2025年4月19日土曜日

新美南吉「花のき村と盗人たち」(昭和18年)

新美南吉「花のき村と盗人たち」(昭和18年 帝國教育會出版部)をほるぷ社名著復刻日本児童文学館(昭和49年)で読む。
新美の昭和18年3月没後(享年29歳)の出版。装画は谷中安規。発売時の定価は一圓八拾錢。
これは1月に出かけた先にあったBOで110円で売られていたので購入。安い。
  1. ごん狐 (赤い鳥 昭和7年)
  2. 百姓の足・坊さんの足
  3. のら犬 (赤い鳥 昭和7年)
  4. 和太郎さんと牛
  5. 花のき村と盗人たち
  6. 正坊とクロ (赤い鳥 昭和6年)
  7. 鳥右ヱ門諸国をめぐる
の7作を収録。どの作品も大人が読んでも味わい深いし考えさせられる。

デビュー作「正坊とクロ」は子ども向け童話という感じだが、その他すべてはむしろ大人こそが読むべきでは?と感じた。

「ごん狐」のビターな最悪バッドエンド、「のら犬」の坊主の意外な心変わり、「和太郎さんと牛」の和太郎の天然キャラ、「花のき村と盗人たち」の盗賊の頭が涙する意外な顛末、「鳥右ヱ門諸国をめぐる」の鳥右の生きざま、どれも大人読者の鑑賞に耐える。すべて長い年月の試練に耐えた傑作。

「花のき村と盗人たち」は自分的にドリフコント。お頭をいかりやさんで脳内再生してた。
そして「和太郎さんと牛」も落語ぽいなと感じた。これは読み聞かせするだけでも面白くできそう。

2025年4月18日金曜日

山本兼一「ジパング島発見記」(2009)

山本兼一「ジパング島発見記」(2009 集英社)という本をもらったので読む。この作家の本を読むのは初めて。
小説すばる誌に2007年から2009年にかけて掲載された7本の短編時代小説からなる一冊。

16世紀戦国日本にはるばる海を越えてやってきた西洋人7人の目から見た日本人…という連作短編集。日本人作家がポルトガル、スペイン、イタリア人らの目を通して日本人を語る。初めて見る日本人が、ゴア、マラッカ、マカオで見るアフリカ人やインド人や中国人とまるで違う!
  1. 鉄砲をもってきた男
  2. ホラ吹きピント
  3. ザビエルの耳鳴り
  4. アルメイダの悪魔祓い
  5. フロイスのインク壺
  6. カブラルの赤ワイン
  7. ヴァリニャーノの思惑
という7本。おそらくルイス・フロイス書簡などに短く触れられたエピソードを、作家が自由に想像を膨らませて平易に簡潔にまとめた、とてもわかりやすく味わいもある短編。

この時代の歴史小説を何冊も読んでる自分からして、1のフランシスコ・ゼイモトという名前はほぼ初耳。
そして、6のフランシスコ・カブラル宣教師も今までまったく聴いたこともなかった人物。

この本は何も難しいこともないし、そんなに複雑なものもないし、おそらく中学生でもすらすら読めてしまうような歴史読み物。自分は2時間ほどで読んでしまった。

2025年4月17日木曜日

辻村深月「島はぼくらと」(2013)

辻村深月「島はぼくらと」(2013 講談社)という本をもらったので読む。
この作家の本を読むのはほぼ初めて。いくつか原作映画を見たことはあるけど、そこから推測すると自分とはあまり合ってない作家な気がする。

中学校までしかない瀬戸内の島からフェリーで高校へ通う4人。帰りの便は4時台なので部活動はできないなど、離島の子あるあるなのかもしれない。

表紙装画からてっきり離島の高校生たちの青春小説かと思ってたらちょっと違った。高齢化する島民、Iターン島民、シングルマザー、やり手村長、脚本家、いろんな人々の島の暮らしと身の上話と人間模様ドラマ。
海街diaryとかリトルフォレストみたいな感じ。と思ってたら、装画がリトルフォレストの五十嵐大介氏。

田舎暮らしはいいぞというだけでない島民感情。読んでいてそれほど楽しくもないし爽快感もない。予想はできていたけど、やはり自分の趣味とは合わない人間ドラマ本。

2025年4月16日水曜日

ヴェルヌ「八十日間世界一周」(1873)

