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2026年1月17日土曜日

井上夢人「ラバー・ソウル」(2012)

井上夢人「ラバー・ソウル」(2012)を講談社文庫(2019年11刷)で読む。これ、BOで110円で見つけて3年ぐらい積読してたやつ。678ページ大長編。

モデル絵里21歳が屋外での撮影中に巻き込まれた最悪なもらい事故。女モデル同僚モニカとカメラマンが死亡、モデル男も重傷。
そして、容姿も醜ければ性格も醜い、働いたことのない資産家でビートルズマニアの最悪なストーカー鈴木との出会い。(鈴木にとっては人生最高の時だったのだが、女は事故直後のショックと混乱で何も覚えていない)

あとはひたすら鈴木のストーカー日記と関係者の証言。鈴木の独白が異常でまるで乱歩を読んでいるかのよう。
モニカと恋人関係にあった裕太を、鈴木は絵里と男女の関係と疑って嫉妬のあまり殺害。証拠隠滅のために部屋に放火。このときモニカのケータイを奪う。

そしてモニカのケータイから絵里に電話がかかってくる。ストーカーによるサスペンスホラー展開。
裕太と親しかったモデル事務所の社員富永が「幽霊からの着信」に疑問を持ち独自に調査。警察はアテにならない。

しかし、この探偵富永もハイテクストーカー鈴木によって殺害。それはまるでヒッチコック「サイコ」に登場する探偵の末路。

とにかく事態の進展がゆっくり。ゆっくりすぎてとにかくイライラ焦らされる。
おそらくすべての読者はいつかこの最悪なストーカー鈴木の犯行がバレて正義の鉄槌が降りることを心待ちにするようになる。ずっと身勝手すぎて不快な独白につきあう。

だがしかし!ここからはネタバレ回避のために何も言えない。この本が衝撃的なのはラストの章。え?!って驚きの声が出る。

2025年8月22日金曜日

井上夢人「プラスティック」(1994)

井上夢人「プラスティック」を講談社文庫版で読む。1994年に双葉社より刊行後2001年に講談社ノベルス。そして2004年に講談社文庫化というあゆみ。たぶん、岡嶋二人改め井上夢人でいちばん読まれてるかもしれない一冊。

作家の奥村のドアポストに投げ入れられたフロッピィディスク。その中には同マンション同フロアの主婦向井洵子のワープロ日記ファイルが書き込まれていた。

この主婦は出張に出た夫の帰りを待ちながらワープロを学習し、図書館で貸出カードを作ろうとしたエピソード書かれていた。
だが、向井洵子の名前で同じ住所で既に登録されカードが作られ本が借りられていた。まったく身に覚えがない。一体誰が自分の替りに登録を?怖い…という内容。

向井洵子は自宅で顔面を酷く損傷した状態で遺体となって発見。出張に出た夫も行方不明。
事件に興味を持った奥村は独自に調査開始。
日記によれば、向井洵子には同フロアに友人本多初美がいるのだが、洵子が鍵を身分証明書を持ち出して図書館カードを作ったのでは?と疑惑。

これ、最初のファイルから内容の辻褄が合ってなくて読者は激しく混乱。次々と読まされるファイルの矛盾する内容に困惑。

ほぼ認知症老人の迷惑な妄想のようなので、もしかするとヒッチコックの有名な映画と同じ状況か?とカンのいい読者なら感づいてしまうかもしれない。とにかく内容がカオスになってややこしくて困惑。

そして衝撃の真相。しかし、今日の読者はこんな内容のサイコミステリーやサスペンス映画に慣れているかもしれない。人によってはあまり驚けないかもしれない。

こういう事件、警察や司法がどの程度真相に近づいて対応できるのか?たぶん、プライド高いだけの警察官には無理なんじゃないか。

2025年1月27日月曜日

岡嶋二人「ダブル・プロット」(2011)

岡嶋二人「ダブル・プロット」(2011)を読む。今作は1989年9月に講談社文庫より刊行された「記録された殺人」に未収録作品3本を加え再編成した講談社文庫オリジナル企画。

オビには「幻のコンビ作家岡嶋二人、最後の最新作!?解散から22年、著者も驚く未収録作品発見!」とある。これはBOで110円で手に入れたものだが文庫初版だったようだ。

すべて80年代前半の9本の短編を収録。
  1. 記録された殺人
  2. こっちむいてエンジェル
  3. 眠ってサヨナラ
  4. バッド・チューニング
  5. 遅れて来た年賀状
  6. 迷い道
  7. 密室の抜け穴
  8. アウト・フォーカス
  9. ダブル・プロット
どれも周囲で起こる不審な事件から意外な真相が明らかになる短編。
80年代初めのことなので、Z世代にはピンとこないことばかりかもしれない。映像を撮るのはフィルムだし、岬の道にガードレールがなかったり、海外ポルノ雑誌の通信販売だったり、カーナビがあれば起こり得ない事故だったり。

