2021年5月14日金曜日

アズミ・ハルコは行方不明(2016)

引き続き松居大悟監督の「アズミ・ハルコは行方不明」(2016 福岡放送、ファントムフィルム)を見る。
主演は蒼井優と高畑充希。同名の小説の映画化。これも松井監督らしいグダグダした日常ドラマか?

蒼井優はもう2000年代初頭のような可愛らしさはまったくない。蒼井優のシーンは静か。
一方でギャル役高畑充希太賀葉山奨之の街の壁やガードレールに蒼井の肖像をスプレー塗料缶で汚していくシーンは騒々しい。高畑らの成人式晴れ着姿がほぼ花魁。太賀とセッ〇ス。
太賀は何がそんなに面白いんだ?というぐらいテンション高く笑いっぱなし。ツイッターでたまにみかけるバカ。

高畑のセンパイキャバ嬢が菊池亜希子。菊池のほうがキャバ嬢っぽい。菊池は蒼井と友だち。

蒼井は家族と住んでいるのだが、買い物に出かけた先のドラッグストアレジバイトの男(石崎ひゅーい)と久しぶりに再会。蒼井もセッ〇ス。
加瀬亮は街角交番の警察官。安曇春子の失踪人の張り紙。勤務中になんか食ってるなよ。

少女たちが独り歩きの男性を襲撃するバイオレンス映画?意味わからなすぎ。ひょっとして原作読んでないと無理な内容?
この映画もなんだか時系列バラバラで視点がよくわからない困惑の内容。This is 近年の日本映画!という雰囲気。

蒼井の職場(プレハブ小屋事務所)の上司の話題がセクハラばかりで酷い。口を開けば「彼氏できた?」こいつらは何も仕事してない。何もかもが最悪。
給料の手取りが13万。社長と専務は100万。「これが資本主義よ」
見ていて何もかもが不愉快。日本庶民の置かれた環境はだいたいこんなものかもしれないが。

女性失踪事件の顛末記。結局最後まで見ても爽快感も何もない意味不明前衛映画。もうみんな死んでほしい。

主題歌はチャットモンチー「消えない星」。調べてみたらチャットモンチーは2018年6月にシングルを出してひっそりと解散。

2021年5月13日木曜日

男子高校生の日常(2013)

松居大悟監督の「男子高校生の日常」(2013 ショウゲート)を見る。菅田将暉野村周平吉沢亮といった日本映画とドラマを支える若手俳優たちによるバカ男子高校生日常系ドラマ。短編マンガ→アニメ→実写映画という流れがあったらしい。自分は何も予備知識がない。

高校生たちの担任が佐藤二朗でやっぱり佐藤二朗そのものなアドリブ芸演技。太賀も出てるので福田雄一臭がする。
さらに驚くのが東京03角田晃広が高校生役(副会長)なことw それはムリがあるだろう。こいつは佐藤二朗とたいして年が違わないぞ。こいつのガヤ脇役ぶりは名優レベルでいつも感心する。

岡本杏理山本美月三浦透子山谷花純といった今現在も邦画の世界で活躍中の女優たちが女子高生役で出演しているのだが、今回これを自分が見ようと思った理由が高月彩良。菅田将暉の怖い妹役。
襖1枚隔てた隣の部屋が男子たちのたまり場。しかも一度菅田の部屋を通らないと自分の部屋に行けないという環境。
バカ男子はたまに妹の服で女装したりする。あげく、下着を盗まれる被害に遭う。それはブチギレる。「いいからまず脱げ!」は萌えた。

男子校生徒の日常、そして文化祭で女子高生たちも合同で何かする群像劇。
男子は異常にテンションが張り詰める。ある意味もうひとつの「桐島、部活辞めるってよ」。

基本、バカシーン以外はひそひそ話。声を張ってないので会話が音量を相当に上げてもよく聴きとれないw でも、そんなに注意して聞かないといけない会話でもない。よく聞き取れないことも笑いの要素か? 見る側も高校生に戻って没入すればよい映画。

この映画を低評価してる人はきっと下北沢で見るような劇団的な演技と芝居を期待したのにそうなってないから? 
いやでもやっぱり評価するような映画でもない。ふざけっぱなしのコントを延々見せられる映画。この内容では85分が引き延ばせるギリの長さ。

メガネ吉沢亮はダサ高校生であったもやはりハンサム。菅田は若い頃から名優。野村はよくわからん。
男子高校生を見下し、威圧的にこちらが上だと認識させる山本美月がクレーマーのようで怖い。些細なことで男子たちを正座させ説教。「ちゃんと学習しろよ。バカなの?」
女優としてそれほど大成する前に結婚(2020)したのは惜しかった。この人も後に福田組コメディエンヌと化した。

