2026年8月15日土曜日

ドストエフスキー「賭博者」(1866)

ドストエフスキー「賭博者 Игрок」(1866)を原卓也訳(1979)新潮文庫で読む。

読み始めはやっぱり人間関係が分かりづらいいつものドストエフスキー。ロシア人将軍とその一行の関係性がまるで見えてこない。フランス人の男女、イギリス人もいる。主人公青年はどういう関係?
しかし読み進めると明らかになってくる。それが文学というもの。ドラマや映画を想定していない。

南ドイツの温泉地ルーレテンブルク(架空のルーレットタウン)のホテルに長期逗留してるような階級なので、登場人物はみんな貴族たち。みんな不労階級。主人公は将軍の義理の娘の家庭教師なのでこの人だけは労働者。しかし3か国語を話せるのでエリートかもしれない。この人はお金はないけどお金に困ってないし執着もしてない。

だがしかし、将軍が遺産をアテにしてるモスクワの祖母が、車椅子でないと動けないのにモスクワから急にやって来る。そしてこの強烈な婆さんがカジノでビギナーズラック。さらに大金を得る。インパクトのあるストーリー。

しかししかし、カジノのディーラーというものはこういう素人老婆はカモでしかない。この婆さんが換金処分しやすい債券までも身ぐるみ剥ぎ取られる様は読んでてほんとに怖かった。日本にカジノなんて作ったら絶対にダメ!(笑)

登場人物たちがみんなおかしい。主人公アレクセイもおかしい。アレクセイが恋するポリーナ(ドストエフスキーが同じように欧州を旅したときの愛人がモデル)が性悪。

英国人アストリー氏が唯一まともな紳士青年。この人が出てくると安心だが、それでもみんな破滅的で危険。頽廃の香り。

なんか、あまり期待してなかったのに、今まで読んだドストエフスキーでいちばん面白かった。
この本を読んだことで、プロコフィエフの歌劇「賭博者」をようやく聴く気になった。まあそのうちに聴こう。

この本を手に取った理由のもうひとつは、ロシア人の破滅的なギャンブル熱について知りたかった。ウクライナ戦争がどうなるのか?
たぶんプーチンとロシア人は身が破滅しようとも、航空機と戦車が残り1台になっても、ミサイルが在庫数発になってもウクライナと西側に突入させてくるし打ち込んでくる。なにか一発逆転の望を掛けて。露助はそこにいるだけで迷惑。そしてロシアは中国にカモにされるだろう。

2026年8月12日水曜日

アンディ・ウィアー「アルテミス」(2017)

アンディ・ウィアー「アルテミス」(2017)を小野田和子訳ハヤカワ文庫SF(2018)上下巻で読む。「火星の人」に続く、かつて天才プログラマー少年だった作家の第2長編。「火星の人」は読んだことないが映画で見たのでよしとする。
ARTEMIS A NOVEL by Andy Weir 2017
人類はすでに月面に2000人が生活するドーム都市を作っていた。非合法な運び屋女ジャズ(溶接工のスキルもある)が主人公。このヒロインはどうやらサウジ系?月面に住むようになってもイスラム教はまだ存在するのか。

月面に住むようになっても人々はお金のために労働しないとならないのか。闇バイトみたいなことをしないといけないのか。
この女のやることが月面都市アルテミスを悪徳企業から守るというぼんやりした動機だけで破壊工作を犯す。それは2000人すべての命と社会の根幹を揺るがす重大な危機。

重力が地球の1/6で真空で紫外線と放射線と熱線の月面で何かをしようとする困難さを、この作家らしい物理と化学の視点で教えてくれるエピソードとアイデアには感心はした。

しかし、令和の今を生きる日本人なら、果実や金属を盗む外国人のことが頭をよぎる。こんなやつを社会の一員として迎えたらとんでもないことになるという小説。

2026年8月9日日曜日

サラ・パレツキー「サマータイム・ブルース」(1982)

サラ・パレツキー「サマータイム・ブルース」(1982)山本やよい訳ハヤカワ・ミステリ文庫(1985)の江口寿史イラスト表紙の1994年22刷で読む。2年前に無償でまとめてもらってきたサラ・パレツキー(1947 - )。そろそろ読む。
INDEMNITY ONLY by Sara Paretsky 1982
え、「サマータイム・ブルース」って邦訳が出たときにつけられた邦題?!原題とまるで違うが、原題では日本人読者にはまるでイメージできなかったに違いない。