巻末解説で井上夢人氏が書いているのだが「若書き」で恥ずかしいとのこと。
自分が好きだったのは「眠ってサヨナラ」と、松本清張でよく見る展開の「迷い道」。

あと、文庫表題作「ダブル・プロット」はユニーク。岡嶋二人のふたりがこんな感じで作品を書いていたのか…と思わざるをえないのだが、本人によればこんな感じではないらしい。

ちなみに、自分の手持ちの岡嶋二人文庫本はこれにてすべて読了。今後は買い付けに出かけるか、フェーズ2へ移行するか。

2024年10月9日水曜日

岡嶋二人「殺人!ザ・東京ドーム」(1988)

岡嶋二人「殺人!ザ・東京ドーム」を読む。この作品は1988年9月に光文社カッパ・ノベルスより刊行。91年に光文社文庫化。2004年に講談社文庫化。
今回自分が手に入れたものは2006年の4刷。昨年春ごろにBOで110円で購入。

後楽園球場が取り壊され東京ドームへと生まれ変わったのが1988年。この年は中日が優勝し、王監督が解任。
東京ドームは建設以来、誰もが知ってて多くの人々が集うイベント会場。なのに東京ドームを舞台にした小説も映画もドラマって見たことない。なんで?
エラリー・クイーンにヤンキースタジアムが舞台の短編があったけど、その他に野球場が舞台のミステリーがあるのかどうかは寡聞にして知らない。(調べてみたら意外にたくさんある)

主人公は昆虫をピンに刺して写真を撮ることを趣味とし、クリーニング店娘に秘めた恋をする暗く孤独な痩せた青年。東伊豆ハイキング中にたまたまアマゾン原住民の矢毒を手に入れる。
そこから始まる東京ドームで野球を観戦する人々を狙った無差別殺人ノワールとサスペンス。

これも一気読みできるサスペンスドラマ。犯人、刑事、脅迫者、それぞれからの目線。そして意外な顛末。

2024年8月21日水曜日

岡嶋二人「コンピュータの熱い罠」(1986)

岡嶋二人「コンピュータの熱い罠」を読む。BOで110円で手に入れた
この作品は1986年に光文社から刊行後、90年に光文社文庫化。そして2001年に講談社文庫化。今回自分が読んだものは講談社文庫初版。

結婚紹介サービスのデータセンターでオペレーターとして働く夏村絵里子は27歳のITエンジニア。(もう80年代中ごろには個人情報は厳格に扱うものだという概念があったのか。)

で、顧客の情報を見せろ!とやってきた中年女性に対応。丁重に断るのだが、この女性の兄51歳はここで紹介され結婚した女性27歳に殺されたと主張。新婚1か月でフィリピンで水難事故死したことにされているが、女に殺された!

さらに、倉庫会社勤務の恋人が独身男性データとして登録されていることを知る。男性に問い詰めると、会社の独身男性はみんなオトリデータとして情報を提供してるんだから気にするなと言われる。
しかし、このデータが内容スカスカなはずなのだが、いつの間にか個人情報がみっちり書き加えられている。それは不審。同僚の古川と一緒に調査。

この古川が何やら大きな事件が起こってる兆候をつかんだらしい。するとあっという間に殺害。さらに自宅アパートを荒らされる。何か重要な証拠を持ち去られた?
途中からまるで宮部みゆき「火車」のような、恐るべき犯罪とその中心にいる女の正体に気づき始める。8人の男性が結婚1か月で死んでいる…。

岡嶋二人作品のヒロインはみんなどこか天然で呑気。このヒロインも自らずんずん調査していって自身の危機一髪。いやもう恐ろしい。これはずんずんページがめくれるサスペンス娯楽作!

ヒロインの敵と想われていた同じ会社のプログラマーが、「エルピス」の岡部たかしのような質感だった。登場したときは最悪に嫌なやつだったのに…。
あと、警察がおそるべき無能。こんな凶悪な犯罪に気づいてさえいないとか。

「クラインの壺」が面白かった!という若い読者には、「99%の誘拐」か、この「コンピュータの熱い罠」をオススメしたい。話のテンポが良いし、文体も読みやすいし、無駄に感じる冗長なやりとりとかも一切ない。

ボリューム感サイズ感もちょうどいい。岡嶋二人作品の中でもかなり面白いサスペンス小説。
1986年というとレトロな作品のはずだが、古いのに古くない。なんで未だに映画化もドラマ化もされてないんだ?
PS. 読み終わってすぐに光文社文庫版がそこに110円で売られていたので買ってしまった。いずれまた再読したい。

2024年5月31日金曜日

岡嶋二人「三度目ならばABC」(1984)

岡嶋二人「三度目ならばABC」(1984)を2010年講談社文庫(増補版)で読む。岡嶋二人が昭和57年~59年に「小説現代」などで発表した短編7本を収録。

三度目ならばABC(小説現代 昭和58年8月号)
金曜日の夜に発生するライフル連続発砲事件。番組制作会社の織田と美郷はテレビ局ディレクターから再現映像を作るよう指示され現場を取材。クリスティの「ABC殺人事件」と同じようなものでは?と主張する美郷に耳を貸さない織田だったのだが、3件目でついに死亡者が発生し…。

電話だけが知っている(別冊小説宝石 昭和57年冬号)
イラストレーターが自室で殺害され車のセールスマンが逮捕された事件。証拠は電話機に残された指紋のみ。セールスマン行きつけの喫茶店の店員が織田と美郷の番組に依頼。殺害時間に間違い電話をかけた人がどこかに居るはず!