ロケ地の高校が有名廃校ロケ地の旧静浦中学だ。最近見た「ドロメ」と同じだ。三浦透子は「またここ?」って思ったはずだ。

見終わった後で「どんな映画だったか?」思い出せないw だが、高校時代の想い出とはそんなもののはずだ。

主題歌はチームしゃちほこ「マジ感謝」。劇中で集客が少ない微妙なアイドルとして描かれていて気の毒。Perfumeの2006年武蔵野美術大学学祭ライブを思い出した。

2021年5月12日水曜日

ワイルド「サロメ」(1893)

オスカー・ワイルド(1854-1900)作の戯曲「サロメ」を初めて読む。大変に有名な作品で日本でも多くの女優が演じてる。
たぶん日本で一番よく読まれてると思われる福田恆存訳岩波文庫(昭和33年ごろ?改版2000年)で読む。ビアズレー(1872-1898)の挿絵入り。

いちおう全編のストーリーは知ってる。R.シュトラウスのオペラだったり、劇場中継だったりで。なので、ところどころ声に出して読んでみたりする。

さすがに訳文が古い。16歳少女の口調じゃない。しかし、格調高いかもしれない。
「お前なら、きっとしておくれだらうね、ナラボス?あたしはいつだってお前にやさしくしてあげたもの。さうだらう、お前ならきっとしておくれだらうね?一目でいゝ、あたしはあの予言者に会ってみたい、あの予言者に。みんなあの男の話ばかりしてゐる。」
「その脣なのだよ、あたしがほしくてたまらないのは、ヨカナーン。」
bouche「脣」という漢字を読めなかった。これで「くちびる」と読むのか。

「サロメ」はわりと上演時間が短い。だが、舞台女優、舞台俳優って心底すごいと思う。とくにヘロデ王。ヨカナーンの首を要求するサロメをなだめる膨大な台詞。自分なら台本1ページも覚えられない。それどころか1行ですらもギリw

2021年5月11日火曜日

土屋太鳳「PとJK」(2017)

土屋太鳳の主演作に「PとJK」(2017 松竹)という映画があるのは知っていた。べつに土屋太鳳を気に入って追いかけてるわけでもないので見ようと思わなかったのだが、最近になって玉城ティナが出演していることを知った。で、見てみた。

予備知識ゼロで見る。土屋太鳳演じるヒロインがなにやら街を急いで走ってる。最初から引いた画で撮ってる。なんだか映像に引き込まれる。これ、またしても廣木隆一監督のスウィーツ映画だったのか。どうりで会話シーンを常に遠くから撮影してる。

街並みが独特。路面電車が走ってる。山が近くにある。これはいったいどこだろう?札幌かな?と思って見ていたら、函館か!函館って意外と映画の舞台になってる。
北海道の都市の夜の空気感は独特。道が広いのにぜんぜん車が走ってない。環境が良い。

土屋太鳳が玉城ティナに誘われて女センパイとなにやらライブイベントのような場所へ行くのだが、これが普通の合コン。16歳女子高生だけど身分を偽り22歳という設定で参加。
生肉に飢えた野獣のような男たちが酒を飲ませようとふたりに迫る。だがそこにイケメン亀梨和也が登場し窮地を救う。
で、一緒に帰ろうということになる。土屋が合コンで積極的に声をかけるのは「8年越しの花嫁」みたいだな…と思った。
「今度二人で会えないかな?」イイ感じになって歩きながらなにげない会話。「ずっとこっち育ちなの?」「16年間ずっと!」「え?」

16歳であることがバレると男が急に冷たくそっけなくなる。ああ、ヤレないとわかったら冷たくなるパターンかと思ってたら、亀梨は警察官?嘘だろ。ああ、だからタイトルが「PとJK」なのか。
警察官は言葉の節々と表情から不審な点を的確に見抜く訓練を受けている。

ヒロインにからんできた街の不良チンピラらをささっと制圧してカッコいい所を見せるのだが、このシーンが体よく不良たちに犯罪を犯させて現行犯逮捕する日本の警察官のいやらしいテクニックそのもので見ていて不快感。
ヒロイン土屋は同じ高校のダブリ同級生高杉真宙(金髪)にスケボーで殴られ昏倒。救急搬送。これは完全に前科がついて退学になる案件では?なのに謹慎で済む。そんなバカな。

土屋の両親が村上淳とともさかりえ。「僕の責任です」と頭を下げる若者を見たら不審に思うはず。「え、キミは彼氏なの?」この両親が娘が大怪我して昏睡してるのに楽観的すぎて違和感。