元弁護士で脇のホルスターにスミス&スウェッソンを忍ばせたシカゴの女探偵V.I.ウォーショースキー(通称ヴィク)が活躍する探偵ハードボイルド第一弾。

シカゴは19世紀の昔からギャングの街。暗黒街のボスも登場。チンピラと女探偵(40代ぐらい?)のアクションもある。そしてシカゴ・カブスの試合を気にする。

シカゴ財界の大物セイヤー氏から息子ピーターのガールフレンド(父は労働運動の左翼闘士?)の行方を探してほしいという依頼。調査を開始するとすぐに額を撃ち抜かれたピーターの死体を発見。第一発見者になってしまう。女探偵を認めないマロリー警部補(かつて父の同僚)から大目玉。

しかも依頼したセイヤー氏は偽者?そしてセイヤー氏も殺害。幼い娘のジルの身にも危険が?背後に大規模な保険金詐欺事件が?

という探偵ドラマ。この本が書かれ出版された時代はアメリカ横断ウルトラクイズの時代。シカゴは冬は天候の荒れる寒い都市というイメージだったけど、夏は今も昔も暑かった?!
80年代初頭のシカゴを思い描きながら読書を楽しんだ。

2026年8月5日水曜日

藤谷治「船に乗れ③独奏」(2009)

藤谷治「船に乗れ③独奏」(2009)を読む。シリーズ最終巻を読む。

チェロと音楽と格闘し苦悩する津島くんはついにこの道をあきらめる。家族としてはこれまでの多くの投資がムダ。

上の音大へは進まずに一般受験で大学を目指して予備校通い。この時代は今よりももっと大学受験は厳しい道。高3で受験勉強始めても一流どころは無理では?

音楽一家に生まれて音楽教育を受けてきた少年の挫折がつらい。
そして津島くんが酷い仕打ちをした哲学教師との再会。
この3巻がいちばん青春小説としてはつまらないシビアな現実。

たぶん多くの人がこの少年と同じような道を歩んで大人になってる。あんなに努力して打ち込んだことは今でな何も役にたってない…ってゆう。
しかし、それでも読後は爽やか。

この本はクラオタのための青春小説といえる。クラシック音楽のことはもうたいていわかってるけど、音楽の専門教育の現場にいなかったというクラオタも読んでみることをすすめる。

2026年8月4日火曜日

藤谷治「船に乗れ②独奏」(2009)

藤谷治「船に乗れ②独奏」(2009 ジャイブ)を読む。

音楽高校でチェロを学ぶ津島くんは相変わらず学生オケで怒鳴られる日々。だがしかし、南さんという美少女ヴァイオリン少女といい感じ。
なんと初デートが上野でオペラ魔笛。そんな高校生カップルがいるのか?!

そして、津島くんは親類の根回しでドイツへ留学。高名な先生にチェロを学ぶのだが大きな挫折。完全なダメ出し。音階練習しかやらせてもらえない。それは気分が落ち込む。

帰国したら南さんの様子がヘンだ。何があった?!南さんが冷たい理由が誰にも分らない。もしかして病気なのか?

もうチェロとかどうでもいいと感じ始める。自暴自棄。そして心で通じ合っていた倫理・哲学の先生への愚かで非道な八つ当たり。最後の授業は「ソクラテスの弁明」。

この本は発売当時にも話題になった青春音楽小説の名作。著者が読者を完全に上回ってる。読んでいてほぼ漱石、太宰、ミシマ、ハルキをおも思わせる、ほぼ文豪による青春小説。うぬぼれ男子高校生17歳の孤独と苦闘の日々。いやあ、読んでて面白い。

2026年8月3日月曜日

藤谷治「船に乗れ①合奏と協奏」(2008)

藤谷治「船に乗れⅠ合奏と協奏」(2008 ジャイブ)という本があるので読む。もらって5年ぐらい経つのでそろそろ読む。この本って出たころわりと話題になったように記憶してる。

主人公が高校生の青春小説らしい。てっきり児童向けかヤング向けかと思ってたけどそうでもなかった。40代になったかつての少年が音楽高校でチェロを学んで過ごした青春を回想している。

「のだめカンタービレ」は音大だったけど、この本は中学から高校へ上がる時期から始まってる。自分とはまるで縁遠い音楽学校での体験がリアルに描き綴られている。そこはとても新鮮だし興味深い。