三人の夫を持つ亜矢子(小説現代 昭和59年2月号)
3人の夫を持つ女優。3人目の夫の死体が1人目の夫のクルマのトランクから発見され逮捕。だがいつものように美郷のカンが働いて…。

七人の容疑者(小説現代 昭和59年4月号)
誘拐事件の取材中に美郷のカメラが盗まれた事件。

十番館の殺人(小説現代 昭和59年5月号)
怪物たちに扮装した状態での刺殺事件の再現映像収録リハ。

プールの底に花一輪(小説現代 昭和58年10月号)
会員制高級ラウンジのプールでの女性溺死体。カンのいい天然美郷が危機一髪。

はい、チーズ!(小説現代 昭和59年10月号)
昭和62年の文庫化には未収録だったので、今回の増補版で文庫初収録。
カメラマンの毒殺事件。

どれも80年代の雰囲気のするライトな作品ばかり。若手アイドル女優主演の深夜30分ドラマの原作にぴったりな感じ。
正直、岡嶋二人は長編のほうが自分には合ってるなと感じた。

2024年4月19日金曜日

岡嶋二人「ダブルダウン」(1987)

岡嶋二人「ダブルダウン」(1987)を読む。これは週刊ポストに連載後、小学館から刊行。そして1991年に集英社文庫化され1999年に講談社文庫化。

ボクシングの試合中、ともに4回戦ボーイの若いボクサー二人が、青酸中毒で相次いで倒れ死亡した事件。
雑誌記者の中江と編集者麻沙美、そしてボクシング評論家の八田が事件と真相を調査開始。

ボクシングの試合中にそこにいた人物、毒物が体内に入っていく過程を追う本格推理か?と思いきや、人間関係の聴きこみの末に、女の姿と脅迫。事件は伊豆山中へという社会派ミステリー。

80年代末、推理小説といったらこういうスタイルが流行り。爛熟期を迎えていた。これはそれなりに力作。真犯人も意外にして、2時間ドラマに適切なミステリードラマ。
中江と麻沙美の男女コンビが発端をつかんで真相に迫っていく過程を楽しむ娯楽作。だが今作はそれほどユーモア会話は少ない。

まあ、真相はそんなことだろうという感じ。だが、こんなことで死んだ被害者は気の毒。

2024年4月18日木曜日

岡嶋二人「眠れぬ夜の報復」(1989)

岡嶋二人「眠れぬ夜の報復」(1989)を読む。これは双葉社より刊行後に1999年に講談社文庫化。

プロボウラー草柳は16年前に押し込み強盗に両親と妹を殺害され人生を狂わされていた。代打ちの仕事で訪れた大阪のレーンで、かつて盗まれたボールを発見したことで、公訴時効を過ぎていた事件が再び動き出す…。

聴きこみの末に、盗品ボールは輸入商社の倉庫の廃棄物置き場で拾われたものらしい。草柳はなぜかこの商社の商品であるオレンジに針を混入させる事件を起こして、世間の目を商社に向けさせることで事件が再び注目されることを狙っていた?!

途中から脅迫された商社の社長室秘書が主人公になる。過去の社員を調査してるうちに、とあるスポーツ用品店に行きつくのだが、おびき出されて拉致監禁。

これ、「眠れぬ夜の殺人」とタイトルが似てるなと感じつつ読んでたら、あの捜査0課が登場。頭脳派指揮官の菱刈、お色気潜入捜査アクションの聡美、後方支援の相馬の3人が登場するヤツじゃん!

盗聴したり尾行したり、敵を騙してハニートラップなどほぼスパイ大作戦な爽快な勧善懲悪ドラマ娯楽作。事件の発端からだんだん予測不能な全体像が見えてくるやつ。

このシリーズは岡嶋二人のコンビ解消により、たった2作で終了。こんなに面白いのに。
聡美は長○まさみでやってほしいけど、海街のころなら適任だった。てか、コンフィデンスマンJPみたいな雰囲気。
誰か、こんなふうに敵を罠にはめる形式で、自民党の裏金議員たち悪党をこてんぱんにやっつけてほしい。

2024年4月4日木曜日

岡嶋二人「そして扉が閉ざされた」(1987)

岡嶋二人「そして扉が閉ざされた」(1987)を講談社文庫2021年新装版で読む。これはわりと最近の新装版発売だったので、多くの人に読まれているようだ。

男女5人が集まった咲子の別荘から、カッとなった咲子は愛車アルファロメロで飛び出した乃後、崖から海に転落。痴情のもつれの末の悲劇?