でもって後は「女子高生と警察官だからダメなの?!」障害のある禁断の恋展開。そう。法律上はダメです。

だが次の瞬間、男の口から信じられない言葉が。「結婚しようか?」16歳女子高生との男女交際は違法だが、結婚なら違法じゃない。なにそのウルトラC!? JK「やっぱり頭打ったの?」
そしてご両親にご挨拶。シュールな展開になるとは予測できなかった。
「高校を卒業するまで妊娠とかナシね」ということで父親から許可を得る。
玉城ティナがゼロ年代の市川実日子のような存在感。「結婚ってほんとだったんだ。ドン引きだわ~」
ずんぐり土屋と並ぶと玉城がすごくスタイルが良い。ふたりの通う高校の校舎が古い木造でとても味わい深い。

恋人として付き合うのをすっとばしてプロポーズされたことを素直に喜べるヒロイン。「結婚♥結婚♥」とか言いながら部屋でブリッジしてる土屋が可笑しい。

ヒロインたちが坂を駆け下りたりするシーンがとても多い。やはり函館は独特な街。
平巡査亀梨の住んでいる一軒家が広い。実家に一人で住んでるのか。

廣木カントクの映画は退屈なものが少なくないのだが、これはわりとユーモアのセンスが合っていて面白かった。亀梨と土屋のやりとりが逆に面白かった。高校生たちが楽しそう。

世界観が平和でいいなと思って見てたら、不良高杉真宙の家庭が貧乏でシリアス不幸。姉(江口のりこ)のヒモ男が粗暴で金をせびりに来る。こいつはコ口したい。
亀梨も警察官だった父親を殺人犯に刺され殉職というつらい過去。後半はわりと暗い。長く感じた。結果、楽しさが相殺されたw

不良グループたちの女子高生拉致監禁は少年院行きの重罪。その後の亀梨の劇団型潜入捜査官的なやつは見てらんなかった。警察組織ってそんなに緩いの?警官が刺されるって事態は「踊る大捜査線」なら大事件。

BGMの選曲センスがユニーク。ラストはちょっと笑った。なんだこの映画。それに警官が公務中に何やってんだ。

2021年5月10日月曜日

土屋太鳳「春待つ僕ら」(2018)

「春待つ僕ら」(2018 ワーナー)を見る。主演は土屋太鳳と北村匠海(DISH//)。監督はおなじみ平川雄一朗。

またしても土屋太鳳ヒロインのスウィーツバスケ青春映画。自分、このジャンルを見すぎてて、どの土屋がどの映画だったのか全然思い出せない。土屋太鳳主演映画が多すぎる。土屋はスウィーツ映画の女王。

「君の膵臓を食べたい」ブレイクで北村匠海が超絶売れてる時期。女子たちをキャーキャーいわす学園のバスケ王子さまF4(磯村勇斗、杉野遥亮、稲葉友)そこのフォーマットは変わらない。

友だちのいないヒロイン美月は幼いころに一緒にバスケをやっていたあやちゃん(小関裕太)は今も心の友。浅倉くん(北村)らのバスケの試合を応援に行ってあやちゃんと再会。え、あやちゃんって男だったの?しかもインターハイ常連強豪校のエース。でもって美月をめぐって浅倉くんとあやちゃんによる恋の三角関係。昔からよくみるベタ展開。
あやちゃん(小関)が初登場から受け付けないw 金髪ロン毛、襟足が長い。風貌が個性的すぎ。自分の事をあやふやにしか覚えていない女子にニヤツキながら近づいてきて平気でハグするようなアメリカナイズド野郎。朝倉くんたちの試合を観戦してると隣に座ってきて、頼んでもいないのに解説者。これ、タッチにおける新田みたい。

土屋太鳳が出てきた瞬間からビシッと美少女。さすがだ。なのに教室内で誰も友だちのいないキャラっておかしい。カフェでバイトして高校生男子から告られる…かと思えば人違い。「コイツじゃねえよ!」超絶失礼な辱め。

この職場カフェが勤務が緩い。朝倉くんらのたまり場になる。土屋はモデル体型じゃないところが逆にリアル日本JKで良い。
カフェバイト先輩に泉里香がいる。この人を見ると「バイト探しならIndeed」とか言いそうに見える。土屋も泉も胸でかい。

ヒロインが勇気を奮い起こしてきて話しかけてきたのに適切な会話を返さないクラスメート女子たちなんなの?
ヒロイン美月が教室で寝てる朝倉くんに大声を出してみるシーンとかなんかヘン。
女子たちがキャーキャー言ってる体育館に行ってみるとミーハー女子たちに突き飛ばされるとかお約束のよく見るシーン。ファン同士の争い。

ヒロインにはレイナ(佐生雪)という唯一のクラスメート友人ができるのだが、この子のキャラが面白い。ちょいトリッキー友人。スマホ壁紙が朝倉ら4人。
「ファンなの?」「私はもっとクリエイティブな目で見てるから」「ちょっと意味が…」「これ、隠し撮り?」「下世話な言い方しないで」「私はそのへんのファンの女たちとは違うの。もうひとつ上のステージにいるから」笑った。ここはすごくセンス良い。
このふたりのやりとりが面白い。土屋太鳳は生真面目シリアス顔がお笑いコントにすごく向いている。そこ、稀有な才能。

