2021年1月26日火曜日

綾辻行人「どんどん橋、落ちた」(1999)

綾辻行人「どんどん橋、落ちた」(1999)を読む。3年前の夏に100円で見つけて買っておいた講談社文庫2012年第11刷で読む。これで買っておいた綾辻ストックをすべて読んだことになる。

これは前5話からなる短編集だが、1ページ目で、著者から順番通りに読むように警告される。なので順番に読んでいく。

第1話「どんどん橋、落ちた」
1991年の大みそか、仕事用に借りているアパートに10歳ほども年下の大学の後輩らしき男Uがライダー姿でやってきて、自信作だという推理小説原稿を読まされる。
この短編推理小説の登場人物たちが、日本とは思えないようなネーミングになっている。まるで記号のような存在。

キャンプに来ていた大学生たちの弟(やんちゃ小学生)が崖の向こうに渡る吊り橋の向こう側に渡ったら、橋が崩れ落ち退路を断たれて立ち往生。発見した兄が助けを求めに行ってる間に転落死していた事件。「読者への挑戦」を経て「解答編」がある。

これが典型的な叙述トリックもの。活字の向こう側にある違和感を感じ取った人だけがたどりつける真相。

第2話「ぼうぼう森、燃えた」
これは必ず第1話を読んでから読まないといけない。なんと登場人物たちはほとんどが犬。まるで銀牙。ボス犬を殺したのは犬か?人か?第1話とは異なるパターンの叙述トリック。

第3話「フェラーリは見ていた」
綾辻先生は八ヶ岳山麓の別荘に招待され酒を飲んでると編集者妻から隣村で起こった事件について聴かされる。フェラーリを乗り回す派手好き老人の飼っていた猿が殺された事件。これもやっぱり叙述トリック。

自分は「フェラーリがランボルギーニだったら」という別アイデアのストーリーを考えながら読んでいたので、この真相をちょっと予見していた。
第3話は独立してて順番に読む必要はないが、叙述トリックのパターンを学んでいくためには順に読むべき?

第4話「伊園家の崩壊」
戦後日本の国民的「明るく平和な家族」伊園家が、母ツネの狂死をきっかけに全員不幸になって死んでいくブラックな展開に呆然w いたたまれない。これは叙述トリックものでない。ごく一般的なミステリー。誰にでも広くオススメする。これ単品で読むのも可。

第5話「意外な犯人」
第1話第2話に登場したUが5年ぶりに来訪。今度は綾辻先生が以前書いたテレビドラマのビデオテープ持参。テレビ局を舞台にした殺人事件ドラマの犯人当てを挑戦される。劇中劇にアヤツジという作家が登場。探偵役はいとうせいこう氏。

この文庫本は5本すべて面白い。どれも斬新なアイデア。面白い本は読みたいが厚い本は読みたくないという人にオススメ。

0 件のコメント:

コメントを投稿