ジュール・ヴェルヌ(1828-1905)「八十日間世界一周」(1873)を読む。昭和38年江口清訳の昭和53年改訂訳による平成16年角川文庫版で読む。
明治11年には邦訳が出ていたというから、昔から日本人にも親しまれていた冒険小説。

マイケル・アンダーソン監督による映画(1956)を見た後に初めて原作を読んだわけだが、映画版はとても原作に忠実だったことがわかった。
映画も楽しかったけど、原作もとても楽しく読めるし面白い。

映画だと従僕パスパルトゥーがほぼパントマイム演技でほぼ天然に見えるのだが、原作では心の声もしっかり書かれている。
フォッグ氏にずっとつきまとうフィックス刑事の正体を事前に知らせておかなかったことで、あと少しのところでロンドンに辿り着けない…というところで強く悔やむ。主人であるフォッグ氏に対して忠実で誠実で真面目な仕事ぶりの忠臣として描かれる。

だが、あの印象的な熱気球での移動は原作になかった。あと、アメリカ西部編では鉄道に末日聖徒の宣教師が乗り合わせていてパスパルトゥーが説法を受けるというシーンは映画にはなかった。

インドの邪教徒から美女を救い出すとか、インディアンの襲撃とか、旅を急いでる途中で邪魔が入るとか、まるで面白い映画の脚本のよう。たぶん「インディ・ジョーンズ」もこれの影響?
燃料が尽きて艤装と甲板の木材を燃やすくだりは、「未来少年コナン」でインダストリア当局からの追跡から逃れるバラクーダ号のシーンの元ネタか?

面白いのでまだ読んでない人はぜひ一読を。こんな楽しい空想冒険小説を読まないなんてもったいない。

ここ数年、すごくアジアゾウのこどもと一緒に遊ぶことが夢。ゾウさんのいる動物園に行きたい。

2025年4月15日火曜日

アイの歌声を聴かせて(2021)

2021年公開の長編アニメーション映画「アイの歌声を聴かせて」が3月14日にEテレで放送されたので録画しておいたものをやっと見た。
原案・脚本・監督は吉浦康裕。制作会はJ.C.STAFFで配給は松竹。

自分は何も予備知識がない状態で見た。
田舎にある高校の教室に謎の美少女ポンコツ転入生シオンがやってくる。いきなり歌い出して周囲どんびき。そしてちょっとした騒動。え、これはミュージカルアニメ映画なの?
この素人ぽい声優は誰だろうとずっと考えていた。どこかで聴いたことあるような声だ。エンドロールみてやっと気づいた。土屋太鳳だった。

そしてもう一人のヒロイン・サトミは福原遥。AI研究者母に代わって家計と家事を担当するしっかり者。
そしてIT技術者のような男子高校生トウマは工藤阿須加。あとはモテ男、三角関係の一角美少女、柔道男、など。

これ、ヒト型AIロボットと高校生たちの友情と青春物語。そして田舎に本社のある大企業星間エレクトロニクスの偉い人との闘い。
正直、自分はそれほど新鮮さを感じることはできなかった。だが、オリジナルでこのクオリティは十分に良い。

田舎風景がもうすぐそこに迫った近未来という感じ。無人運転バスが運行してるとか。いつかこんな時代がやってくるというイメージを見せてくれた。
だが、人間と見分けのつかないAIロボットは現実的にはまだまだかかりそうな気がする。電力で動くなら小型大容量バッテリーの問題とか。

この映画はオリジナルアニメとしては人気だったらしい。そのわりに土屋と福原の舞台挨拶とか番宣とかぜんぜん見てなかった。コロナだった時期だからかもしれない。自分はコロナ後ずっと本を読んでいる。

