アガサ・クリスティー「フランクフルトへの乗客」永井淳訳の早川書房クリスティー文庫(2004)で読む。私的クリスティマラソン75冊目。
PASSENGER TO FRANKFURT by Agatha Christie 1970
肝心な場面でついふざける真面目でない性格のため、出世や重大なポストと無縁のミドル外交官サー・スタフォード・ナイ氏は、調査のために赴任したマラヤからジュネーブに向かう途中。霧のためにフランクフルト空港へ降りることになりトランジットを待っている。
すると女(美人)から貴方のマントとパスポートを貸してほしいと話しかけられる。私は命を狙われている。貴方は需要人物だからパスポートを紛失しても容易になんとかなる。と懇願説得される。
そして売店で買い物をして戻ると置いてあるコーヒーを飲むと眠ることになる。(なんでそんなものに乗っかる?)
新聞に出たり聞き取り調査されたりするけどそれほど問題にならないのが上級国民。伯母マチルダも貴族の邸宅に住んでいる。
で、あのフランクフルトでの乗客にしかわからないように新聞広告を出す。いくつかのスパイみたいなやりとりの後で女メアリ・アン(レナータ・ゼルコウスキ女伯爵という別名もある)とアルバートホールで出会う。クリスティ女史はワーグナーのオペラにも造詣が深かったのか。以後、一緒に行動。ナイ氏がいろんな場所へ行って色んな人と会う。
読んでも読んでもこれといった事件が起こらない。おしゃれで控え目なスパイものといったところだが、とくに恐ろしいことが起こらない。雰囲気的に村上春樹の「羊をめぐる冒険」みたいなテイスト。ほとんど会話シーンで進行。
1970年当時の世界情勢を織り込んでる。東西冷戦、学生運動、ソ連、毛沢東、ベトナム、パリ五月革命、南米。世界は左翼学生運動の季節。
それに「若きジークフリート」とかいうネオナチ?的な若者組織も。
ベルリンの地下壕で死んだのはヒトラーではなかった?!なんだか壮大なパラレルワールド歴史SF展開!今まで読んできたあらゆるクリスティ作品と明らかに毛色が違う。
これはクリスティ作品を十分たくさん読んできた人が最後に手に取るべき本かもしれない。面白かったか?最後まで読んでもとくに面白くなってくれなかった。驚くこともなかった。
これはダメなクリスティだったと思う。大風呂敷広げてハチャメチャなまま終わった。
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