北山猛邦「踊るジョーカー 名探偵 音野順の事件簿」(2008 東京創元社)を読む。
2007年から2008年にかけて「ミステリーズ!」誌に掲載された4本と書き下ろし1本から成る短編集。
音野がホームズで白瀬がワトソン。これまでいくつもの謎事件を探偵音野が解明しそれを作家白瀬が本にしてきた。本の印税で事務所を借り、その片隅に音野のデスクがある。という設定。
この探偵音野が気弱引きこもり探偵ということで一人では何もできない社会生存能力ゼロの若者。友人白瀬が尻をたたいて名探偵に仕立て上げる。
この二人の関係が謎。白瀬はケータイも持っていない音野のためにケータイを買って与えないと…と考え、良い電気スタンドを買ってプレゼントすることを夢見る。
「踊るジョーカー」
資産家屋敷での密室殺人事件。部屋に散らばったトランプと、トランプ50枚貫かれ刺さったままのナイフの謎。
これ、物理トリック一発勝負のネタ。そんなことができるのか?映像で見ないと納得できない。音野をイジメる刑事が公務員にしては異常に粗暴で読んでいてイラつく。
「時間泥棒」
資産家の兄と妹が暮らす屋敷で、なぜかそれほど高価でもない時計だけが部屋から知らず知らずに盗まれている。それは一体なぜ?
これもアイデア一発短編。「ああ、なるほど」とうなることができた人にはたぶん面白い。
「見えないダイイング・メッセージ」
強盗殺人事件の被害者はなぜか部屋のポラロイド写真1枚撮影しダイイングメッセージとしていた。そこに金庫の暗証番号が?
これは独創性があって新鮮で隠れた名作だと感じた。音野の兄はなんと世界で活躍するオーケストラ指揮者?!
「毒入りバレンタイン・チョコ」
大学の心理学研究室ゼミで起こった青酸化合物入りチョコによる毒殺未遂事件。
犯人はどうやって特定の人物にたった1個の毒入りチョコを取らせたのか?
物理トリック一発アイデア勝負の短編だが、これも他に例を知らない独創性。
「ゆきだるまが殺しにやってくる」
雪の山道を車で走る白瀬と音野。完全に道に迷う。するとそこに雪だるまがいくつもある豪邸が!親切にも泊めてもらうことに。
その晩その家では20歳になる娘への求婚者たちが集まり、理想的なゆきだるまを作る審査が行われていた!?w そんなバカな?というシュールな世界観。
やがて求婚者の一人が雪だるまの前で撲殺。雪が降っていて警察も来れない。
容疑者はもうひとりの求婚者?だが、この求婚者は罠に嵌められたっぽい。やがて音野は真相にたどり着く。
これは「獄門島」「本陣殺人事件」を連想させる犯行時刻のアリバイを偽造する物理トリック。それでもやっぱり独創的。
結論、この5本の短編はどれもすべてレベルが高く独創的で面白かった。そして音野と白瀬の会話とやりとりが面白おかしい。
現実社会リアリティーをいっさい感じさせない本格短篇集。広くオススメする。
自分の私見だと「掟上今日子」シリーズよりも面白い。音野を浜辺や環奈に置き換えてなんとかドラマ化できないのか?
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