地下シェルターで目を覚ました5人。外部と連絡がまったくとれない。時間もわからない。
どうやら5人とも咲子の母におびき出され睡眠薬を盛られ閉じ込められているらしい。なんでこんな理不尽な目に遭うのか?

咲子の死の原因を話し合う5人。咲子は5人のうちの誰かに殺され、事故に見せかけて崖から海に棄てられたのではないか?
脱出しようと奮闘しながらの討論は堂々巡り。なにせ確かめようがない。
やがてシェルター内部で凶器となったかもしれないアイスピック、そして事件当日に咲子がしていた片方のイヤリングも発見。そんなものがなぜここに?!

これはかなり集中力がないと現在地を見失う。その真相はかなりややこしい。
この話は5人による密室劇と回想シーンで舞台芝居ぽい。
ほとんど日本要素がないので、誰か上手く翻訳して海外に紹介してもらいたい。

2024年3月11日月曜日

岡嶋二人「珊瑚色ラプソディー」(1987)

岡嶋二人「珊瑚色ラプソディー」(1987)を集英社文庫(1990)版で読む。

勤務先のシドニーから婚約者の彩子と結婚するために、二週間の休暇を得て成田に降り立った里見は出迎えているはずの彩子がいないことに気づく。弟によれば、彩子は沖縄の八重山諸島にあるという石富島というところで盲腸炎で病院に担ぎ込まれ手術したらしい。

急きょそのまま成田から沖縄に飛んで現地に急行した里見は彩子と再会。だが、彩子は前後の記憶がはっきりしない。女友達の蓮田乃梨子と一緒に旅をしていたと主張するのだが、乃梨子の母に電話すると乃梨子は青森を旅行中とのこと。え、そんなはずはない!

要領を得ないまま里見は方々に話を聴いて回る。病院に手術費入院費を払った40歳ぐらいの男がいた?彩子はその男と旅館に宿泊していた?里見は婚約者に疑惑の眼差し。だが、彩子は「信じて!」

週に二度、片道3時間の定期便が出る宇留間という島に彩子は乃梨子と一緒に行ったはず!
この小さな離島の診療所に乃梨子の兄が医師として勤務していた。
里見はこの医師を訪ねて話を聴きにいく。「え、ふたりは来てないけど!?」

いったい何がどうなってる?里見を尾行する若い男。宇留間出身の歌手、追っかけ少女、人相の悪い男、様々な謎。

何かを隠ぺいしようとする勢力と、真相を探ろうとするカップルの戦い。そして冒険。そしてラブ。
まるでスパイ小説のような面白さ。一晩でイッキ読み。ああ、この岡嶋二人もまるで展開の読めないやつ。ずんずんページをめくれる面白さ。

2024年2月29日木曜日

岡嶋二人「クリスマス・イヴ」(1989)

岡嶋二人「クリスマス・イヴ」(1989)を中公文庫版(1991)で読む。(1997年に講談社文庫化もされている)

山の中にある別荘でのクリスマス・パーティーに向かう喬二と敦子は口論中。男女3人ずつと聞いていたのに1組は夫婦でもう1組は婚約中。そんなの聞いてない。喬二は敦子に気があるけど、敦子はそんなつもりじゃなかった!

他にクルマの通らない山の雪道を夜間に到着。え、真っ暗なんですけど。なにかのサプライズかと思ったら、え、血まみれ死体があるんですけど?!どうやら別荘所有者の息子の小坂?!

電話線が切られてる。そして暗がりから突然「死ね!」と男が襲撃。しかし喬二は反撃し男は逃げる。顔はチラッと見たのだが知らない男だった。
そういえばここまで来る途中で乱暴な運転のジープとすれ違った。そいつが小坂を殺して、我々の車を見て引き返してきたのか?

ここまで来た車がめちゃめちゃに破壊されている。ガレージにあるはずの友人の車も破壊されている。そして小坂の妻の遺体も発見。警察を呼ぼうにも、町まで雪道が20km。どうすんの?

もう1組の喬二の友だちカップルが来てるはずだ。猟銃を持った賢志と遭遇。自分の車は事故で失ってしまった。連れの女は遅れてくる予定。
賢志が言うには、近くの別荘で男が女を殺すのを目撃してしまった。
その男が自分を追いかけてきて小坂とその妻を殺した?!だとすると犯人はイカレたキチガイ。

近所の別荘に老人がいる。車もある。助けを求めたら、こちらの3人が別荘荒らしの犯人だと思われ、銃を取り上げられ逆に銃を突きつけられる。この老人もめんどくさい。この家の電話線も通じない。
そこに殺人鬼男が訪問してくる。この男は大場というらしい。だが、大場「そいつらが犯人だ」。
なんとふてぶてしい。大場はチェーンソーで木々をなぎ倒し道をふさいで老人の車で逃げれないようにもする。

