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2017年7月5日水曜日

F.W.クロフツ「樽」(1920)

F.W.クロフツの「樽」(THE CASK by Freeman Wills Crofts 1920)という本がそこにあったので手に取った。
大久保康雄訳1965年版の創元推理文庫(1981年の第44刷)という古いもの。

これ、自分の読みたい本リストにあったわけでなく、ただそこで100円で売られていたから買った。カー短編集といっしょに。で、やっと読んでみた。かなり分厚くボリュームがある。

この本、アリバイ崩しもの探偵小説として古典中の古典だということは自分もなんとなく知っていた。

ロンドンの港で積荷下ろし中に落下した樽の中から金貨と死人の手が現れた!という話。警察が捜査しようとすると樽が行方不明。やがて画家の家で樽を発見。中から若い女性の死体が発見される…というストーリー。

第1部では運送会社の書記→ロンドン警視庁の巡査と警部と主役が次々に交代していく。
第2部ではパリが舞台。パリ警視庁のルファルジュ警部が聴きこみ開始。
やがて画家フェリックスが容疑者として逮捕。だが、被害者の夫であるポンプ製造会社専務ボワラック氏が一番強い動機を持っていそうなのだが、鉄壁のアリバイがある。

なにせ100年前のロンドンとパリが舞台。当時は物資の運送を樽に詰めて馬車に頼っていた。現代の日本人が読むにはややイメージしにくくハードルが高い。
ロンドンとパリを往復するので地理関係もよくイメージしにくい。巻頭に簡単な地図があるけど、当時の汽船、汽車、荷物置き場、馬車の御者、住居なんかがよくイメージできない。

捜査上で3つの移動する樽が出現。ボワラック氏のブリュッセルでのアリバイ、カフェの給仕の証言、電話、手紙、タイプライター、物語の構成要素が多すぎて複雑すぎて、たぶん多くの人はついていけなくなる。

第1部第2部は展開が地味な印象だが、第3部で画家の弁護人が雇った私立探偵ラ・トゥーシュが登場するとイッキに面白くなる!この探偵が超有能!w
決定的証拠とブレイクスルーをつぎつぎと掴んでいく。的確な判断力と交渉力を持っている。読んでいて面白い!ここからは古さを感じさせなくなる。

刑事や探偵たちが話を聞かせてもらった相手にポンポンとお金を渡していくことが印象的。これがチップ文化のない日本人からすると驚き。

この本、アリバイ崩しものだから地味でつまらないかもって思ってた。難しいけどすごく面白かった。ボリュームはあるけど冗長さや無駄に感じる描写は一切ない。歴史に名を残すのも納得の大傑作! 松本清張の「点と線」「ゼロの焦点」を合わせたよりも面白い。一度は読むことをオススメ!

3 件のコメント:

  1. 川崎鶴見U2017年7月7日 0:44

    クリスティー「そして誰もいなくなった」にはポワロもマープルも出ない。
    カー「火刑法廷」にはバンコランも、HMもフェル博士も出てこない。
    クイーン「Xの悲劇」「Yの悲劇」にはエラリーが出てこない。
    クロフツ「樽」にはフレンチ警部が出てこない。
    どれも一番の代表作だっていうのにね。そういうものなのでしょうか。

    クロフツは「樽」を含めて沢山持っているけど(クロフツの場合、全部古本です)、フレンチ警部がでないからか「樽」は未だに読んでいない。ていうか自分には「樽」を読む根性と体力がない。ブロバーさん、さすがっす。

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  2. 川崎鶴見U2017年7月7日 0:46

    失礼!
    ブロバーさん × 
      ↓
    ブロガーさん 

    返信削除
  3. 自分はキャラ重視よりストーリー重視ですかねえ。名作も駄作も選ばないで読んでますけど。

    英国ばあさんミス・マープルは今のところちょっと避けてきてます。でも、ポアロものを一通り読んだら手に取ろうと思います。

    たしかに「樽」の前半は読むのに根気が要りますね。自分も完全にはわかってないw

    「そして誰もいなくなった」も買いました。そのうち感想を書きます。

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