THE TRAGEDY OF ERRORS AND OTHER STORIES by Ellery Queen 1999
エラリー・クイーンはフレデリク・ダネイ(1905-1982)が梗概を書き、二人で練り込んで、マンフレド・リー(1905-1971)が小説として完成させるという二人三脚作家。
「間違いの悲劇」は長編用に梗概だけが書かれリーの死後放置されていたもの。リーに読ませる用に書かれたものを邦訳したもの。86ページ。
おどろいた。梗概だけ読んでも十分に面白い!w 資産家女性が殺されるのだが、偽ダイイングメッセージに騙された警察、エラリーくん、遺言書、法解釈、二転三転!そして意外な真相、裏で手を引く誰か。さすがエラリー・クイーンだ。もしこれが小説として完成していたら、これは上位の人気作になっていたかもしれない。
だが、有栖川有栖氏による巻末解説がもっと面白い。創元社から小説化の打診があって承諾し、綾辻行人とも相談したりしたものの、米代理人との著作権交渉がまとまらずにその話は流れたという。それに、あらすじを読んだだけではよくわからない箇所もある。ラストの問いかけや、謎の黒人作家青年のキャラとか。これを小説化できる人がいるとすれば相当な野心家。
「動機」 1956年の初出時は「恐怖の町」というタイトルで発表。1958年にEQMMで「動機」と改められ1.5倍に加筆。田舎町の路上で起こった農夫の17歳息子失踪事件に端を発する連続三件の殺人事件の顛末。あまり本格っぽくない。田舎の男女のラブロマンス要素を盛る。ハリウッドのサスペンス映画っぽいな…と思いながら読んでいたら、1963年にヒッチコック劇場によってテレビドラマ化もされているそうだ。これは普通に面白い。動機が肝。
「結婚記念日」若い秘書と結婚したばかりのライツヴィルの資産家毒殺事件。ダイイングメッセージはポケットの中のダイヤモンド?エラリーくんが謎を解く。10ページほどの短編。
「オーストラリアから来たおじさん」深夜にエラリーのもとにやってきたオーストラリア訛のホール氏が刺殺された事件。容疑者は1人の姪と2人の甥。
「トナカイの手がかり」子ども動物園でのゴシップ誌コラムニスト殺害事件。以上3作すべてエラリーくんによる10ページほどのダイイングメッセージもの短編。
「三人の学生」エラリーくんは美味しい料理が振舞われるパズルクラブという集まりに参加。そこで出題される謎を解く。宝石を盗んだのは法学部、医学部、文学部の学生のいずれかか?こんなん、この時代のアメリカで医学部生だった人しかわからないネタ。
「仲間はずれ」これは連想ゲームみたいな内容でとくに印象に残らない短編。
「正直な詐欺師」これも今日の水準ではほんのちょっとした謎程度のお話。
結果、「間違いの悲劇」と「動機」は読む価値がある。それ以外は子ども向け雑誌の読物程度。
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