2019年6月2日日曜日

太宰治「斜陽」(昭和22年)

太宰治「斜陽」(昭和22年)をようやく読んだ。新潮文庫で初めて読んだ。有名すぎて避けてた。たぶん暗い作品だと思ってなかなか読む気分になれなかった。

自分、2008年に津軽金木町の太宰の生家「斜陽館」を訪れた。それから11年、ようやく読み通した。

この本のヒロインは出戻り娘かず子。ヒロインは庭で見つけた蛇の卵を焼いたことで何か不安を抱える。敗戦によって西片町の家を売って伊豆の田舎町へ移り住む。

母と娘、没落する貴族。母親は体調がすぐれない。弟は南方戦線で行方知れず。生活無能力。叔父まかせ。漂流。衣服を売ってお金にして米を買うような生活。

ヒロインは浮気によって嫁ぎ先から身重のまま返されていた。そして流産。29歳。ただ家で母親の看病。
そして弟がアヘン中毒になって帰ってくる。ここから先が地獄…と書かれている。
麻薬中毒は苦しい。いっそアルコール中毒に置き換えたほうが良いという最悪のアドバイス。この生活無能力お坊ちゃん弟によってお金を失っていく。

ヒロインは恋文を三通出す。この手紙が立て続けに張り付けてあって、これまで読んだ太宰の短編でなんどか見たような、読む側が困惑する構成。
この相手が離婚の原因。東京まで訪ねるも、この男もすでにアル中廃人。やっぱり生活無能力。返せるあてのない借金をして不味い酒をあびるように飲み続ける。
終戦直後にはどこにもあった風景かもしれない。今現在も日本中でよく見る風景かもしれない。

風呂場のボヤ騒ぎ、女中として外に勤めに出る話とか、老人の師匠さんとの縁談とか、弟の絶望感のする日記とか、蛇の話とか、とにかく微妙に嫌~な話がボディブローのように効いてくる。そして母親が結核で死ぬ。田舎の老人医師、心配ないって言ってたじゃん!どうなってる。

そして弟が自殺。ついにかず子は独りぼっち。
ラストは恋文独白で終わる。身ごもった子どもに対する希望が一体なんのこっちゃよくわからない。困った。これが太宰文学だ。

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