2020年5月16日土曜日

アガサ・クリスティー「運命の裏木戸」(1973)

アガサ・クリスティー「運命の裏木戸」(1973)を中村能三訳1981年ハヤカワ・ミステリ文庫版で読む。古くてだいぶ汚い。私的クリスティマラソン67冊目。
POSTERN OF FATE by Agatha Christie 1973
この作品が「トミー&タペンス」シリーズのラスト作。「秘密機関」(1922)では20歳ちょっとだったふたりも今作では75歳前後の老人夫婦。

文中に過去作の回想シーンが出てくる。この前作「親指のうずき」を先に読みたかったところだが、出会ったものから読んでいくのが自分なので致し方ない。
そしてこれが発表当時83歳だったクリスティ女史にとっても作家人生最後の作品。

引っ越し先の旧家で本の整理をしていたベレズフォード夫妻。タペンスが懐かしい本を読んでいると、ところどころアルファベットに赤インクでアンダーラインが引いてある。「メアリー・ジョーダンは自然死ではない」

本には子どもの字でアレグザンダー・パーキンソンと書名。この土地にはパーキンソンという一族がいたらしい。トミーとタペンスは村の方々へ出かけてそれぞれに聴き込み開始。

墓場でアレグザンダーの墓碑銘を発見。享年14歳。
第1次大戦中にパーキンソン家の屋敷で、ドイツのスパイとも噂されたメアリーという外国人の美女が誤って毒草を食べて死んでいた。
この時代、まだ第1次大戦を記憶していた人が生きていた。ツェッペリン飛行船はロンドンを空襲していたって、この本を読むまで知らなかった。

コールドケースものと思いきや、結局これもドイツスパイスリラーものだった。トミー&タペンスのシリーズはどれも同じような日常に潜むスパイもの。第5列という言葉がよく出てくる。70年代英国でもファシスト勢力はまだ存在してたのか。

83歳でこれほどの作品が書けたことはすごい。クリスティ作品は会話が多くてサクサク読める。会話が冗長ではあるのだがそれなりに楽しかった。
英国紳士たちの会話はユーモアがあって上品。ムダ会話といえばエラリー・クイーンだが、英国人と違ってヤンキーたちはみんな粗雑で下品で嫌。そこが違う。

だが、やはりテンポに爽快さがないし重要な情報の出方が劇的でも効果的でもない。初めて読むクリスティにこれを選んではいけない。

夫妻が飼ってるハンニバルというマンチェスター・テリア犬が大活躍する。どんな犬が知らないので調べた。これなら犯人を追いかけ回すことはできそうだ。

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