ヘンリー・ジェイムズ(1843-1916)による小説「ねじの回転」The Turn of the Screw , 1898岩波文庫版を初めて読んでみた。
ヴィクトリア女王の時代、いい条件で田舎の大邸宅に家庭教師として赴任した若い女家庭教師 そこで天使のように美しい兄と妹の面倒をみるのだが しだいに幽霊をみるようになって…というホラー。
その手の話が好きな人たちには有名な作品らしいが 自分がこれを読んでみた理由はこれを原作にしたオペラのCD(輸入盤)を持っているから。
10数年前 台本を見ながら聴いてみたのだが 話の流れはわかるのだが、とにかく疑問だらけの話だったのだ。日本語訳でじっくり読みたいと思っていた。意外に長くてわかりにくい話だった。
主人公の家庭教師が残した手紙というカタチで物語が語られていくのだが、てっきり普通の怪談話かと思うがそうじゃない。昔から世界レベルで論争になっている問題作なのだ。
なにせ女家庭教師主観でストーリーが語られていくのだ。
論理の飛躍とか、非常識な行動とか、思い込みヒステリーとか、幽霊自体よりもむしろこっちが恐い。
真実が語られているようで実は全然違うといったことのほうが恐い。アガサ・クリスティーの「アクロイド殺し」とか芥川龍之介の「藪の中」とか堤監督の「サイレン」とか思い浮かべるとわかりやすいかも。
巻末の訳者による解説がためになる内容だ。女家庭教師は子供たちも家政婦も幽霊を見たといっているが、それはすべて思い込みで妄想なのでは?
フロイトの性的ヒステリーなのでは?という解釈が印象を一変させる!
女家庭教師の独白がとにかくこの人は頭がいいのかおかしいのか想像力が強すぎるように感じてくる。
家庭教師VS.子供たちの心理バトル!相手の言葉のニュアンスとか表情とかいちいちすごい集中力で読み解く。こんなこと自分にはできないや。まあ、話がわかりにくい。
昨今の児童虐待で聞く「揺さぶり死」とか胸部圧迫による死なのでは?とか、ダグラスとマイルズは同一人物かも? とか曖昧にされた謎がこの本をおもしろくスリリングにしている。
普通に幽霊話として読むのと家庭教師妄想説として読むのとではまったく印象が異なる。一度は読んでみるべき!スリリング!なんでタイトルが「ねじの回転」なのか釈然としないが
ブリテン:歌劇「ねじの回転」
BRITTEN : The Turn of the Screw
English Opera Group Orchestra
Peter Pears, Jennifer Vyvyan, Joan Cross、 Benjamin Britten Decca 1955
まったく知らなかったけど この作品はわりと演奏されている室内楽オペラのようだ。かつての自分はこんな音楽ばっかり聴いていた。難解な音楽。難解なストーリー。
英語リブレットを読んだけど 自分の読解力と理解力ではどうしようもなかった。ようやく胸のつかえが取れた。このオペラは誰にもオススメできない。
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