ただし、主人公の津島サトルくんが横浜本牧に豪邸を構える資産家一家の子。小学生のころからヨーロッパの小説や哲学書を読む。一族は東京藝大を出てる音楽一家。父は慶応卒の社長。30畳の居間にベーゼンドルファーのグランドピアノがあるような家。嫌悪感しかないw 

ピアノを学ぶも才能が足りず、祖父の提言によりチェロに転向。中学は普通の公立校。上流階級の子なので高名な先生に学ぶ。東京芸大付属受験には失敗するのだが、祖父が理事の音大付属の高校へ。そこは女子が100人以上なのに男子は数名という世界。

そして強制的にオーケストラでしごかれる。両家の子女が集まるのぬるい環境なので音楽学校としては二流かもだが、なにせ音楽家に育てないといけない虎の穴。指導担当教師が現在の水準では許されないパワハラ気質。

音楽を学ぶ高校生たちがLPレコードとかカセットテープでしか海外の有名演奏家の演奏に触れていない。まだカセットウォークマンも家庭用ビデオも存在しない時代。なのでたぶん、1980年ごろの高校生の青春を描いているのかと。当時のアイドルスターとか世相とかいっさい触れられていない。

この時代のクラオタのアイドル演奏家たちの名前も登場するので、たぶん今のクラオタ大人が読んでも「わかる~」という感じで楽しいかもしれない。おそらく今現在60代という年代のピュアな青春。ラブ要素もちょっとある。

もしこの本がドラマ化されていたら、たぶんメンデルスゾーンのピアノ・トリオが世間の知名度と人気が上がっていたかもしれない。
面白かったので引続き第2巻も読もうかと思う。

2026年8月1日土曜日

第13回アメリカ横断ウルトラクイズ

第13回アメリカ横断ウルトラクイズ(1989)のCSファミリー劇場による再放送版(2015)を今になってやっと見る。ウルトラクイズマニアの間ではこの回が一番評判がイイ。なんと37年前の映像。

あの東京ドームでの国内1次予選を勝ち上がった100余名の人々。自分、以前は東京ドームから即成田へ移動するのかと思ってた。予選通過者は後日、旅費を支給されこの会場のホテルに宿泊してると知ったのはつい最近。
優勝した立命館クイズ研究部の長戸さんは相当なクイズ名人かと思ってたのだが、各チェックポイントをギリギリで通過していた。グアムでは泥に沈んでた。今回見てみて今さらだが驚いた。

この人はウルトラクイズ全史において最大のスター。見た目と雰囲気だけでアメリカ一般市民たちからも人気者。
実質この番組のプロデューサーでもある福留さんもこの若者を発掘フィーチャーできたことは大きな功績。
この回はそれまで恒例地ハワイを跳ばして初のオーストラリア上陸。ゴールドコーストでは過酷な波打ち際でのレスキュー団体競技。
これ、自分ならいちばん嫌。団体責任のプレッシャーとかいちばん嫌。女性挑戦者からしたら他力本願。

しかし、番組はそんな敗者たちに誰よりも早くウルトラハットをかぶるチャンスを与える。運営も鬼ではなかった。
だが、次のチェックポイントではなんと8人も落とされる。調べてみたら、オーストラリア民間航空パイロットのストライキに当たってしまい、エアーズロックへ行けなくなるなど予定が狂ってのことだったらしい。
あんなに走り回って「ハズレ」問題ばかり引いてしまうとか悲しい。
てか、ラスト4人は誰が優勝してもおかしくなかった。クイズ力に差はほとんどない。
ニューヨーク決勝も点差は圧倒されたが永田さんももうすこし誤答を抑えて流れに乗れたら優勝だったかもしれない。永田さんもシドニーで落ちるところだったって、今回13回大会をじっくり見るまで知らなかった。

この第13回は2時間番組で5週放送。なかなか北米大陸に上陸しない。見てるだけで疲労。ロスアンゼルスに到達した段階でヘトヘト。
ここで落ちた立命館の学生がすごく藤子不二雄マンガに出てきそうな顔をしてて驚いた。
初登場のトマト戦争。予想外の内容のゲームに参加者がすごく困惑してたように見えた。
たぶん、相当にトマトが固くて重い。そこで急きょ目を保護するグラスが配布。それでもやはりテンションだだ下がり。
ここで敗者となってしまった挑戦者はあきらかに途中から戦意喪失してた。あの土嚢の隙間から手を突っ込んで解答ボタンを押す方法は骨折しそうで危ない。
第12チェックポイント・チムニーロックでの道路を封鎖してコンボイ6台とヘリを使ったクイズは見た目が派手なだけの無駄クイズ。こんなの、問題と順番のめぐりあわせが全て。
だが、ウルトラクイズとはたった1回のチャンスに答えられないと敗者となる。そこが酷いw
北米大陸上陸ファイナリストは全員が相当に実力者。なんでなのか、多くが有名大学現役学生かOB、有名企業に勤務する人々。
自分、いままで動画サイトなどでウルトラクイズを見てきたのだが、今回が一番クイズ研究部出身の挑戦者が多かった気がする。