試合に負けた後の4人が暑苦しく言い合いしすぎ。え、そこまで熱心に練習してたっけ?茶髪で放課後ちゃらちゃらしてるのに?
その一方でヒロインが頑張るのが作文コンクール?ある意味リアル女子高生なのかもしれない。

なんか、すごく理想的な高校生男女の青春劇。おそらく視聴者のほとんどが女子中高生の映画。たぶん期待したものがそのまま出てくる映画。まったく期待しないで見たのだがそこそこ楽しめた。
とにかく土屋太鳳が立派だ。たぶんどこに出しても恥ずかしくない子。
仕事しながら8年かけて日本女子体育大学を卒業したことも立派。ドラマに映画に大活躍。ひょっとしてすべてのオファーを断らずに受けている?

2021年5月9日日曜日

永井路子「北条政子」(昭和44年)

永井路子「北条政子」を昭和49年角川文庫版で読む。(現在では文春文庫から出てる。)
昭和42年夏よりいくつかの地方紙に連載されたもの。644ページの長編。
来年のNHK大河ドラマがひさびさ鎌倉時代なので予習を兼ねて。

雨の夜、自分に男が通ってくるのを待っている政子…というシーンから始まる。地黒で口が大きくお喋りで気が強い、行き遅れ21歳処女という焦り。男の足音がしたけど結局侍女へ通う男のものだったという屈辱。
「おばかさん。待ってるくせに…。」政子の言葉が現代語でちょっとびっくりする。

下品で好きじゃない安達盛長がやってくる。こいつは蛭ヶ小島の流人源頼朝の家人。頼朝から館への誘いの手紙を持って来る。
馬上の頼朝を見かけたことがあるけど、目鼻立ちがハッキリしてて色白。30歳のわりにじじくさい。それにこっちを見もしない。16年間神仏に祈りを捧げてるだけの人。

で、頼朝に会いにいってみる。もうその夜から男女の関係。これが中世日本の常識。
源頼朝と北条政子。日本の歴史上これほど重要で重大な男女の出会いシーンは他にない。
しかし、プレイボーイ頼朝は地元豪族の娘や身分の低い娘にまで手を出す。政子激怒。

京都での勤めから帰ってきた北条時宗は長女と同じ年の後妻を連れてきた。なのに政子が頼朝とできてて激怒。政子を山木兼隆に嫁がせようとする。政子が頼るのはしっかりもの兄三郎宗時。
政子は兄の協力で頼朝の待つ伊豆山権現へ逃亡。土肥実平の館で過ごし、やがて娘も生まれ、時政と和解。

重厚な歴史小説かと思って読んできたのだが、あまりに現代的で軽くてコミカルな北条ファミリードラマでびっくり。なにこれ、面白い!まるでマンガ。

源氏の旗揚げ、山木館襲撃、大庭景親らとの石橋山合戦、そして安房に逃れ、坂東武者たちが次々と従う。ここ、永井先生はほとんど関心なかったらしくあっさり描写で一瞬で終わる。そして鎌倉に親子で住む。やがて男児(頼家)も誕生。

夫婦最大の危機が亀御前をめぐる政子の嫉妬による大喧嘩。亀御前の居る伏見の館を打ちこわした牧宗親の髻を斬った件で時政大激怒。北条は伊豆へ引き上げる。ただ一人館に残ったのが四郎義時。
(2022年大河ドラマは「鎌倉殿の13人」。三谷幸喜脚本ならきっとこの騒動をさらにに面白く描けそう。牧が政子の差し金であることをアッサリ白状してしまい、安達盛長と比企能員の「あちゃ~」という顔が今から楽しみ。)

九郎義経の源平合戦での活躍はほとんど書かれていない。頼朝と義経はどんどん仲違い。長女大姫と仲の良い義高(木曽義仲の子)を冷酷に殺した頼朝を、政子は憎む。大姫は父と母に心を閉ざしノイローゼ。そして頼朝は静御前の子までも殺す。奥州藤原を攻め義経を殺す。その幼い妻(河越重頼の娘)までも死なす。

長男の万寿(頼家)が周囲を召使だと思ってる。母の言う事もまったく聞かない。残酷で酷薄。すでに母子で対立。
富士裾野で頼朝と父子で巻狩。万寿が鹿を射止めたことを鎌倉に早馬。だが、政子は不機嫌。夫が美女をはべらせてるのも腹が立つ。使者に立った梶原景高は喜んでもらえると思ってたらアテが外れる。

