2018年7月11日水曜日

宮崎駿「ルパン三世 カリオストロの城」(1979)

自分はルパン三世にもアニメ全般にも特別な愛情は抱いていないのだが、この長編アニメ映画だけは特別。ルパン三世「カリオストロの城」を学生のころ以来ひさしぶりに再視聴。

この映画は冒頭から開始数分間、ほんとうに映画脚本のお手本のように素晴らしい。
国営カジノから現金を盗んだルパンと次元が逃げるシーンから、車がパンクしていきなりジャンケンを始めるシーン、そこに突然クラリスがカーチェイスするシーン、ルパンの車が崖を駆け上がってブッシュの中を疾走するシーン、崖から落ちるシーン、すべてが計算されたタイミングと演出で完璧!

クラリスを追うサングラスに山高帽の男たちがもうまるでアガサ・クリスティーのスパイ物のような雰囲気。だが、蜘蛛みたいな忍者工作員たちは徹底リアル路線からするとちょっと異質。

ルパンの車に向かって転がってくる爆弾が一発目はスカして二発目でフロントガラスが割れるとか、映画の教科書のよう。
007とインディジョーンズを合わせたような大作でもアニメなら実現可能。映画の可能性を一気に拡大した大傑作。ストーリー展開と脚本が奇跡的な精度で練り込んである。宮崎駿は天才!
オートジャイロで帰城した伯爵を老執事が歩きながらジャンパースーツを脱がせるシーンを自分も子供の頃おなじように真似しようとしたw 

ローマ水道から場内に潜入するアクションから、クラリスが幽閉されている塔へロケットでロープを渡そうとするも百円ライターが点かず尖塔屋根を駆け降りる羽目になるそんなバカなシーン(未来少年コナンでも多用)も含め、マンガアニメでしかできない表現として素晴らしい。

カリオストロ城という舞台装置がとても魅力的。死体だらけの地下空間は子供の頃ほんとうに怖かった。この遺体ひとつひとつが詳しく調査すれば歴史的学術的資料としての価値が高いというのに、最後に濁流にのみ込まれて失われたとしたらもったいない。

峰不二子が伯爵の秘書から迷彩服になるシーンも「おお!」と震えた。ルガーP08を使っとる!
この峰不二子は長澤まさみにやってほしい。

ルパンと銭形のセル画の活き活きとした動きは天才宮崎駿ならでは。ここからルパンの体を銃弾が貫通するまでのアクションの流れが完璧。
「出番のないまま退却かよ!」と言いながら落ちるカップ麺を手でキャッチする次元とか、そういった細かい箇所まで演出が行き届いていて感心。

そしてカリオストロ伯爵がヒールとして完璧で魅力的。声を演じた石田太郎が2013年に急死したのは哀しかった。そういえばルパン声優たちは次々と鬼籍に入っている。
時計の歯車の上でルパンと伯爵が闘うシーンとか天才の所業。
「未来少年コナン」でもヒュ~という風の音が高い場所の雰囲気を出していて、そういう演出も最高に良い。時計塔のクライマックスシーンが子供のころすごく怖かった。

カリオストロ公国へ行ってみたいという夢は今も実現していない。あの風景はたぶんフォロ・ロマーノ。
「ルパン、きっとまた会えるわ」ルパンとクラリスの再会はその後も実現していない。

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