2015年1月21日水曜日

成海璃子&北乃きい 「ブカツ道」(2010)

このDVDは2010年に成海璃子北乃きい主演で映画化された「武士道シックスティーン」のついでに、WOWOWが作ったスピンオフ的な短編映画オムニバスだと思ってた。

間違ってた。「武士道シックスティーン」がアイドル女優青春映画としてはまあまあな出来だったのに対して、この「ブカツ道」はそれ以上の作品集だった。しかも「武士道シックスティーン」と設定も何も関係ない完全に別作品。

1本目は成海璃子主演、古厩智之監督・脚本による「桜の園(演劇部)」。退屈なんだろうな、と思っていたが、ちょっと引き込まれた。

1人しか部員がいない演劇部の成海璃子、部室で「桜の園」を台本読みながら独り練習中。そこに入り込んでくるひ弱そうなサッカー部員。成海よりも声が高くて変。

いや、あえてこの声で選ばれたはずだ。このサッカー男が「習わぬ経を覚える門前の小僧」並みに有能。孤独で偏屈な演劇少女・成海と台本を読み合い、チェーホフの登場人物の心理を語り合う。二人をひやかす他サッカー部員たちのリアルで異常な下品さも印象に残った。脚本に感心した。

2本目、北乃きい主演、永田琴監督・脚本による「お茶の薫り(茶道部)」はさらに唸ってしまうような味わい深い逸品。強引に誘われて茶道部主催のお茶会に誘われた北乃きい、茶道部の女子生徒(センパイ)の所作に魅せられて即入部。憧れの感情を抱く。

センパイに彼氏がいると知れば、自分も身近のバカ男(濱田岳)とつきあうことにする。センパイが茶の心を体現するようにカバンやケータイにちゃらちゃら飾りのぬいぐるみ的なものを付けないと知れば即、自分も外す。
初めてセンパイを見たとき、白い足袋の下にペディキュアをしていたという自分だけが知っている秘密も共有。これを濱田岳に見られそうになり激しく抵抗、そして羞恥……。なんか、文学作品みたいですごく良かったわ。

茶道部の先輩役の女の子の演技がよかったので、気になって調べてみたら高木古都という人だ。主にグラビアで活動して映画やドラマに出ているらしい。「武士道シックスティーン」にも出ていたらしいが記憶にない。ブログは昨年5月から更新がない。現在24歳、今後も女優として活躍してくれるかどうか…の位置にいるのかもしれない…。俺は応援する。北乃、濱田、高木、この3人の好演もあって良い作品になってる。

3本目、成海璃子主演、犬童一心監督による「練習とか面倒だし。(まっすぐベースボール部)」はこのオムニバスの中で最大の問題作。なんと高校生の作った短編映画のリメークだ。シュールでぐだぐだしたテキトーでふざけたシロウト投降ビデオ的な内容。

染谷将太も出演しているのだが、あえて部員の男どもはみんな素人のような動きのない抑揚のない無表情棒演技。染谷って成海璃子と同じ歳だったんだな。

自分を激しく動揺させた1本だった。既存の映画の概念をぶち壊す短編だ。青春映画ともいえるし、実は今の日本の姿を風刺した哲学的で深い内容なのかもしれん。いやー、参った。野球部監督姿の成海を見て、昔の弱いころの阪神の監督を思い出した。

4本目、北乃きい主演、古厩監督の「しあわせの味(家庭科部)」。数学の研究に没頭する父・杉村蝉之介を嫌う娘・北乃きい。死んだ母(古村比呂)のつくる卵焼きが食べたいと言い出した父と、あの味を再現しようと奮闘するのだが、どうしてもできない。しかし、父の記憶と分析によってあの味に到達する。シンプルだが味わい深い1本。この作品だけ家庭内のみでドラマが進行。

5本目、成海璃子主演、「パシュっとな!(弓道部)」はなんと沢村一樹監督作品。その矢で射られたものは矢を放ったものを好きになる……と神様(ミッキー・カーチス)と取引した成海は親友・朝倉あきと校内を駆け回って「加藤くん」を追いかける。

タイムリミットは日没まで。チャンスは1回っきり。もう設定から面白いし、弓道部姿の成海の必死の形相がいい。女の子が矢で男を射るって絵をみたことない。弓と矢を構える女子って美しいな。

そして、スカートの下にジャージという「はにわスタイル」で校内を駆け回る朝倉あきのテンションの高い演技にまったくもって感心する。声と喋りかたが昔の深田恭子に似ている。それほど美人ってわけでもないけど、芸能界から引退活動休止してしまったことは本当にもったいないことだった。一時休止かもしれない。もし帰って来たなら、君はすばらしいと何度でも言ってあげたい。

そして最後に、はっきりと言えることは、成海璃子と北乃きいはやはり女優として素晴らしい才能をもっているってことだな。何も期待しないで見たけど、この作品集はすっごく面白い。

2 件のコメント:

  1. 初めまして、高木古都さんは武士道の村浜主将ですよ

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  2. そんな主将がいたなってのはなんとなく覚えてる。

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