このとき有名な曽我兄弟の仇討が発生するのだが、死傷者リストから見て、ふたりでできるようなことじゃない。しかも犠牲者は伊豆相模の人間が多い。
「後は任せろ」発言で失脚した範頼の件も、吾妻鏡に書かれてるようなことじゃなく、反北条反鎌倉勢力によるもっと大掛かりな事件。というのが永井先生の説。

二代目頼家が邪知暴虐の狂王。安達景盛が都から連れ帰った妻を拉致するなど非道の限り。その妻の若狭局が小言を言いに来た政子を蔑むような目で見る。頼家は蹴鞠に熱中。永井先生は蹴鞠を現代のゴルフ熱に例えてる。なにか高級なことをしてるという錯覚。
若狭の父比企能員が頼家を自分の家の将軍のようにふるまう。政子の妹保子の夫全成も殺された。政子「比企一族を討て!」

時政の家臣仁田忠常が頼家に命じられて富士宮にある人穴に行く場面がある。比企の者たちが待ち構えて襲撃される。これは失敗に終わる。頼家には「怪物に襲われた。浅間大明神だったかも」と報告。頼家は寝込む。
自分、5年前に人穴に行ったことがある。あの場所でそんなことが?!

後半はずっと血で血を洗う抗争。政子がずっと目にかけていた頼家の不良遺児公暁が実朝を殺す。背後には三浦義村が?!
頼朝に嫁いで40余年。夫、長女、次女、長男、次男、孫、すべてを失った北条政子。やはり源頼朝とその一族は呪われていたとしか思えない。

この本を読めば源将軍家三代のことがよくわかる。現代的感覚で書かれていて読んでいて面白かったし、読後の余韻も味わい深い。強くオススメする。
早くまた鎌倉に行きたい。

2021年5月8日土曜日

広瀬すず「あんのリリック」(2021)

広瀬すず主演ドラマW「あんのリリック -桜木杏、俳句はじめてみました-」全2回がWOWOWにて2月27日に前編(90分)、3月6日に後編(90分)が初放送された。

俳人堀本裕樹による俳句小説「桜木杏、俳句はじめてみました」(幻冬舎文庫)という原作のドラマ化作品。監督は文晟豪。脚本は荒井修子。

すずは人づきあいの苦手な大学生。言葉の感覚の鋭いリリックを口ずさむラップ少女桜木杏という役どころ。
見たくないものが見えて人間関係に傷つき暗くなり言葉に鋭くなった挙動不審少女。見えてしまったことを指摘して逆ギレされる。結果、友だちはいない。ある意味日本社会。

見えないようにあえてメガネ。家の中でもライミング。地味服であってもセンス良いのがモデル広瀬すず。杏はライブハウスでバイトしてる。コミュ障なのに?
ラップと俳句の融合にいどむスランプ中の広告代理店の若手コピーライター連城昴(宮沢氷魚)は酒飲んで昏倒。杏はリリックをイキイキと口ずさんでいるところを見つかる。「なんなんだ?この感覚は」

宮沢氷魚という人はわりと有名みたいだけど自分はまったく知らなかった。THE BOOMの宮沢和史の息子で国際基督教大卒のモデル俳優。

杏のラップがどこが良いのか自分にはわからなかったw ここはあふれ出る才能と天才ぶりをハッキリわかりやすく示すべきでは?
昴のセンパイコピーライターは社会人なの?っていう風貌。ローズ(夏川結衣)って何者なん?そんな影響力のある人なん?
句会をやってる大人グループ。自分には俳句鑑賞のキモが何もわからなすぎてつらい。

杏はアマで昴はプロ。若手会社員なのに見つけてきた女の子にバイト代を払う?そんな人事が可能なのか。杏の才能を買うのか?

杏はMCハゲボウズのリリックのブレーン?3000円で取っ払いの仕事?
このラッパーの人間性が酷い。「追い込むぞ」って何だよ。杏は酷い目にあっているようでそうは見えない。
昴は杏に自分の名前で出すべきだと言う。そんなことはしたくないと杏。気持ちが昂ったときのすずの演技は好き。杏が梅酒の話をしてて海街diaryを連想。このヒロインは静岡人という設定。

荒川良々がすずの父親?すでにおじいちゃんのようになっていてショック。てか、夏川結衣さんも自分の知ってる夏川さんとだいぶ変わってた。
ローズ夏川結衣チームはMCハゲボウズのリリックの作者が杏であることに気づく。夏川はMCはちみつを売り出す。なんなんこの業界。

杏は「MCはちみつ」として動画がバズる。だが、MCはちみつの「ヤラセ疑惑」を志の低い記者が報道。MCはちみつのリリックが本物であることを示すために、公開ネット中継での句会を実施。
なんだか邦画の雰囲気のドラマ。ラップと俳句とリリックの世界を描いていて展開が予想外。事前に聞いてもよくイメージできなかったストーリー。フリースタイルラップバトルってこんな感じなの?ラッパーすずが面白かった。

