2018年9月25日火曜日

綾辻行人「人形館の殺人」(1989)

綾辻行人「人形館の殺人」(1989)を読む。今回手に入れたものは1993年講談社文庫版(1996年第16刷)。
100円だったけど、何か黒いカーボンの粉のようなものがまとわりついてて汚いw 汚いからこそラフに取り扱えて良い。

自分、綾辻「館」を時計→水車→迷路→十角と読み進めて、今回の「人形」で5作目。
「人形館」は綾辻長編作で実際は4作目。過去作への言及があったりするので、シリーズを順番に読むことが好ましいなと感じた。だが、順番通りでなくてもかまわない。

主人公の私(画家34歳)が育ての母と一緒に、父の生まれて死んだ街・京都の実家「人形館」へ移り住む。京都がじめじめ暗い寂しい街として描かれる。

この青年が病弱で孤独。自宅と近所だけを散歩。行きつけの喫茶店が1店のみ。
やがて周囲で不審な事件。自室アトリエに血のりマネキン、郵便受けに割れたガラス、転びそうな場所に石、自転車のブレーキが切断され九死に一生、頭を割られた猫の死骸…。

自宅周辺で起こる児童連続殺傷事件。そして、育ての母が自室で失火し焼死?!アパートとして賃貸に出してる部屋で売れない作家が密室で殺害!?

これまで読んできた綾辻作品とは明らかに毛色の違う異色作だったのだが、一番驚きの少ない作品だと感じた。
正直自分は早々にこの真相を、文体から「たぶんこうじゃないか」と推測していた。この作品が発表された1989年には新鮮だったかもしれないが、このパターンは今ではあまりめずらしくもない。

綾辻作品の場合、どうせまた秘密の抜け道があるんでしょ?と思っていたのだが、今回は変化球。それに、館シリーズの名探偵である島田の登場のしかたがまったく新機軸。こういう存在の仕方は他に知らない。
このパターンが初めての人は十分に驚くし楽しめると思う。

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