是枝裕和 「奇跡」（2011）

「海街diary」公開記念　その１。是枝裕和監督の「奇跡」（2011 ギャガ）を見てみる。自分はまだ一度たりともこの監督の映画を見たことがない。ただ、ドキュメンタリー番組をつくってきた人で、子供をつかう映画を撮る人だとなんとなくイメージしてた。

この映画も子供たちが主人公。九州新幹線が全線開通する日に「それ」を見れば、また家族がみんなで暮らせるという願いがかなう…という、そういう感動作だというふれこみだが、ただひたすら庶民の日常が散漫に描かれる。タイトルが「奇跡」とは言っても大したことは何も起こらない。

大阪で育った兄弟の兄は鹿児島、弟は福岡で暮らしている。鹿児島の火山がそこにある日常生活が描かれている。兄「火山灰降っとる。意味わからんわ！」って言うしかない。あまりイメージできてなかったけど、これが火山のある生活あるあるなんだろう。

「父ちゃん、バイトの時間やで」、小学生の息子を育てるのにバイトで生計とか、それは大変だ。父オダギリジョーはロックミュージシャンか？この映画のサントラはくるりが担当。

「世の中には無駄なもんも必要やねん。全部に意味があってみ、息苦しいでぇ～」。大塚寧々みたいなキツいおかんはあかんわ～。「また仕事やめたって…、子どもふたりおってどうすんねん！」、父と母のケンカばかり見せられた弟は「べつに家族一緒でなくていい」。子供って正直。

出演者はオーディションで選ばれた子役たち。自分はまったく知らなかったのだが、橋本環奈が出てるんだな。しかも役名は「かんな」だ。この子の可愛さが奇跡だな。子供のころから声がガサガサして低いな。

旅先で夜暗くなって親切な年寄りの家で無銭飲食＆宿泊。子どもは怖いものがなくていい。ある晩やって来た突然の訪問者も、この老夫婦にとって「奇跡」だったんだな。

とにかくいろいろリアルすぎる。こどもあるある。年寄りあるある。別居夫婦あるある。映画でもどっぷり日本のそこにある日常を味わう。こういう映画、見て楽しいか？でも、自分も小学生のころを思い出したわ。見終わったあといろんな感情がじわじわ来たな。日常とそこにある愛情、すべてが奇跡だな。

自分がこれをどうしても見ないといけなかった理由は長澤まさみがほんの少しだけ出演してるから。なんとまさみは子供たちから好かれる小学校の図書先生。ああ、まさみが「モテキ」と同じようなショートだった時期だ。この先生、暑いから仕方がないが子供たちの前でもナマ脚だ。子供たちもまさみの脚を見る。

「先生、うれしか。」、まさみが九州おんなってこの映画のみか？まさみ総出演時間は3分にも満たないのではないか。表情のアップすらなし。
（追記　まさみは2010年にフジ「わが家の歴史」で九州のお嬢様を演じていた）

実はこの映画を見た理由は是枝裕和という人がどのような映画を撮る人なのか「海街diary」公開前に自分で確認しておきたかったから。この映画に魅力を感じるかどうかは見る人によると思うが、自分は見終わった後に満足感があった。結果、「海街」はぜひ劇場で見たいと思った。

PS. エンドロールを見ていて、「はしれちょうとっきゅう」という唱歌は、コンピューターを使った現代音楽で知られる湯浅譲二による作曲だって初めて知った。信じられん…。作詞の山中恒が新幹線が走る様を「ビュワーン ビュワーン」と表現したのも天才的だと思う。史上ナンバーワン新幹線ソングだと思う。