2024年11月20日水曜日

高原英理「不機嫌な姫とブルックナー団」(2016)

高原英理「不機嫌な姫とブルックナー団」を読む。この本は2016年に講談社より刊行。ブルックナー生誕200年の今年に初文庫化。

タイトルからどんな話なのかまるで想像できないが、中高年男性クラオタに多いブルオタをテーマにした小説か?

ヒロインゆたき32歳は苦心して手に入れたチケットでブルックナーのコンサート。なんと女性なのにブルオタ(本人は否定)。
隣の席のブルオタ挙動不審男から好奇の対象。視線を合わせてこないのに話しかけてくる。「女なのにブルックナー聴くなんてめずらしい」という雰囲気。

以後、マックでブルックナー団(オタクグループ)とよく見かけるブルックナー談義w
この本に書かれている現在の日本でのブルックナーへの評価がすごく思い当たる。

自分もCD時代以降のマーラー・ブルックナー世代。すでに多くの録音がありコンサートのレパートリーになってる状態で、「ブルックナーとはどんなもんか」と聴き始めたクチ。

18歳ごろから今に至るまで、やっぱりブルックナーは特殊なジャンル。正直今も「……。」となる。あまり音楽の楽しさ面白さを感じない。世界の名だたる巨匠名匠スター指揮者が取り上げるので仕方なく聴いていた感じ。
いや、ぜんぜん聴いてない。1番から9番、ミサ曲、テデウム、いくつかの断片的なやつはたいてい聴いて2巡目3巡目といった感じ。0番はまだ一度も聴いたことない。

「ブルックナーマニア度認定テスト」に笑った。自分はひとつも当てはまらなかった。
日本でクラシックコンサートに行く人は上流階級というわけでもないが、確実にある程度以上の教養がある人。(サッカー野球観戦と同じぐらいの費用がかかる。海外からやってくる一流オケは1万円以上払える客。)

この本に登場するヒロインは英米文学専攻の非正規図書館員。ヒロインはピアノが弾けるが、ブルックナー団は普通の労働者階級。音楽教育を受けたこともないし楽譜も読めない。だが、CDで聴ける様々なジャンルの音楽からなぜかブルックナーを選んでそればかり聴いてる人々。

そんなブルオタたちのことを想いながら読み進める。途中から「格好悪い大作曲家」ブルックナーのエピソードを小説形式で読む。これはアンリ・ルソーという生前は認められなかった画家を描いた原田マハ「楽園のカンバス」を想い出す。

いや知らないことばかり。田舎者おじさんで女学生から下品だと嫌われ、セクハラ告発されるとか悲しいw 憧れのワーグナーと対面するシーンも悲哀を感じた。ブルオタの敵はハンスリック団?!

ワーグナーに褒めてもらえた交響曲第3番のウィーン初演が読んでいて悲しい。当時のウィーンではブラームスが尊敬され、ハンスリックという悪辣評論家がいた。ウィーン楽壇の人々がブルックナーをバカにしてる感じが酷い。ウィーン・フィル楽団員のプライドの高さとテキトーやっつけ仕事演奏会は悲劇のクライマックス。ブルックナーの長大で意味不明な音楽は演奏拒否にあう。焦燥と困惑。哀れで読んでられない。

しかし、ダサくて気が弱いブルックナーを慕う弟子たちは偉い。マーラーはブルックナーを尊敬し演奏会でも指揮。自分のようにあまり面白みを感じない人がいる一方で、熱烈なファンを獲得。
ブルックナーが酷評されていた時代から楽曲の価値を見抜いていた人がいるから今の評価がある。

いや、この本はとても面白かった。ブルックナーという長年避けていた作曲家が身近に感じられた。
今年はブルックナー生誕200年。じつは今年は人生で一番ブルックナーを聴いていた。歴史本やSFを読むとき、うっすら流しておいた。嫌いだった第5番ですら「あ、聴ける」って感じ始めた。

2024年11月19日火曜日

竹宮ゆゆこ「心が折れた夜のプレイリスト」(2021)

竹宮ゆゆこ「心が折れた夜のプレイリスト」(2021 新潮文庫nex)を読む。これもBOで110円購入本。

自分がこの作家の本を読むのは「知らない映画のサントラを聴く」に次いでこれで2冊目。すでに新潮文庫nexから5冊刊行されているらしい。

結論から言って、今回読んだ本は自分にはほとんど合ってなかった。
クドカン脚本のような、カオスで勢いのみの面白会話。変わり者大学生とイケメンなのに変態センパイ(同じ大学かも不明)の会話が延々と続く。とくにストーリーがあったのか思い出せない。

あと、ラーオタカップル。これは想像しただけで微笑ましい可愛らしさ。だが、これってSFなの?