立命館が多いのはなんとなく予想できる。だがこの13回は東大がやたら多かった印象。
この時代の若者は今とそれほど変わっていないように思えた。みんな大きなメガネをしていることを除いて。
今回は早々に女性挑戦者が全滅。誰も北米大陸に上陸できなかった。それはテレビ的に惜しかった。
準決勝ボルティモアの名勝負がウルトラクイズ史上いちばんの激戦。なかなか終わらない。なにせ全員がクイズの実力者ばかりで勝負がつかない。問題を使い切ってしまう。決勝よりも問題と時間を浪費。

いつかウルトラクイズに参加して、こういうクイズ名人たちと互角の名勝負がしたいと考えてたいたけど、記憶力やひらめき瞬発力の劣化した今も自分には到底無理な気がする。
自分は国内2次予選の成田ジャンケンがいちばん恐ろしい。ジャンケン勝負という運100%要素のゲームで半分の50名にされる。
こちらの50人でクイズチェックポイントを周っても数多くのドラマが生まれたはず。あり得たのに存在しなかった世界線。ジャンケンで負けた側にあったかもしれなかったドラマに思いを馳せる。

今年になってなんとまさかのウルトラクイズがパワーアップ拡大して復活。これはいったいどれほどの申し込みと参加があるのか?まるで見当がつかない。
もう東大とか受験問題のプロみたいな人の参加はやめてほしい。視聴者は普通の若者が「へー、そんなこと知ってるんだ」という感心と驚きがしたいだけなのに。
自分は申込フォームに記入必須のなぞなぞ?暗号?答えが複数あるという問題を見て気分が萎えた。意味がわからなすぎてストレス。やる気が失せた。

この番組にこれからのテレビの可能性がかかってる。テレビコンテンツにおいてサッカーや野球の世界大会の中継は変わらない人気。結末が予想できないゲームに視聴者は魅せられる。

2026年7月30日木曜日

三浦綾子「泥流地帯」(昭和52年)

三浦綾子「泥流地帯」(昭和52年)を新潮文庫(平成15年50刷)で読む。実は三浦綾子(1922-1999)を読むのはこの本が初めて。この作家は旭川出身。

文庫裏のあらすじがきによれば、大正15年5月の十勝岳大噴火と山津波による被害を描いてるらしい。なのでてっきりディザスター小説かと思ってた。
だが、大正年間の上富良野日進沢の貧しい小作農一家の日々の暮らしを描いた「北の国から」だった。もしかすると倉本聰はこの本を読んでいたのかも?と思った。

小作農家に生まれた兄弟の拓一と耕作。祖父母と一緒に十勝岳の見える土地で日々農作業労働。父は事故で他界し母は髪結い見習いとして札幌へ出て不在。
耕作は学業が優秀だが中学へやる金はない。日進部落の人々は年数回しか米を食べられない。
拓一が気持ちを寄せる幼なじみの女の子も親の借金のカタに妓楼に売られる。それは悲しい。

みんな貧しいので助け合って生きている。馬も貴重な労働力だし家族の一員。ある日いきなり苦しんで死んでしまうと悲しい。
唯一の嫌な人は女郎屋の亭主で高利貸しの深城。威張ってるし。
小学校教員の先生も自分勝手に不機嫌だったり嫌な人。

十勝岳の噴火と山津波の泥流が集落を襲うのは終盤。

大災害とその後の箇所はつらくて読んでられない。この本を読む人は誰もが3.11東日本大震災等でもリアルにあった悲しい場面を想わずにいられない。あと少しで助けられたかもしれない家族のことを想わずにいられない。