2025年4月14日月曜日

南沙良ポッキーCMロケ地巡礼

若手女優の南沙良が2018年からポッキーのCMに出演していたことを今日まで知らなかった。なぜ今になって知ったのか?
たまたま立ち寄った古民家カフェについて調べていたら、ここでCMが撮影撮影されたらしい。ここに南沙良、宮沢りえ大倉孝二がロケ撮影にやってきたらしい。
このCMの存在をまったく知らなかった。B'zのイメージ主題歌もまったく聴いたことがなかった。
この「何本分話そうかな 家族にありがとう」編が放送開始になったのが2020年1月7日。南沙良は2002年6月11日生まれだから当時17歳。すごく若い。フレッシュー!
撮影場所となった古民家カフェPOUNDさんへ。実は、今回は巡礼として行ったのでなく、たまたま立ち寄ったらこのCMロケ地だったことを知った。
なのでもう一度確認するために2週連続であきる野市五日市方面に花見に出かけたついでに立ち寄った。

このカフェが外から見たのではわからなかったのだが、土日は常時5組ぐらい客がいる人気店。1回目に行ったときはコーヒーとパウンドケーキ。
2回目に行って今度はコーヒーが付いたセットメニュー。友人はたまごとハムのサンドイッチ、そして自分はキーマカレー。半分づつシェア。
サンドイッチはボリュームがあってとろふわ。カレーはしっかりスパイシー。どちらもとても美味しかったです。コーヒーも佐賀鍋島のもの。こちらも美味しかったです。

店主が1回見たら忘れない個性的風貌。2週続けて行ったので我々を覚えてるかもしれない…と思ってたけど、そんな感じはしなかったw それだけ繁昌してて忙しいのかもしれない。
南沙良はこのCMの翌年に「ドラゴン桜」(2021)に出演。さらに翌年2022年には「鎌倉殿の13人」に出演。24年には「光る君へ」にも重要な役で出演。
着実にステップアップしてるのだが、まだまだ世間の知名度はそれほど高くないかもしれない。Xでチェックしても1日に数人しかツイートしていない。
今現在の南沙良は金髪ショートになっていて驚いた。この春ファースト写真集も発売されたらしい。

2025年4月13日日曜日

五日市の戸倉、光厳寺

今年もあきる野市五日市戸倉のあたりに花見に出かけた。もうどこか新しい桜の名所に出かけようとか思わない。勝手知った計算できる桜のある場所しか行かないw 人のいない場所しか行かない。
なんてことない風景かもだが、東京23区内にはたんぽぽの黄色い花が広がる野原ってあまりない。桜と同じようにしばらく眺めて過ごす。
よく見ると青い小さな花も咲いている。毎年ちゃんと花が咲くという奇跡。
こういう道端の空き地に人知れず小さな花が咲いている。春を感じる。

2025年4月12日土曜日

井伏鱒二「黒い雨」(昭和41年)

井伏鱒二(1898-1993)のまだ読んだことのなかった「黒い雨」(昭和41年)を読む。新潮文庫(平成24年78刷)で読む。
これ、広島の原爆を描く文学作品なので、読むとしんどくなりそうでなかなか開く気分になれなかった。やっと開いた。

てっきり自分はこの本は矢須子という女性が原爆直後の黒い雨に打たれて被爆したことで、縁談がまとまらず差別を受ける話だと思ってた。ちょっと違ってた。

矢須子が世間の誤解を解くために日記をしたため清書するという形で、閑間家の戦中と原爆投下のその日から終戦まで、そして戦後のありとあらゆる見聞きしたことを書き記したものだった。
原爆の恐怖をことさら煽ることなく、ただ淡々と見たもの、出会った人々から聴いた話などなどが書き連ねている。それでいてアメリカのやった非道さが伝わる。

見聞きしたことがすべて等価に書かれてる。そこに怒りとか悲憤とか嘆きとかはあまり書かれていない。だからか読んでいてとにかくリアル。
これは読んでいて戦争資料として貴重なものだと感じた。都市部への核攻撃がどのような事態を招くのか?という、日本人しか、広島長崎市民しか知り得ない出来事。活字で読む原爆資料館。

自分はつい怒りのあまり、こういうデータと情報は日本人だけで保持して有効活用するべき!とか考えてしまうけど、理不尽な目に遭った犠牲者たちはそんなこと思ってないだろうなと。

無辜の一般市民に熱線と放射能を浴びせてその後どうなったか?ただデータだけを収集したアメリカは許せん。体調が悪くて釣りしかできないのに、「いい御身分」みたいな嫌味を言うやつなんなの?

