2020年7月22日水曜日

アイスキュロス「アガメムノーン」(BC.458)

引き続きアイスキュロス「アガメムノーン」(BC.458)を読む。1998年久保正彰訳岩波文庫で読む。

アルゴス王アガメムノーンはギリシャ(アカイア)軍総大将としてトロイアへ遠征して早10年。帰還を待つ王妃クリュタイメーストラー(クリュタイムネーストラーと表記する本も多い)に松明のかがり火でいち早くトロイアのイーリオンが陥落した知らせが届く。長老たちコロスとの対話でそのへんの設定が読者に示される。

そして王の帰還。王の弟メネラーオスの船は帰還の途中で遭難。
王はトロイアの王女で予言者カッサンドラーを捕虜(奴隷)として連れ帰る。この女は何もしゃべれない様子だったのだが、幼い子どもたちが殺されたことを言い当て、アガメムノーン王の死と自身の死を予言する。

カッサンドラーの嘆きの絶叫が独特「おっおっおっおっおぃ、ぽ、ぽぃ、だぁ。」「おぉポローン、おぉポローン!」「ぺぅー、ぺぅー!」ギリシャ人とトロイア人の言葉はまったく違ってたらしい。

クリュタイメーストラーは娘イーピゲネイアが出陣のさいに戦勝祈願の生け贄にされたことでアガメムノーンを恨んでいる。(古代は王の子が生け贄にされてたのか)

そしてアガメムノーン王遠征中に王の従弟アイギストスとの不貞関係。アイギストスの父テュエステースはアガメムノーンの父で先王アトレウスから、殺された幼い息子(アイギストスの兄たち)の肉を饗宴で食わされるという酷い仕打ちへの恨みを晴らすべく、クリュタイメーストラーと共謀しアガメムノーンを暗殺。

アガメムノーン王の死体、アイギストスとクリュタイメーストラーが登場しすべてを告白。
王を殺し僭主となろうとするアイギストスと長老たちコロスと口論のやりとりの最中で劇は突然バッサリ終わる。

信じられないほどの血にまみれた陰惨な呪われた一族。これは子どもたちに読ませられない。
だが、偉大な詩人アイスキュロスの文体は日本語訳でも声に出して読みたいほどに美しい。

暗殺の場面で終わった劇は、アガメムノーン王の息子オレステスが仇討する話へと続く。つぎは「オレスティア」三部作の「供養する女たち」か、ソポクレスの「エレクトラ」が読みたいところ。

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