後半のほうがより面白いドラマかもしれない。杏と昴の恋愛ドラマ。それでいて若い人に俳句の魅力を伝えるような良作。俳句と同じで余白を残す。語り過ぎないところがよい。

2021年5月7日金曜日

広瀬すず「エアガール」(2021)

広瀬すず主演のスペシャルドラマ「エアガール」が3月20日にテレビ朝日で放送された。

戦後日本の民間航空会社CA1期生を描いた青春ドラマ。こういうゴールデンSPドラマで主演を張れるのは本当の人気女優のみに許される。広瀬すずはすっかり大人の人気女優。共演は坂口健太郎。

この当時はキャビンアテンダントなどという言葉はない。発足時はエアホステス、もしくはエアガール。
この時代の航空機は安全性で信用できない。1952年のもく星号墜落事故から1985年の日航ジャンボ機墜落事故まで多くのCAで殉職者を出している。なのですずが心配になりつつ見る。
敗戦後の日本の空はGHQに支配されていた。民間航空輸送は外国の航空会社に任せておけばよい。時の吉田内閣の側近白洲次郎(藤木直人)も同じ意見。

そこに立ち向かったのが松木静男(松尾静磨?)。GHQとの交渉の末、日本商工会会頭藤原一郎(藤山愛一郎?)を会長に、元日銀副総裁柳沢誠二(柳田誠二郎?)を社長に、「日本民間航空」をスタートさせる。なぜに会社名と個人名を微妙に変える?
史実と脚色を交えたフィクションドラマ。

白洲次郎が嫌なやつ。松木の邪魔をする。機体を借り受け客室業務のみ日本人で運営できるという屈辱に甘んじることで満足。パイロット機長、整備はすべて米国人。操縦室をのぞき込むだけでクソジャップ呼ばわり。アメ公氏ね!

ちなみに首都圏上空には今も「横田空域」という米軍管制下の巨大空域がある。完全な自由などない。
この時代、女性の就職は困難な時代。せいぜい給仕やタイピスト。英語力を求められるCAは超花形の職業。その伝統は現在も生きてる。

広瀬すず演じる小鞠は高倍率のエアガール募集に応募。伯母の経営する新橋料亭の現場を切り盛りしていただけに叔母の反対にあいながらも合格。
苦しい航空会社黎明期をスタッフとして支える。だが、やがて視力に異常が。網膜剥離で仕事を辞める…。

現在から過去を振り返る。ヒロインの孫娘が当時を知る老人から話を聴いている。こういう脚本、90年代ごろからよくある。

広瀬すずのセリフには独特の節回しのクセがある。そこが聴いてて味になっていて面白い。
海街では中学生妹だったのにもう大人で寂しい。

2021年5月6日木曜日

相沢沙呼「ココロ・ファインダ」(2012)

相沢沙呼「ココロ・ファインダ」(2012 光文社)を読む。
自分は過去に相沢沙呼を2冊ほど読んでいるのだが、あんまり自分とは合わず、もう読まないつもりでいた。

ところが、2年ほど前に、友人の家で鍋などするためにスーパーに買い出しに行くと、近くに児童館併設の図書館があって、そこに「ご自由にお持ちください」という棚があった。
何か読みたい本はないか?と物色。結果、数冊持ち帰った。つまり、図書館リサイクル本。タダでゲット。面白くなければまたそこに戻しておけばいい。その一冊をついに読んだ。

帯を読むと、「覗いたファインダーが写し出すのは、少女たちのココロの揺らぎとミステリー」と書いてある。この作家は鮎川哲也賞も受賞したことがある旨書かれている。
そして、表紙装丁を見て、きっと女子高生が二眼レフカメラを使ってみる話じゃないかと期待した。

つい、日常系青春ミステリーのような作風を期待してしまうのだが、この本に収録されている4本の短編(2010年から2011年にかけてジャーロ誌に掲載)のどれもがミステリーとは言えない。女子高生たちの心の揺らぎと、ちょっとした疑問の解消…といった程度にすぎない。この本みたいな、あれは何だ?ああ、そういうことだったのか。ということは毎日数回起こってる。

高校の写真部に在籍する女子高生たちの、友人との些細なことでのケンカ、コンプレックス、未来、そしてちょっとした謎。
彼女が写真を見て不機嫌になった理由は何?SDカードにあった壁ばかり映った写真の入ったフォルダは何?
そしてデジタル一眼レフ、ホルガ、ピンホールカメラ、大人の科学付録二眼レフなどの小道具。
どれもアイドル女優で15分ほどのドラマにはできそうだ。実際、自分は乃木坂ちゃんで脳内再生。

第4話が受験とやりたいことの狭間で悩む高校生というよくあるテーマ。写真家で勉強したいという思いを親に一蹴され、心が乱れるだけの話。これが一番読みやすい。

この本で描かれてることはもう大人には思い出すこともできない些細なこと。少女たちの言葉遣いと平易な文体でつづられる。中学生ぐらいが対象年齢じゃないか?

