2019年3月14日木曜日

ジュール・ヴェルヌ「地底旅行」(1864)

昨年11月、岩波少年文庫からジュール・ヴェルヌ(1828-1905)の「地底旅行」(平岡敦訳)が出た。この作品をまったく知らなかった。中学生以上向け児童書ではあるが読んでみた。
VOYAGE AU CENTRE DE LA TERRE 1864 Jules Verne
銅版画の挿絵はたぶん出版当時のもの?とても味わい深い。エドゥアール・リウー(Édouard Riou 1933-1900)という画家のもののようだ。
自分は知らなかったのだがデュマ「モンテ・クリスト伯」の挿絵もこの人の作品だったらしい。19世紀フランスの人気画家。

1863年のハンブルクから物語は始まる。
短気できまぐれな天才鉱物学者リーデンブロック教授とその甥アクセルが主人公。

12世紀アイスランドを治めたノルウェー王の年代記の稀覯本をリーデンブロック教授が手に入れる。そこからルーン文字で書かれた羊皮紙が!16世紀の錬金術師サクヌッセンムが書き残した暗号が!なにそのワクワク展開!

で、暗号解読に甥アクセルがたまたま成功。教授に強引に連れられアイスランドへ出発。

今はすぐにグーグルでリーデンブロック教授が登ったコペンハーゲンの救世主教会の塔やら、ワルキューレ号が進んだ海路を調べることができる。
この当時のレイキャビクは通りが2つしかないと書かれている。今の地図をみてもどこか不明。

地球の中心への入り口スネッフェルス山という山が実在するのか調べてみたら、今ではスナイフェルスヨークトル山というのが正しいらしい。

地下は高温なのでは?真っ暗なのでは?飲み水はどうする?という慎重なアクセルくんにたいして、教授が異常に無謀で楽観的。科学者にあるまじき希望的観測を述べ、ぐんぐん地下へと進んでいく。いちおう気圧や気温、現在地を科学的に考えながら進む。

地下水に巡り合えず乾く。迷子になり死にかける。だが、アイスランド人従者ハンスのおかげでなんとかなるw 3人だけで食料はどうしてる?電気照明のバッテリーは?

やがて地下120キロメートルで広大な海、巨大キノコの森に出会う。雲の上にある空は「光を放つ電気の層」で明るいという…。

大海を航海する。この探検の様子がまるでリアリティがない。太古の恐竜のような怪物まで出現。まるで白昼夢でも見ているかのような展開。
アーサー・C・クラーク「宇宙のランデヴー」におけるLAMA探検に雰囲気が似ていると感じた。

一体どうやって地上に還る気だ?と思いつつ最後まで読む。まさか?というかやっぱり!というラストだった。そんなことができたらいいなとは思う。

19世紀、まだ地球のことがよくわかってない時代。「地球空洞説」は今となっては間違った学説ではあったが、ロマンがあってよい。

1864年と言えば日本は文久から元治へと改元された年。7月に池田屋事件、8月に禁門の変があった年。そんな年に発表されたSF作品。期待通りといえるかもしれない。
この作品はこれまで何度も映像化されているそうだが、日本ではまだw
で、自分は日本版キャストを考えた。
リーデンブロック教授 長谷川博己
アクセル 染谷将太
ハンス 松重豊
グラウベン 有村架純

0 件のコメント:

コメントを投稿