DOUBLE-HEADED DEVIL by Alice Arisugawa 1992「孤島パズル」という本がとても面白かった。これはその次に出た英都大学ミステリー研シリーズ。
「孤島パズル」で心に深い傷を負った有馬マリアさんは大学を休んで旅に出た。中学時代の友人の住む四国の山奥へ。
相場師が株で得た資産でまるごと買い取った廃村がある。芸術家集団が自給自足で暮らす閉鎖的なコミュニティ村になっている。そこに入ったままマリアは帰ってこない。両親に手紙はよこすのだが帰ってこない理由などハッキリしない。
そこで両親はミステリー研の面々にマリアに直接会って話を聴いて説得できないか?と依頼。江神、有栖川、望月、織田の4人が瀬戸大橋を渡り車で現地へ。ただ1軒の民宿のある対岸の村人も、深い渓谷を挟む木更村とは何も交流がない。
同じ民宿にカメラマンの男が泊ってる。こいつがゲスい写真誌記者らしい。対岸の芸術家村に潜んでいる元アイドルを追っているらしい。こいつは無断潜入するも村人に発見され対岸の吊り橋で追い返される。その巻き添えでミステリー研の4人も追い出される。
ならば、夜陰に紛れて潜入するしかない。黒澤映画のような雨の泥んこ大捕り物の末、江神ひとりだけが潜入成功。有栖川、望月、織田は民宿へ送り戻される。
マリアに会うという目的を理解してもらえた江神は芸術家村人と打ち解ける。だが、未亡人当主が住民の画家との再婚を発表した後に、アトリエとなっている鍾乳洞奥で首を絞められ死んでいる!しかも、耳を斬りとられ逆さになっている。
一方、対岸の村の有栖川らは善後策を練っているうちに、唯一の吊り橋が長雨による土石流で流されて行く現場から間一髪逃れる。電話線も不通になり、これで両岸の連絡は一切取れなくなった。
やがて写真誌記者が廃校で殺されている事件に巻き込まれる。しかも容疑者扱いされる。
マリアの中学時代の友人で看護婦、医師、教師、そして地元警察と交流しながら、あーでもないこーでもないと大学生3人で議論する様子が面白い。
両岸それぞれで江神、有栖川らが意思疎通できないまま個別に事件を推理。
やがて有栖らはエラリー・クイーンのようなガチガチロジックで被害者ポケットから発見されたメモ、民宿女将との手紙のやり取りなどから犯人を特定。
そして孤立した木更村の邸宅でも2人目の犠牲者が!遺体には香水が振り撒かれている?!
江神もまたEQガチロジックで画家殺しの犯人を特定。洞窟探検とか乱歩横溝っぽい要素もあって楽しい。
大学生探偵江神はついに両岸で起こった3つの殺人の驚くべき真相へとたどり着く。犯人の往生際が悪すぎるw
江神くんは冷酷にも悪魔の犯人に自決する余地を残す。そこ、ポアロみたいで怖い。
これ、683ページの大長編。ふつうの推理小説3冊分のボリュームがある。3つの殺人それぞれに「読者への挑戦状」がある。なので3冊読んだぐらいの疲労感。
読む前はこれは大変だと思ったけど、読んでてぜんぜん飽きなかった。わかりやすくてぐんぐんページがめくれる。
難易度のバランスがよい。とても読みごたえがあってページをめくる推進力があって大満足。
「孤島パズル」を先に読んでおくべきだけど、これを先に読んでも構わない。
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