポアロの顔芸がさらに度が強くなっていた。2度も坂道を転げ落ちるなど三枚目キャラ変。次回は「鬼怒川下り殺人事件」をお願いしたい。

後日、まだ見てなかったスーシェ版を見たのだが、さらに原作を改変してて好きになれなかった。途中で寝てしまった。ユスティノフ版の「死海殺人事件」はまだ見ていない。

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