そして殺人鬼VS4人の夜間の雪山での死闘という展開。しかも大場の腕には鋏が刺さったり負傷してるはずなのに不死身のようにこちらを追いかけて殺しにかかってくる。こちらの猟銃の弾もすでにない。

大場が来ないか交代で見張っていた老人は喉を切られて雪の中で死んでいた。谷底に落ちて雪の中を逃げ回る敦子。鉈を持って不気味に追いかけてくる大場。
ドアを開けると刃物が飛んでくる罠もしかけてくる。ジープを手中にしていて手荒にこちらに迫ってくるのに頭が良い。さらに死者!そして死者!別荘に隠れていてもガソリン撒いて放火…。

怖い。たぶん「13日の金曜日」の雪山別荘版ホラー。大場がほぼ怪獣。こんな狂ったやつにロックオンされて助けも呼べないとか最悪。こんな大量殺人と放火、生き残ったとして後にどうやって警察に説明すれば?その裏取りは取れるの?

2024年2月28日水曜日

岡嶋二人「眠れぬ夜の殺人」(1988)

岡嶋二人「眠れぬ夜の殺人」を読む。昭和63年に「小説推理」誌に2回に渡って分載され、同年双葉社より出版。1990年に双葉文庫化。1996年に講談社文庫化。

真面目なサラリーマンが酔っ払いの労務者風チンピラに路上で絡まれ、もみ合ううちに相手が転倒し死んでしまう…という最悪な出来事。そして、「見ていた」という脅迫。

ああ、こんな松本清張でよく見る暗転と転落イヤミスを読むの、しんどいな…と思って読み進めるのだが、途中から何やら雰囲気が変わってくる。

え、東京都内各所で同じような、酔っ払いちんぴらが高い地位にいる真面目な男を狙って絡んでイザコザを起こし、ちんぴら側が倒れて死亡する事件が何件も起こってる?!どの事件もみんな同じ構造。
路上で喧嘩した場所が被害者の生活圏から離れてる。そしてその前日の足取りがつかめない。

この件に気づいてる男女グループがいる。事件の背後と全体像を捜査してる。ボスに相当する人物が、事件の本当の黒幕悪党を探るべく的確な判断と指示を出している。

黒幕が相当に慎重なのだが、捜査する側がとてつもなく天才的に有能。危険な工作と潜入捜査を担当する聡美(美女)がとてつもなくかっこいい。

最初は社会派推理小説だろうな…と、ちょっと失望しながら読み始めたのだが、全体の3分の2ほど読んだところで、これは爽快な展開が期待できる!となった。あとはどうやって黒幕を暴いて悪党たちに報いるかが焦点の、爽快な潜入美女捜査官スパイアクション。

いや、こんな面白い展開をよく考えつく。まるで予想がつかない。傑作!文庫解説は貫井徳郎。
SNSでブラックバイトを見つけて乗っかってしまう若者にこれを読ませたい。利用され棄てられる駒でしかない。

なんでこれぐらい面白いクライムサスペンスとアクションの邦画がないんだろう。あと、東京地検特捜部もこれぐらい有能であってほしい。悪事を白日の下にさらして巨悪自民党をぶっ潰してほしい。

2024年2月27日火曜日

岡嶋二人「解決まではあと6人」(1985)

岡嶋二人「解決まではあと6人 5W1H殺人事件を読む。1985年に「5W1H殺人事件」として双葉ノベルスから刊行。89年に「解決まではあと6人」に改題され双葉文庫化。1994年に現在のタイトルになって講談社文庫化。

この本、今まで読んだことのない構成。平林貴子という謎の女性が探偵事務所にやってきて調査依頼。それが「このカメラの持ち主を調べてくれ」というもの。
女性は住所も職業も明かさない。調査の目的も教えない。
で、探偵が方々に聞き込みしてとあるアパートを訪ねると腐乱死体を発見。行方知れずだった大学生が殺され、その部屋の男が逃走?指名手配へ。

次に「Vで始まる名前で、緑色のマッチを使っている喫茶店」を探すように、別の探偵事務所に依頼。
探偵は東京中の喫茶店を探し回る。経験とカンとひらめきによって探し出す。(この時代にインターネットはない)

平林は別の探偵に「盗難車の後部シートがなくなった理由」という調査依頼。読者はもう何がなんだか。
この探偵が尾行されたり逆に尾行したり。

さらに別の探偵には「わけのわからない音が入ったカセットテープに秘められているらしい情報」を探り出してほしいという調査依頼。
ここでも探偵が持てる力と伝手を使ってブレイクスルー。暗号を解く。
これが昭和末期に情報工学系学生だった人でしかわからないであろうもの。昭和時代はコンピューターの外部記録メディアがカセットテープって、今の若者は信じられないかもしれない。

そして最後の探偵には、「とある男を呼び出して、ある男の行方について聞いてみる」というもの。
ジャンル的には社会派推理小説だが、こんな断片的でこんがらがった情報を与えられた読者は誰だって混乱する。
しかし、その構成と語り口がとても巧妙。それでいてページをめくっていく推進力。まったく予想のできない展開。