2026年7月28日火曜日

加藤小夏「メキシコ・ルネサンス」

加藤小夏がEテレ「木村多江の、いまさらですが… メキシコ・ルネサンス 〜芸術による国家再生とある日本人画家の活躍〜」(6月25日放送)に出演したことを忘れないためにここに記録する。
メキシコの革命と壁画運動について、世界史や美術史について相当詳しい人でなければほとんど知識がないに違いない。小夏さまと一緒にお勉強の時間。
オロスコ、リベラ、シケイロスあたりは日本人でも名前を呪文のように覚えて知ってる人がいるかもしれない。
小夏さまといったらやっぱり食。トルティーヤを使った料理を食べてこの顔。
オルチャータ(米ドリンク)にこの表情。小夏さまは衣と食に意識高くて貪欲。もしかすると恋にも貪欲かもしれなくて、こっちは毎日辛い。
今回の放送では、日本にメキシコ美術の影響をもたらした北川民次(1894-1989)について学んだ。
小夏さまは愛知県瀬戸市を訪れて取材レポート。民次のアトリエや名古屋CBC会館へ。芸術に触れ知識を吸収する小夏さまが美しい。
小夏さまの夏ドラマはないのか?8月にNHK「銭形平次」に出演するらしい。それよりも、小夏さま主演の秋ドラマはないのか?

2026年7月27日月曜日

北村薫「盤上の敵」(1999)

北村薫「盤上の敵」(1999 講談社)を読む。1年ぐらい前にもらってきた本。

何の予備知識もなく読み始めた。てっきりチェス対局ミステリーなのかと思ってた。各章のタイトルもそんな感じだったしで、なかなか本を開こうと思えなかった。
だが、猟銃立てこもり凶悪殺人犯と、事件を独占的に取材したい番組制作スタッフの酷い職業倫理と、酷いイジメをされた女の独白が交互に続くやつだった。

もう「何を読まされてるんだ?」という感じで現在地が分からず、誰が誰かわかりずらく、読んでてひたすらイライラする。
あまり頭を使いたくなくて読書に逃避してるのに、何がどうなってるのか考えながら読まないといけない。

しかし、そのストレスから終盤に解放される。おお、そういうサスペンス作だったのか。十分に意外で驚きの展開。

松本清張だと、こういうのはどこかで失敗して露見する。だが、そうならない分、多少の爽快さはあったかもしれない。正義は自分の手でしか守れないっていう嫌なミステリー。

苦行のような時間もあったけど、これは十分に傑作と呼べるかもしれない。
これは映画化とかいけそうな気がするのだが、なぜか誰もやってない。

2026年7月26日日曜日

吉屋信子「花物語」第一巻(大正九年)

吉屋信子「花物語」第一巻を読む。大正九年に東京市麹町區隼町洛陽堂より出版されたもの。当時の価格は「定價金壹圓五拾錢」。
こいつもBOで110円で見つけて連れ帰った昭和49年ほるぷ復刻本。「第一巻」とあるが、第二巻以降があるのかどうか不明。

吉屋信子(1896-1973)を読むのはこの本が初めて。20本の短編を収録。すべての作品名が花の名前。すべての主人公が十代の少女。

読み始めた最初の頃は、幻想ファンタジーなのかな?と想ったのだが、どれも「もののあわれ」とペーソスあるれる詩情。どれもが日常の一場面。ストーリーよりも場面と登場人物の設定。ほぼ清少納言。

読み終わったすぐから内容を忘れていくのだが、文体が素朴で味わい深い。大正女学生の話言葉と書き言葉はこういうものであったのかと想いを馳せる。
登場する音楽教師はなぜか伊太利人であるケースが多い。

2026年7月24日金曜日

ローマ人の物語「すべての道はローマに通ず」(2001)

塩野七生「ローマ人の物語 すべての道はローマに通ず」(2001)を読む。新潮文庫では27巻と28巻に相当。

この巻の前の「賢帝の時代」で「もう飽きてきたな…」と感じてしまったものの、もうゴールを目指すしかない状況でこの巻を開いたら、これまでとは装いを変えて、これまでのローマ人のインフラ整備についての講義。カラー図版ページでローマの史跡観光ガイドつき。

上巻ではローマの街道、橋、水道といったハードなインフラ。
ローマの街道を人が移動する速度は19世紀に鉄道、20世紀に自動車が登場するまでほとんど変化がなかった。それはすごい。ローマの水道橋の技術もすごい。

3世紀のローマ帝国地図「タブーラ・ペウティンゲリアーナ」(11世紀の写本が現存)の存在を今まで知らなかった。

下巻では浴場、さらに医療と教育というソフトなインフラ。
ここを読んでると古代ローマ人は現代人とあまり変わらないなと感じた。