その心の機微は純文学の主題。もう少しさらに日本語として美しく文体の精度が高く、芥川、太宰、谷崎、川端、三島のようなきらめきを感じさせてくれればもっと好きになっていた。またこの本を拾った同じ場所に置いてこようと思う。

2021年5月5日水曜日

黒島結菜「流れ星」(2021)

黒島結菜がBSプレミアムのスペシャルドラマ「流れ星」(3月22日放送)に出演するというのでチェックした。 黒島はベテラン女優の松坂慶子さんと共演。
主演はおそらく松坂慶子さんのほう。松坂さんの昔のすごい美人女優時代を知ってる。すっかりおばあさんになってる。

このドラマの原作者は宅間孝行ということになっている。ということは舞台作品か何かか?NHKと共同テレビの制作。

下宿屋を営む松坂慶子は夫(船越英一郎)との関係がすっかり冷え切っしまっていた。ほとんど言葉も交わさなくない。自治会の集まりにふらっと出かけた先で倒れた夫は帰らぬ人となる。
しょんぼりしてるとそこにいきなりエキセントリック黒島結菜が現れる。「私は魔女の夢野マリー。願い事を4つ叶えてあげる!」唐突。

「は?」となった松坂だが、落として割ってしまったフォトフレームを黒島マリーが魔法で元に戻すともう信じてしまうw 
で、松坂が少女時代に経験した謎を調べるために1970年8月へタイムスリップ。
黒島、いくらなんでもタイムスリップしすぎ。それに風貌がちょい面白い。このドラマの黒島も美少女という感じがないw
なんだこの佐々木琴子が着るようなTシャツとヘンテコヘアスタイルは?1970年代なのでその当時の格好をしてないと溶け込めない…と自説を展開。

で、松坂は少女時代の自分(平祐奈)と父親(尾美としのり)に住み込み家政婦として雇ってもらう。黒島もいっしょに。「ふたりでひとりぶんの給料でいいから一緒に住まわせて!」
松坂は少女時代からずっと疑問に思っていたことがある。大阪万博に行って帰ってきたら、憧れてた下宿人の先生がふっといなくなっていた。それはいったいなぜ?
船越の若い時がチンピラ借金取り。父親に「金返せ!」と圧迫。最悪。
過激な左翼学生と疑われ人相の悪い刑事にマークされている下宿人もいる。メガネ浪人生もいる。このへんは昭和ステレオタイプな風貌。

そしてついにふたりは松坂が留守中にあった出来事を知る。先生がとつぜんいなくなった理由を知る。
そして死んだ夫が陰でこそこそやっていたあることとは?!
それほど劇的でもないファンタジーちょいイイ話。そんなに完成度の高い話でもない。正直、それほど面白くはなかったw

けど、黒島のピッタリTシャツ姿が新鮮だった。黒島から女性を感じたことはあまりなかったのだが、初めてわずかな胸のふくらみを意識した。

2021年5月4日火曜日

原武史 「松本清張で読む昭和史」(2019)

NHK出版新書から出てる「松本清張で読む昭和史」(原武史 2019)を読む。2018年に放送されてた「100分de名著」の内容に加筆再編集したもの。

松本清張の代表作「点と線」「砂の器」「日本の黒い霧」「昭和史発掘」「神々の乱心」の5作品を、書かれた当時の時代背景や社会、風俗、文化などを解説。
ちなみに自分はまだ「神々の乱心」だけは手に取ったことがない。そろそろ読もうかと思ってる。

「点と線」は昭和32年から33年にかけて日本交通公社(JTB)発行の雑誌「旅」に掲載された社会派推理小説を代表する傑作。東京駅空白の4分間のトリックはあまりに有名。

自分がこの本を初めて読んだのは小学生のとき。光文社新書で。もちろん漢字とかさっぱり読めなかったし、内容も半分ぐらいしかわからなかったと思う。

この当時は東京から博多まで、夢の寝台車「あさかぜ」が走ってた。この時代はまだ海外旅行が一般的でない。ちょっとは裕福な都民でも九州旅行が最上クラスのぜいたく。

鳥飼警部は自宅の風呂が五右衛門風呂。地方出張から東京に戻った三原警部は喫茶店でコーヒーを飲むのだが、この当時は美味しいコーヒーは東京でしか飲めなかっただって?!