多くの探偵が登場するけど、5軒の探偵社の彼らに横のつながりが一切ない。お互いに会うことがない。
最後に意外な真相と犯人まで用意。主人公とは思われなかった若手刑事の意外な活躍。ああ、岡嶋二人はこれほどまで野心的な作家だったのか。

昭和時代は個人情報の管理が甘々。探偵が聴きこみ先の大学で学生名簿のコピーも採れるの?!顧客の情報も教えるの?警察が探偵に依頼人を教えろとか言うの?!
かなりの部分で今の時代と合わなくなってる。

2024年2月26日月曜日

岡嶋二人「どんなに上手に隠れても」(1984)

岡嶋二人「どんなに上手に隠れても」を読む。1984年にトクマノベルズとして刊行。88年に徳間文庫化。今回自分が読んだのは1993年講談社文庫版。

新人アイドル歌手・結城ちひろ17歳は、大手企業とのCMキャンペーンも始まるという直前になって、テレビ局での収録待機中に楽屋から姿を消す。警察には誘拐事件が起こるかもしれないという電話。

そして犯人から1億円の要求。芸能事務所、カメラメーカー宣伝広告部、警察が連携。
犯人は現金受け渡しにマネージャーを指名。犯人からの指示によって都内のあちこちをたらい回し。だが犯人が慎重。

運送会社に小包として運ばせるのだが、運送トラックはやがて知多半島のちひろの出身地へ。
ずっと尾行していた警察はついに身代金受け渡し場所を押さえて結城ちひろの身柄を無事確保。
だが、ずっと目を離さないでいたはずの1億円入りダンボール箱の中の紙幣は新聞紙にすり替わっていた!?いったい、いつどこで?
身柄確保された男たちもただ頼まれ仕事をしただけ。

犯人に一杯食わされた矢津刑事と若松刑事たちのぐるぐる巡る推理。狂言誘拐の要素もあたのでは?やはり新製品カメラの宣伝に関わった長谷川が犯人か?
そして、身代金受け渡しの一部始終を撮影してたカメラマンが殺される。

いやまったく予想外の展開。ジャンル的に松本清張のような社会派。ちひろのマネージャー有能。ページをめくる推進力があった。一気読みした。
読み終わってこのタイトルの意味がわかった。文庫解説は東野圭吾氏。

2024年2月25日日曜日

岡嶋二人「七日間の身代金」(1986)

岡嶋二人「七日間の身代金」を読む。1986年に実業之日本社より刊行されたものを1998年に講談社文庫化されたもので読む。

死人も発生した狂言誘拐事件の意外な真相…という感じのサスペンス。

資産家鳥羽の息子の前衛芸術家とその舎弟が何者かに誘拐。縛られたふたりの様子が映ったビデオテープが送り届けられる。
風変り芸術家国彦は舎弟の和己(父の年の離れた妻の弟)を散弾銃で脅して撃つなど悪戯を超えたサディスト。
国彦が所有する湘南の海に浮かぶ小島へ、身代金二千万を届けに行った義理の母須磨子が銃撃され死亡。和己は鳥羽家の別荘地下室から瀕死の状態で発見。
小島へは橋が一本。犯人はどこへ逃げた?現金も凶器の猟銃も行方がわからない。なにやら本格の雰囲気。

警察署長を父に持つシンガー千秋と、そのパートナーでピアニストの要之助。若い二人が頼まれたわけでもないのに現場にぐいぐい介入。警察よりも早く監禁されていた被害者を発見したり、真犯人に気づいたり、真相にたどり着く。

まるでアガサ・クリスティー初期のトミー&タペンスのような、恋人未満の若いカップル探偵の冒険、そしてラブ。

2時間ほどで読める。ぐいぐいページをめくれる面白さ。会話もオシャレ。岡嶋二人にハズレなし!という娯楽作ミステリー。

2023年9月25日月曜日

岡嶋二人「99%の誘拐」(1988)

岡嶋二人「99%の誘拐」(1988)を講談社文庫(2004)で読む。第10回吉川英治文学新人賞を受賞したとある。

昭和50年年末、末期がんで残された時間がわずかになった病床の男が、息子に向けて手記を書いている。
昭和43年、三億円事件が世を騒がせていた時期よりもちょっと前に起こった、イコマ電子社長の5歳息子が幼稚園登校する前に自宅から誘拐されるという事件が起こった。

犯人が要求してきた金額が5000万円。アメリカの親会社の業績悪化に伴い、これから国内で半導体生産工場を立ち上げようという時期に、どうしても必要だった金を身代金として支払い、夢を諦めた男の無念。

犯人は身代金を金塊に替えるように要求。新幹線の時刻など細かく指示を出し、最終的に瀬戸内海のとある地点で海中に遺棄させた。おそらくこの金塊は犯人グループによって回収されたものと思われていた。

だが、昭和62年夏。瀬戸内を潜っていたダイバーが金塊を引き揚げようとして溺死してたことが判明。これは、12年前に起きた児童誘拐事件の身代金として海中に遺棄された金塊だ!