広島では原爆投下以後、軍人たちが「これまでのように威張っていいのか?」と疑問に思っていたらしいことは意外。自分なら原爆投下直後の混乱を利用して、自分を殴った憲兵とかにそっと復讐したい。

この当時の日本人は従順。上官や権力に歯向かう人はいない。しかし、今の日本人はもう違う。もう徴兵制なんて無理。一般市民に銃の撃ち方を教えたらどうなるか?それは上級国民がよくわかってると思う。
あと、反トランプ反米でまとまりつつある世界の先頭に立って日本はアメリカに復讐するべき。
そんなことを想ってしまうほど、この本を読むと怒り心頭。

2025年4月11日金曜日

与田祐希「日向の温度」(2017)

与田祐希の1st写真集「日向の温度」(2017 幻冬舎)を昨年手に入れた。買ったことを忘れないためにここに記録して忘備録とする。

BOで220円で売られていたので退屈をまぎらわすために連れ帰った。自分、それほど与田を推してないが、この値段なら買わないと損…と思ってしまった。
発売から7年経つとはいえ、そんな値段か。BOは坂道アイドルの写真集在庫がだぶついてるみたいだ。

坂道写真集はありとあらゆるプロモーションで複数殺購入させるように仕向ける。その時はつい若い情熱の勢いで買ってしまっても、数年たつうちに部屋スペースを圧迫してることに気づく。処分せざるを得なくなる。それを自分のようなライト層が手に入れる。。

写真集を見て、読書感想文を書こうと思ったけど、どう書いていいかわからなかった。

与田祐希17歳。今思うと、17歳ってほぼ子どもだなって。
与田はだんだんとクレイジーさを出すようになっていった。そこが良い。飛鳥とのやりとりも面白かった

2025年4月10日木曜日

シェイクスピア「夏の夜の夢・あらし」

シェイクスピア「夏の夜の夢・あらし」を読む。福田恆存訳の新潮文庫(平成11年54刷)で読む。
クラシック音楽を聴いてると否応なくシェイクスピア知識が求められる。メンデルスゾーンやウェーバー、ベートーヴェンもこれらを読んでいたと考えられるので今回ようやく手に取った。

「夏の夜の夢」(1600)
え、真夏の夜の夢じゃなく?そこは訳者が解説。「A MIDSUMMER NIGHT'S DREAM」のMIDSUMMER NIGHTとは夏至前後の祭。日本では夏至というと天文学的な意味しかないし、日本で真夏というと土用の盛夏、暑中を言う。英国の初夏は爽やかなので、あえて「夏の夜の夢」という訳にしたという。

これってアセンズが舞台ってことになっている。アセンズってどこ?アテネのことか。
アセンズ公シーシアスとアマゾン族の女王ヒポリタは婚約中。老イジーアスが娘ハーミアとその許嫁ディミトリアス、そしてハーミアと相思相愛のライサンダーの3人を連れてきて王に相談。
「わが娘ハーミアが許嫁を拒んでライサンダーと相思相愛で困ってる」
さらに、ハーミアの女ともだちヘレナはディミトリアスに強く恋。という四角関係。

王は「娘は父の物なんだからいうこと聞けや」さもなければ死、もしくは神殿の奥で一生巫女として過ごすか?

そしてハーミアとライサンダーは森に逃げる。その森では職人たちが王の婚礼で上演する芝居の計画と演目の練習中。これは幕間狂言のようなもの。

そして森の妖精たちが登場。目が覚めて最初に見たものを恋するように魔法。どういうわけかライサンダーもディミトリアスもハーミアそっちのけでヘレナを求める。ドラえもんで見るようなカオス展開。
英国人、欧州人が「妖精」というものを具体的に肯定的にイメージできるようになったのはこの作品が最初らしい。

で、ライサンダーの魔法が解けて、ラストで3組の結婚。婚礼の場で職人たちの芝居上演。王たちの酷い芝居へのツッコミ。「月光と石垣がバーゴマスクを踊りながら退場」とか意味わからんしまったくイメージできない。

これ、今まで読んだシェイクスピア喜劇の中ではわりと面白い。たぶん現代の舞台人演出家もかなり面白いものが作れそう。シェイクスピアが劇中劇で「ロミオとジュリエット」パロディのようなことをやってる。「夏の夜の夢」ってこんな話だったのか。

