2018年11月10日土曜日

アガサ・クリスティー「鳩のなかの猫」(1959)

アガサ・クリスティー「鳩のなかの猫」を読む。これは昨年の秋ごろに手に入れたもの。橋本福夫訳2004年早川書房クリスティー文庫版。100円。
CAT AMONG THE PIGEONS by Agatha Christie 1959
クリスティー女史51冊目の作品。これも古本屋で実物を手に取るまで存在をまったく知らなかった本。
ぜんぜん有名になってない作品だからつまらないんだろうと想像。ツイッター検索するとスーシェ版ドラマの感想が多い。

これ、推理小説でなくスパイスリラー2時間ドラマだった。
中東の架空の王国での革命クーデター騒ぎの最中に、王子から英国人青年パイロットに莫大な価値を持つ宝石の小袋を託される。
王子とパイロットは脱出を図るも機体は山中に墜落。だが、パイロットは宝石を姉の娘の所持品の中に隠していた。そいつが巡り巡ってロンドンの名門女子高メドウバンクへ。

登場人物たちにはまったく見えていないが、宝石を隠したテニスラケットと、隠す現場を手鏡で見ていた女の存在は最初から読者に明かされている。宝石を狙った何者かによって、女子高の体育館で立て続けに体育教師、ドイツ語教師、フランス語教師が殺される。

登場人物のほとんどが女教師と15歳の少女たち。だがそれほど人数が多くない。読んでいて混乱はしない。1950年代英国の名門女子高がどのようなものなのかを知る。

聡明で冒険心のある少女ジュリアは論理的推察によって一連の犯行の中心にテニスラケットがあることに気づいて宝石を発見。伯母のパーティーで知っていたポアロの元へ駆け込む。

ポアロが登場するのは終盤。最後に一室に関係者が集まって真相と犯人を指摘する。この真相は誰も言い当てられないと思う。
最後には諜報特務機関の大物のような謎の人物も登場。

この作品はクリスティー愛好家にもそれほど評判は良くないようだが、自分は楽しかった。ひと晩で読んでしまった。

登場人物たちにユーモアがある。映画のシーンとして活き活きと想像できた。日本にはスパイスリラーってジャンルはあまりないな。

0 件のコメント:

コメントを投稿