身代金支払いとイコマ電子をカメラ会社リカードに吸収合併された生駒洋一郎の息子慎吾は25歳になり、リカードの社員となってカナダ支社で働いていた。
そして、リカード会長の孫(中2)が誘拐。身代金は10億円。全額をダイヤモンドに替え、金属容器に入れ、受け渡しを慎吾にさせる合成音声による女性の声で犯人から電話。

そして、東北道、蔵王へ、犯人からの指示のまま大追跡。
だが、この本の読者は、犯人が慎吾の作り出したコンピュータープログラムと音声であることを知っている。
そんなバカな?というストーリーのようでいて、これは今現在の技術力であながち不可能じゃなくなっている。

いったいいつどこでバレるのか?と思って読むのだが、最後までスカッと鮮やかな復讐劇。1人の死者も怪我人も出さずに、父を陥れた汚いやつらから倍返し以上の仕返し。誰もがこんな復讐をしたい。日本を壊した竹中平蔵と経団連に同じことをしたい。

2時間ぐらいであっという間に読んでしまった。見たことない展開で飽きることなく一気に読んでしまった。余計なことは語りすぎない文体が良い。これも面白かった。

2023年5月19日金曜日

岡嶋二人「焦茶色のパステル」(1982)

岡嶋二人「焦茶色のパステル」(1982)を講談社文庫2012年新装版で読む。
この作品が岡嶋二人のデビュー作にして江戸川乱歩賞受賞作

ただ、どう見ても内容が自分と馴染みのない競馬の世界。なんとなく自分とは合わないだろうなと数回スルーしていたのだが、「クラインの壺」が面白過ぎたので作者のデビュー作も読んでおかなくてはと手にとった。

競馬評論家(記者?ライター?)の大友が東北の牧場で射殺されたという事件。牧場長もともに撃たれ死亡。さらに同じ牧場でサラブレッドの母子モンパレットとパステルまでも撃たれて死亡しているのが発見。巻き添えで銃弾を浴びたのか?

大友とは夫婦関係の冷え切った妻香苗が夫の死に疑問を抱いて関係者に話を聴き回る。
なんだか松本清張のような社会派ミステリーサスペンスの様相。
競走馬生産と売買という狭い世界で起こったきな臭い事件。どうやら競走馬の血統と種付けをめぐるトラブル?人は数千万円の金が関わるとなると人を殺す…かもしれない。

結論から言って、やっぱり自分とはあまり合ってなかったように思った。途中からおそらく競走馬の血統と遺伝に関する隠ぺいと陰謀だろうと想像がついた。
自分は白い馬を「芦毛」と呼ぶ…という知識すらなかった。調査する妻香苗とその友人芙美子も競馬素人なので、そのへんの説明はわかりやすくしっかり念を押してくれる。だが、話が展開するにつれ、どうしても競馬常識がないとピンとこなくなっていった。

香苗と芙美子のふたりが牧場に潜入していく箇所は、まるでヒッチコックの「裏窓」みたいに「あ、バカ!」って思ったw よくそんな危ない状況で大胆無謀にずんずん入っていける。
案の定、TRICKの上田と山田が村人に追いかけられるのと似た状況。だが、タクシー運転手が有能だった!w そして相互不信の心理戦。ここはハラハラできた唯一の箇所。

岡嶋二人の著作を全て読まないと気が済まないという人は読むべきだが、「クラインの壺」が大好き!という人にはそれほどオススメもしない。自分、まだディック・フランシスの競馬シリーズも手に取ったことがない。

2023年5月18日木曜日

岡嶋二人「クラインの壺」(1989)

岡嶋二人「クラインの壺」(1989)を新潮文庫(平成5年)で読む。平成初期のVR仮想現実空間サスペンス。

主人公上杉彰彦は大学生。趣味で書いたゲームブックを公募に出す。規定の4倍も長いため落選するのだがイプシロン・プロジェクトというゲーム会社(?)から5年間で200万円で権利を譲る契約。就職先も決まっていなかったので渡りに船。
これが時代の先端を行く画期的に新しいゲーム。実際に体験したように映像を見て肌に刺激。現実と区別がつかないほど。

しかし、連絡がこない。ようやく連絡が取れた。だが、溝の口の事務所から目隠しされたバンで30分かけて研究所へ移送され、そこでゲームの最終確認的にモニターとしてプレイさせられる。
自分で書いたアドベンチャーなので展開は知ってる。アフリカの小国に失踪した博士を救出に行くスパイアクション。

だが、ゲームにはまだ未完成の部分がある。バグのような?途中で画面が消え暗闇を落下するような不快な衝撃。そして「戻れ」という男の声が聴こえる…。

義理の兄が事故に遭ったと連絡。試験を中断し病院に駆けつけるも、そんな人は救急搬送されていない。もしかして、ライバル社がさぐりを入れるためにおびき出された?

