2017年6月2日金曜日

カー短編全集2「妖魔の森の家」(1947)

ディクスン・カー短編全集2「妖魔の森の家」(宇野利泰 訳 創元推理文庫)がそこにあったので手に入れた。410円で購入。1970年初版文庫の2013年の第40刷。わりとキレイ。

THE THIRD BULLET
THE HOUSE IN GOBLIN WOOD
AND OTHER STORIES
by
John Dickson Carr 1947

この作品集が作者のどういう位置づけかわからないが、古本でそこにある本を読むのが自分のスタイル。それに自分はどちらかというと短編集が好き。結論を急ぎたい性質。
それに今までずっとエラリイ・クイーンやヴァン・ダインを読んできた中で、カーが自分に一番合ってるような気がした。

1本目「妖魔の森の家」(1947)を読む。
40ページと少しの短編。妖魔って?Goblinを訳した言葉か。セーラームーンを連想したわw

大戦の数年前のロンドン郊外が舞台らしい。森の中のバンガローで資産家の女性が失踪する事件。この女性はそこからさらに20年前の幼女時代にも同じバンガローで失踪し1週間後に戻るという事件に遭遇していた。

これ、面白い!ユーモアもありつつブラック。細かいところまで精度が高い。自分は最後まで騙されてた。
このアイデアは少しアレンジすれば日本を舞台にしてもドラマ化できそうだ。ヘンリー・メリヴェール卿が階段のバナナの皮で転倒して悪態をつくとか笑わせるシーンを、自分は鶴瓶師匠で脳内再生していたw

2本目「軽率だった夜盗 The Incautious Burglar (Guest in the House)」(1947)
山荘の部屋にレンブラントやヴァン・ダイクの絵画を飾る謎の主人。そしてポーカーに集まった客。絵画を盗みに入った泥棒が刺殺体で発見される…。

1本目でぐぐーっとハードルが上がってしまい、これはやや物足りない結末だったのだが、短編としてはそれなりに得るものはある。この話からギディオン・フェル博士が登場。

3本目「ある密室 The Locked Room」(1943)
老人が書斎で殴られて昏倒している状態で発見された密室事件。
この3作目を読んでフェル博士が名前からなんとなくイメージしていた不気味な姿でなく、太った中年男性だったことに気づくw

「窓のさんが降りている」という表現が意味がわからなくて困った。あと「ソーダ・サイフォン」もまったくイメージできないw うーん、65点ぐらいの面白さかな。

4本目「赤いカツラの手がかり Clue of the Red Wig」(1948)
これは今まで読み進めてきたものと雰囲気が違っていた。この時代にロンドンにあった「トルコ風呂」がイメージできなくて困った。犯人は意外ではあったのだが、自分としてはこれが一番評価が低い。

5本目「第三の銃弾 The Third Bullet」(1947)
これは短編とはいえない。本の約半分を占める164ページの中編。老判事が胸を打たれて殺害。胸の銃弾は現場にいた刑務所から出てきた男の持っていたリボルバーからでなく、部屋の花瓶から発見されたブローニングでもなく、第三の銃から発射されたもの?!ってストーリー。
野心的な新機軸を打ち出したような1本。自分としては70点ぐらいかな。

2 件のコメント:

  1. 川崎鶴見U2017年6月3日 0:44

    鶴瓶師匠ではちょっと・・・。
    H・Mはチャーチルがモデルとも言われていますから。

    デイクスン・カーとカーター・ディクスンのペンネームを使い分けていて、それぞれの看板スターがフェル博士とH・Mなのですが、基本的には同じ人。
    「妖魔の森の家」はカーの短編のNO1というか、世界のミステリの短編BESTには必ず選ばれるマニア垂涎の作品ですよ。(日本だったらたぶん1位)
    カーは基本的には長編作家ですが怪奇趣味だけの作品はいいのですが、おふざけが過ぎて日本人には理解しずらい作品が多々あるのです。
    それが短編だとどっちに転んでもあまり気になりません。バナナの皮で転ぶのが実は重要な伏線だったりするし。
    「ディクスン・カー短編全集」は1の「不可能犯罪捜査課」シリーズが軽くて愉しいです。3は「パリから来た男」を筆頭にトータルでレベルが高いです。ぜひ見つけたら読んでみてください。

    返信削除
  2. HMとフェル博士ってそういう関係だったのか!カーター・ディクスンの本はまだ一度も見かけたこともない。

    HMはチャーチル?! バナナに怒ってるシーンは内田百閒っぽいなとも思ってました。
    英国人のユーモアは日本人には難しい。

    これから短編集を探しに行きます。

    返信削除