2020年4月21日火曜日

芥川龍之介「河童」(昭和2年)

芥川龍之介「河童」を読みたくてこの一冊を手に取った。1969年岩波文庫版で読む。

河童(昭和2年)
ある若い精神病患者の体験談を書き留めた風刺的空想社会小説。上高地の穂高を登ろうとしていて河童に遭遇。追いかけてたら穴に落ち、目が覚めたらそこは河童の国の河童の街。大正から昭和へという日本の社会を風刺したような、日本を鏡に映した向こうの世界のような場所。

河童の出産シーンを読むと、芥川は母親が発狂して死んだということに強い不安と圧迫を感じていたんだなと想う。生まれてくる前に同意を求めるとか、優生思想とか、資本家と職工とか、時代の雰囲気を感じる。
雌が雄を追いかけて抱き着いて求婚するとか、女性問題で酷い目に遭った芥川の女性に対する恨みのようなものも垣間見えたw

面白い短編なので子どもたちの間でもっと読まれてもいいと感じたけど、やはり理解しがたい面もある。

蜃気楼(昭和2年)
とくに何も起こらないストーリーもない日常の一風景。水葬された死体についていた木札とか、片方だけの靴とか、ただ黙ってすれ違う男とか。ただ、自分は何か漠然とした不安を感じた。

三つの窓(昭和2年)
横須賀に寄港した軍艦での一コマ。いや、三コマ。軍艦は寄港すると艦内に鼠が増えるということを知った。
自分の発狂を恐れていた芥川は、友人の宇野浩二の発狂も見ていた。自身と宇野を戦艦にたとえてる。

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