「あらし」(1611?)
シェイクスピア最後の作品。シェイクスピアって47歳で劇作家を引退して以後は余生を送ってたって知らなかった。
これもやっぱり妖精とか怪物とか出てくるファンタジー。なので「夏の夜の夢」とセットにされるのか。

ミラノ公プロスペローは弟アントーニオに王位を簒奪され、漂流後に無人島の洞窟で娘ミランダと暮らしてる。そしてアントーニオとナポリ公アロンゾーら一行を乗せた船も嵐によって座礁し難破。同じ島に漂着。

で、プロスペローが妖怪変化を操って復讐。ミランダがナポリ公の息子ファーディナンドと恋。そして許し。

この戯曲もエアリエルやキャリバンという人間でないものたちの会話とやりとりがあるので、そこを許容できるかが物語に入り込めるかのカギ。
だが、自分は「夏の夜の夢」ほどにはこれを面白く脳内再生できなかった。魅力を感じることができなかった。ベートーヴェンのテンペスト・ソナタのほうが美しい。

2025年4月9日水曜日

北川セーラーマーズ景子

実写ドラマ版「美少女戦士セーラームーン」(2003-2004)火野レイだった北川景子(17)が乃木坂の菅原咲月さんみたいでかわいい。
猫と喋ってる巫女・北川景子がかわいい。
自分も美少女に生れて巫女さんの衣装を着たかった。
真剣な表情の北川景子もかわいい。
セーラーマーズ北川景子もかっこよくかわいい。
明治大学商学部の学生だった茶髪ギャルっぽい20歳すっぴん景子もかわいい。

2025年4月8日火曜日

中公新書2748「物語 チベットの歴史」(2023)

中公新書2748「物語 チベットの歴史 天空の仏教国の1400年」石濱裕美子(2023)を読む。たぶん自分がチベットに関する本を読むのは人生においてこれで5冊目ぐらい。ダライラマ14世猊下の健康とチベット人とチベット文化の今後には昔から強く心配してる。

第1章は強大な軍事国家だった時代のチベット。そして仏教を国のアイデンティティとしたチベットとその王たちをささっと記述。
ソンツェン・ガンポ、ティソン・デツェン、レルパチェンといった偉大な王は、仏教の発展と布教に功績のあった者たち。政治と宗教のトップが王。

なのでチベット史における重要人物は全員仏僧。サキャ派、ニンマ派、カギュ派といった諸宗派とさらに分派についての簡単な歴史をずっと活字で目で追うことになる。ここ、正直自分は覚えきれない。
だが、このチベット仏教がモンゴル帝国に広まったことは世界史の重要事項。受験生もここは読むべき。

だが、自分がこの本で一番有用だったのは第2章「ダライ・ラマ政権の誕生」と第3章「ダライ・ラマ13世による仏教界の再興」。

ダライラマってハリウッドで映画にもなった現在のテンジン・ギャンツォで14世。だが、歴代ダライラマで重要人物というと17世紀のガワン・ロサン・ギャンツォ(ダライ・ラマ5世)と19世紀末から20世紀にかけてのダライ・ラマ13世しかいない。なんで?

高校世界史でも扱われる14世紀から15世紀にかけてのツォンカパとゲルク派から始まるダライラマ転生僧の王位継承は、転生者を捜索して教育してという法王の継承システム。
これでは法王遷化から次の法王が仏法をマスターして高僧に教育するまで20年はかかる仕組み。13世以前は夭逝してしまうダライラマが多かった…。初めて知った。

チベット史はモンゴル史、清朝史とも切り離せないことは以前から知っていたのだが、教科書で教わったことがなくちんぷんかんぷんだった。この本の第2章でやっとそこを詳しく教えてくれる本と出合えた。

そして英国とロシア、清国、国際政治に翻弄される13世。主権と自治と独立を確保するために奔走。国を護ることは大変。日本の大正天皇にも新書を送っていた。ということはチベット史も日本史学習に必要。

そして第4章は「ダライ・ラマ14世によるチベット問題の国際化」。
暴力を諫める法王猊下と、チベット人を暴力と金の力で抑え込む中国。
中国は世界の嫌われ者。ずっと世界から孤立。中国人と取引するやつは中国人と呼んでいい。自民党の政治家は目先の金にしか関心のない金の亡者で中国人。