「砂の器」は昭和35年から36年にかけて読売新聞夕刊に連載。これも映画化されたりしてあまりに有名。自分は新潮文庫上下巻を13歳の時に読んだ。かなり背伸びして頑張った。

けどやっぱり「ハンセン病」についてはほとんど何もわかってなかったし、まして癩予防法時代の偏見差別についてわかってきたのはつい最近。

この小説も鉄道。刑事たちは秋田の本荘や島根の出雲へ出かける。この当時は蒸気機関車で固い座席のボックス席。屈強な男たちでも長時間の鉄道旅にヘトヘト。そいうことも最近わかってきた。

「日本の黒い霧」昭和35年に文芸春秋に連載。この本は20代の自分に最も影響を与えた本。こういう本をそれまで読んだことがなかった。日本占領時代に起った不思議な事件。帝銀事件、下山事件、松川事件、もく星号遭難事故、などなど。下山事件に関してはこの文庫本を片手に事件現場の五反野まで行ってしまったw

占領政策が終わって10年経たないうちに、これだけの仕事を成し遂げた清張には畏敬の念しかない。今も世界で汚い事件が起こってる。清張先生が今いればきっと調べ上げて暴き立てていたはず。

清張は北九州小倉で生まれ貧しく学歴がなかった。なにもかもGHQ黒幕説にしてしまう清張を、東京出身で京大文学部卒のエリート大岡昇平は「ひがみである」と見下して批判。こういうの、むしろベストセラー作家になった清張をひがむ大岡という構図に見える。
一方で芥川賞選考委員だった坂口安吾は清張をしっかり評価。

「昭和史発掘」昭和39年から46年まで週刊文春に連載。これは8年前に文春文庫版全10巻を読んだ。

病弱で国民にとって不在も同然だった大正天皇が崩御し、若き摂政が天皇に即位し昭和になると直訴が頻発したって知らなかった。だから「北原二等卒の直訴」が起こったのか。昭和天皇は明治大帝の再来を期待されたのか。

清張は中橋基明を中心とする宮城占拠計画に重点を置いてる。中橋の気おくれの説明がいまひとつよくイメージできない。
三島由紀夫は昭和史発掘の連載を読んでいて、2.26事件への認識を変えた?!

秩父宮は西田税と陸士で同期。安藤輝三大尉とは宮のイギリス留学中も頻繁に手紙のやりとりをしていた間柄。昭和天皇の母貞明皇后は皇道派にとても同情的だったらしい。2月27日の弘前からの上京と貞明皇后との長い面会は昭和天皇を不機嫌にさせ不気味な印象を与えていた…。

「神々の乱心」平成2年から4年5月まで週刊文春連載の未完の遺作。未読。
昭和史発掘で得た資料と知見を活かして、天皇、貞明皇后、秩父宮を架空の人物や地名に置き換えたフィクション。
大正天皇崩御後に貞明皇后が皇太后として影響力を保持してたことに清張は気づいてた。終戦間際に昭和天皇は宇佐と香椎宮に戦勝祈願の勅使を送っていたのは貞明皇后の思いつき?!

近代国家になっても日本の宮中には古代王朝のシャーマニズム的宗教の名残が脈々と生き続けてることを指摘?!

2021年5月3日月曜日

広瀬アリス&すず姉妹「Living #1 ネアンデルタール」

昨年5月にNHKで放送(2020年5月30日)された、坂元裕二のオリジナル脚本全4話オムニバスドラマの第1話「#1 ネアンデルタール」に広瀬アリスと広瀬すず姉妹がふたりだけで共演している。録画しておいたものを今になってやっと見る。

これは締め切りに追われる作家阿部サダヲのギリギリ妄想というてい。この阿部が豊川悦司っぽい。CGキャラクター「ドングリ」(声:壇蜜)と会話しつつ物語を考える。なので広瀬姉妹は阿部の空想の産物。

クコ21歳無職(すず)は部屋でなぜか生ハム原木(イペリコ豚?)をスライスしてる。遅く起きてきた姉シイ(アリス)は25歳ダンスインストラクター。

このふたりは絶滅寸前のネアンデルタール人というてい。ホモサピエンスについて会話。だが、世間の20代女子姉妹のするような会話。「ぜんぜん出会いがない」恋愛とグチ。
姉「ホモサピエンスみたいにパンケーキ食べるような生活をしてみたい」「あいつらコミュ力だけはある」
妹「あいつら裏表あるし」「社会の輪の中から外れたら露骨にいじめてくるから!」「私たちの種を保存する義務がある!」日本社会を風刺。
「小山くんて誰?」「高校の同級生」「え、高校の同級生とまだ仲良くしてんの?」という日常グダグダ会話が続くドラマ。
すずのセリフには独特な音程の節回しとリズムがあることに今回見て気づいた。

固定カメラ撮影のせいか、すずもアリスも表情が大げさで面白い。おそらく、静岡の実家での広瀬姉妹がどのような会話をしていたのか?その雰囲気が垣間見える。その点でこのドラマは貴重。