2016年1月8日金曜日

横溝正史館へ行ってみた

「悪魔の手毬歌」ロケ地から次に向かう場所といったら山梨市笛吹川フルーツパーク内にある横溝正史館しかないw

昇仙峡から途中、甲斐善光寺に参拝などして寄り道。1時間ほどかかった。わりと遠い。
それに、この公園が富士山の見えるオシャレなデートスポットっぽい。
そんな場違いな一角に横溝正史館がある。

これは横溝正史が書斎として使っていた自宅の離れをこの場所に移築したもの。もともと世田谷の成城にあった家。横溝正史の長男が山梨市に寄贈した。
聞くところによると、横溝家は郷里の岡山市へ持って行きたかったらしいのだが、岡山市のほうで移築と運営していく予算が確保できなかったらしい。取り壊し寸前に、横溝と親しかった東京神保町・三茶書房の主人が山梨市出身だったためにこの場所に移築が決まったらしい。

横溝と山梨に関係はあるのか?横溝は若い頃に結核の療養のために信州上諏訪温泉へ転地療養に出たさい、山梨駅で途中下車したことがある…ただそれだけ。ぶっちゃけ何の関わりもないw 岡山ぁ~、何やっとん?!
普通の日本家屋。引き戸をがらがらっと開けると、狭い玄関に券売機が置いてある。入館料100円を払う。
横溝正史が火鉢に当たりながら原稿を執筆した書斎がまるまるそこにある。奥の部屋はこんな感じ。これはマニアにはたまらないだろうと思う。
横溝が「獄門島」を書いたのが45歳のとき。「犬神家の一族」を書いたのが48歳のとき。原稿もケースの中にあった。
あとは映画のポスターやパンフ、映画撮影のときの様子を伝えるスナップ写真を整理したファイルなどが自由に見れるように置かれている。
山梨市が管理してるといっても、とても小さな展示室。横溝ファン、日本ミステリーファンでもないと何も見所はないかもしれない。
角川文庫がずらっと並べてあった。たぶんこれがすべてじゃないな。自分は映画になった作品の一部しか読んだことがない。
映画パンフはここを訪れたファンが寄贈していったものだそうだ。

ずっと友人とふたりで自由に見ていたのだが、ここの管理人が出先から戻ってきた。50代後半ぐらいの女性。我々を見てちょっと驚いていた。土日しか開館していないのだが、この様子だと1日に数人しか来ないっぽい。
ごく普通の挨拶をした後に女管理人が我々に「マニア?ひょっとしてマニアなの?」と、初対面にしてはちょっと異常な熱気を持った目で問いかけてきた。ま、どう考えても年末の休日にいい年した男がふたりでやって来ているのだから、そう見えたに違いない。
「あ、それほどマニアってわけじゃ…。市川崑の映画は見ましたけど。」「あら、そうなの」

そして、「あそこは行きました?」と訊ねてきた。あそことはもちろん「悪魔の手毬歌」のロケ地のことだ。
「実は、その帰りなんです」「なんだ、先に寄ってくれればいろいろと教えてあげたのに~」

そして女管理人は次から次へと、横溝正史を生前に撮影した写真が掲載された雑誌などを開いて、今我々が居るこの部屋が当時から変わってないことを教えてくれる。
この「書」が写った写真の載った雑誌をサッと開いて見せてくれた。

「ほら、同じでしょう。ここの落款を見て!二つ押してあるでしょう?」
「あ、下のは亂歩(らんぽ)と書いてありますね。上のは…ちょっと読めないな」
「これ、最近までわからなかったけど、太郎って書いてあるんですよ」
「太郎…、あっ?!平井太郎だ!」
その瞬間、女管理人の目の奥がキラッと光った。江戸川乱歩の本名は平井太郎、その程度の知識は持っているな…、と。
「落款をふたつ押すのは相当に親しい人に贈る書だけらしいですよ」

その後、この女管理人は、ここを訪れるマニアたちから得たありとあらゆる情報をとめどなく話してくれた。

「悪魔の手毬歌」ロケ地情報とか、田中泯のこととか、「悪魔が来たりて笛を吹く」に出てくる砂丘は何処だとか、映画撮影当時のこととか、石坂浩二が最近山梨に来た話だとか、金田一マニアなら行くべき場所だとか、獄門島のこととか、ここに記念館が置かれた経緯とか、まったく知らなかった知識を得た。このブログの記事のほとんどがこの女管理人から得た知識。その知識もここを訪れたマニアたちから得た知識w この日の午前中も静岡から熱いマニアが来てたそうだ。

話を途中で遮って、そろそろ帰らなくてはと告げた。「あら、残念」「また来ます」「ぜひ来て」
金田一耕助ブームはかつての勢いはないかもしれないが、マニアたちは精力的に活動している様子。この横溝邸を借り切って「悪魔の手毬歌」上映会もやったそうだ。マニアって本当にすごいな。

行政としては実績がない展示施設にお金を出さなくなる。日本全国の金田一ファン、横溝正史ファンはぜひここを訪れてほしい。マニアなら1日いても飽きないはずだ。ここを守ってやってほしい。

横溝正史ファンのシンガーソングライター安藤裕子は来たことあるのかな?ロッキングオンH2006年11月号によれば
「小さい頃から、映画の金田一耕助シリーズが好きで。それで、原作も読むようになったんですね。戦後の感じがする初期の方が特に好きですね」
とのこと。

その後、このフルーツパーク内にある大戸屋ダイニングというところで食事をした。この店は大戸屋と名前はついているけど高級。価格も3割ぐらい高め。高級オーディオなんかが置いてある雰囲気のいい店。
PS. 1月16日から角川シネマ新宿において「市川崑 生誕100年記念映画祭 光と影の仕草」が始まる。「犬神家」「悪魔の手毬歌」も上映。あと、岩井俊二によるドキュメンタリー「市川崑物語」もラインナップ。

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