美人でカワイイ高石梨紗という女の子もバイトで参加。だが梨紗が急にバイトを辞めると連絡?あれだけ一緒に仲良く話をしてたけど、そんなそぶりはまったくなかった。

梨紗の親友だという真壁七美という美少女が登場。梨紗と同じ学校でデザインを学んでる。家出少女同然で梨紗の部屋にいる。メモ帳に電話番号があったということで上杉に連絡してきた。梨紗と連絡がまったく取れなくなったという。

上杉と七美の間でこれまでの状況を照らし合わせるのだが、事実関係がまったく合わない。
梨紗はいったいどこへ?イプシロン社の言うことがだんだん信用できなく感じ始める。上杉は疑惑を深めていく。
上杉と七美はふたりで調査を始める。イプシロン社の正体とは?アメリカの病院での死亡事故とは?「クラインの壺」とは?!

なにせ平成元年の作品なので、ケータイ電話のない時代。安否確認ですれ違いのもどかしさを感じる。
しかも、VR空間で体験した虚構と現実とのギャップによって、登場人物たちが混乱に巻き込まれて行く。そして、驚きのラスト。

これ、今ではこの展開に慣れてしまった読者もいるかもしれないが、自分は予想以上に面白かった。
ページをめくってる最中もわくわくハラハラできた。語り口が巧み。読者も主人公と同じように戸惑いを感じるはず。
話の内容をあまり上手く説明できない。じわじわ怖いし、ラストもふわっと怖い。
VR世界の胡蝶の夢とでも言うべき内容。島田荘司「異邦の騎士」と並ぶ80年代の名作。併せて読みたい。

とにかく、まだ読んでない人には「読め!」と言いたい。てか、これはぜひ映画で見たい。自分の中で映像ができている。
もしかすると、ロシア中国北朝鮮は政権与党がつくりだした虚構の脅威なのかも…、ってそんなことはないか。

2023年4月2日日曜日

岡嶋二人「チョコレートゲーム」(1985)

岡嶋二人「チョコレートゲーム」(1985)を1988年講談社文庫版(1996年19刷)で読む。

岡嶋二人は井上泉と徳山諄一の2人によるコンビペンネーム。推理小説作家として有名なのだが自分は初めて読む。
今も版を重ね新装版が発売中。1982年に長編作デビュー。1989年にコンビ解消。2021年11月に徳山氏が死去。
初めて読むのがこれでいいのかわからないのだが、この「チョコレートゲーム」は第39回日本推理作家協会賞長編賞受賞作(1985)だという。

作家の近内は在宅で仕事をしてるのだが、中三の息子省吾は妻に任せきりでほとんど会話がない。ここ二週間学校に行ってないらしい。どこかへ出かけたり部屋に籠ったり。話をしようとしても「うるせえ」と反抗的。部屋にはなぜか中学生の小遣いでは買えそうもないパソコン。妻によれば財布からお金を抜き取ってるらしい。そして省吾のカラダが痣だらけなことも発見。

そして省吾の通う名門秋川学園大付属中学3年A組の生徒貫井が全身打撲傷だらけの死体となって発見という新聞記事を見つける。
学校へ行き担任に話を聴くと、死んだ生徒は優秀。だが、最近になって教室が荒れはじめ、欠席や遅刻をする生徒が増え始めてる。
近内は数人の生徒に話を聴こうとするのだが警戒され口をつぐむ。省吾と仲の良かった生徒も反抗的で話にならない。

そして学校で親と教師が話し合いのその時、他の生徒浅沼も教室で死体となって発見。省吾が持っていたラジカセを使った犯行トリック?

息子が疑われてると考えた近内は省吾が仲良くしていたという坂部逸子(母子家庭)に必死で尋ねる。貫井が殺された日のアリバイを証言してほしい。その日に省吾の居場所を探して坂部家に電話したとき、電話口で省吾の声が聴こえたような気がしたのだから。
近内には省吾はその日坂部家にいたと証言したのだが、後に撤回。近内は気位の高い逸子の母が言わせたんだと確信。

省吾は給水塔から飛び降り自殺。さらに、貫井が脅し取られていた200万円の大金の半分が省吾のポケットから見つかった。しかも省吾は友人にアリバイ偽証も頼んでいた。もう警察に犯人と断定されている…。

父は息子の冤罪無実と真相を知るべく孤独な聴きこみ捜査。先生や生徒、保護者達からも迷惑がられ怒鳴られ、そしてたどり着いた「中学生がそんなバカな?!」という真相。
「チョコレートゲーム」とは何か?「ジャックのせい」とは一体どんな意味が?

わりとトリックがシンプル。今の若者はもうカセットテープというものに馴染みがないためにこのトリックはピンとこないかもしれない。
当時はケータイもない。家の黒電話で相手を呼び出すスタイルもすでに遠い昔。
だが、ストーリーはわりとしっかり納得がいく出来になってた。それほど古さを感じなかった。
あと、この文庫版の表紙は若干ネタバレになっている。