2020年12月17日木曜日

アガサ・クリスティー「愛の探偵たち」(1950)

アガサ・クリスティー「愛の探偵たち」(2004 早川書房 クリスティー文庫)を読む。訳者は宇佐川晶子。1925年から1948年に書かれた8短編を集めた一冊。どの作品が何年に初出なのか?巻末解説の内容が薄くて不明。
THREE BLIND MICE AND OTHER STORIES by Agatha Christie
私的クリスティマラソン72冊目。これも2年前に100円で購入確保してほいた本。では順番に読んでいく。

三匹の盲目のねずみ(1948) 128Pの中編。これは有名な戯曲「ねずみとり」の原型となったオリジナル。まず冒頭でロンドンで夫人が殺された事件のワンシーンが示される。そして、おばから相続した田舎のマナーハウスでゲストハウスを開業したジャイルズ&モリー夫妻。オープン初日の雪の夜、黒いオーバーコートにマフラーのレン氏がやってくる。

いろんな客がやってくる。刑事もやってきて、そして宿泊客の口うるさい夫人が絞殺される。外は吹雪で電話も不通。クローズドサークル殺人。戦争中に疎開先で起こった児童虐待死事件の逆恨み?正直マザーグース的なものはよくわからない。

みんな怪しい。そして、意外な真相。幕引きもささっと鮮やか。最後は恋愛要素。クリスティでなくとも舞台作品にしたくなるクオリティ。これがクリスティ!という古典的スリラー。これは傑作といっていい。自分はまだ戯曲「ねずみとり」を読んでいない。

奇妙な冗談(1944) 伯父が残してくれた資産がどこにもない!という相談がミス・マープルの元へ。この相談者男女がマープルに対してわりと信頼感ゼロで脱線話にイライラしてるw なのに親切にも「財宝」の謎を自身の人生経験から解いてあげるマープル嬢。

昔ながらの殺人事件(1942) セントメアリミード村で老婦人が居間で絞殺されて発見された事件。夫人の資産を相続する夫が疑われる。これもマープル老嬢が人生経験から「たぶんこう!」と簡単に手際よく解決。それにしても最初に現場に駆け付けた警察官が大事な物的証拠を拾って上着に刺したままにしてちゃまずいだろ。

申し分のないメイド(1942) ミス・マープルのメイドのいとこが奉公先でブローチ盗難事件に巻き込まれ解雇された話。マープル婆さんは奉公先のスキナー姉妹の真実を見抜く。

管理人事件(1942)病で寝込んだマープル婆さんにヘイドック医師が置いていった原稿。村の悪童はアフリカでの軍役から帰ってくると資産家フランス人妻を連れていた。村一番の豪邸を建てたが近所の老婆を妻は怖がる。やがて落馬事故で妻死亡。その裏に隠された陰謀。

四階のフラット(1929) パーティー帰りの若者4人「アパートの鍵がない!」ということで話し合いの末、石炭用リフトで4階フラットへ侵入するも、間違って3階のフラットへ。真っ暗な中、女性の死体を発見。そして、5階フラットの住人がアルキュール・ポアロ。ふらっと現れて事件を解決。

ジョニー・ウェイバリーの冒険(1928) ジョニー坊や誘拐事件の相談を持ち掛けられたポアロ。誘拐が起こる前から身代金を要求する警告や誘拐日時の予告があるとか不自然な展開。ポアロが鮮やかに解決。ポアロがいきなりヘイスティングズに語りかける場面に驚いた。いたのかヘイスティングズ!とページを戻ったw

愛の探偵たち(1926) これが自分にとって初のクィン氏登場短編。老人が鈍器で殴られ死んでいる。愛するふたりが双方が犯人だと思い込み、自分がやったとかばいあう。けど、それって小説っぽくない?というクィン氏。

訳が新しいせいかとても読みやすくわかりやすい。どれもが好きな感じ。「管理人事件」は後の長編「終わりなき夜に生れつく」と同じプロット。

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