「心が折れた夜のプレイリスト」というタイトルと内容はほとんど関係なかった。
なんか、「四畳半神話大系」のようでもあった。読んだことないけど。ひたすら主人公・萬代の独白語り。大学生たちのバカ会話という点で伊坂幸太郎「砂漠」も思い出す。

2024年11月18日月曜日

チェイサーゲームW2 美しき天女たち(2024)

「チェイサーゲームW2 美しき天女たち」全8話を完走。

わりと短期間に準備された続編という感じ。今回は樹(菅井友香)の初恋の韓国女が冒頭から登場し押しの強さを発揮。樹を困惑させ、冬雨(中村ゆりか)を嫉妬と憎悪の三角関係へ…、という展開を期待した。
だが、早々にこの三角関係問題は収束。え、それだけで全編引っ張れないのか。
冬雨と夫と姑と娘の問題もそれほど重たく嫌な展開を見せず。幼稚園ママたちがLGBTにまったく理解がないという展開は嫌かもしれない。
まあこのドラマを毎週楽しみにして見ていた層は樹と冬雨が甘々べったり幸せそうにしていさえすれば萌えるという人々。
BLは女性しか見ないけど、百合ドラマはその女優が好きなら男性視聴者も着いてくるはず。自分は菅井友香と中村ゆりかが見たくてチェック。菅井はあまり変わらないが、中村ゆりかはもう完全に大人の女に変貌してて寂しい。
正直、今回のドラマはそれほど集中して見てない。ご飯を食べながら見たりしたので。
今はどこにいるんだ?と時系列と現在地を見失った。
最大のツッコミどころは第2話の冬雨がエレベーターに閉じ込められる回。樹が大奮闘。いや、そんなことある?展開がマンガぽかった。

もう前シリーズの設定とか忘れてた。黒谷友香がもう出オチみたいになっていた。ほぼ吉田鋼太郎のようなキャラだった。
菅井と中村はこのドラマのスマッシュヒットによって東アジア圏でさらに人気がヒートアップ。この好機を逃すな。ビッグウェーブに乗れ。

2024年11月17日日曜日

樋口有介「刺青白書」(2000)

樋口有介「刺青白書」を読む。2000年に講談社から刊行後、2007年に創元推理文庫から初文庫化。これも柚木草平シリーズ番外編という一冊らしい。

向島で生まれ育ち、日本史を専攻する地味なメガネ女子大生・三浦鈴女(21)が今作のヒロイン。卒論に悩み就職も決まらず焦る毎日。

隅田川リバーサイドの高層マンションで殺害された人気CMタレントアイドル・神崎あやが中学時代の目立たなかった同級生だったことを知り衝撃。後ろ手をガムテープで拘束され全裸で刺殺。全身に切り傷という凶悪事件に世間は騒然。

あやには、刺青を消した痕。
さらに、中学時代の同級生・牧歩(テレビ局の女子アナに内定)が隅田川で水死体として発見される。10日間のインターバルで中学時代の同級生が連続で事件に巻き込まれるとか異常じゃないのか?彼女にもあやと同じ場所に、同じ刺青があった…。これは一体?!

鈴女は中学時代の同級生で、かつて野球部エースのモテ男だった左近と一緒に、かつての同級生に聞き込みに。

父が中小規模出版社編集部にいる。芸能ゴシップを扱っている。柚木草平とかいう40がらみの男と話してる。ああ、今回はそういう登場の仕方なのか。

柚木草平(38)もジャーナリストとして独自の聞き込み捜査。被害者がかつて中学時代同級生で同じクラスの女子生徒がイジメ自殺していた過去を知る。さらに、自殺少女の父親で教育評論家の米山が中学生娘を性的虐待していたことも掴む。

今回の柚木は歌舞伎町性風俗店にも指名料払って突入聞き込み。

隅田川周辺にずっと張り付いたままの人々の人間ドラマと記者探偵ハードボイルド。中学生だったヒロインたちの21歳青春小説。21歳でこの人生はキツすぎる。樋口せんせいならではのイジメ問題への怒りと諦め。
たぶん西村京太郎なら隅田川殺人事件というタイトルをつけるに違いない。

ちなみに、この本は行きつけのBOで110円で購入したのだが…、もしかしていわゆるサイン本?!
本当に樋口有介の筆跡かどうかググって確認しようとしたのだが、どうも樋口先生のサインはいろいろな筆跡があるらしく判別は不能。「介」の筆記が違う気もする。
自分、有名人のサインというものは本人の目の前で書いてもらったもの以外は有難いと思わない。この本はもしかすると本人が手に触れたものかもしれないという、ただそれだけの想像だけでよい。もしかすると誰か(桂ちゃん?)がサイン会で購入したものかもしれない。そしてその誰かの遺品かもしれない。

2024年11月16日土曜日

乃木坂46「ガールズルール」Type-A盤を手に入れた

乃木坂46「ガールズルール」(2015年7月3日リリース)Type-A盤を手に入れた。ハードオフ青ジャンク箱から救出。まだ見たことのない映像目当てに連れ帰った。55円。ここに手に入れたことを忘れないために忘備録として記録する。

このジャケットの人物が自分には桜井に見えていた。でもよくよく考えると、白石麻衣初センター楽曲なんだから白石なんだろう。

「ガールズルール」「世界で一番 孤独なLover」「コウモリよ」という3曲の音源が手に入ったが、とくに聴いてない。
「ガールズルール」MVはあまり好きでなくそれほど見てもいない。「世界で一番 孤独なLover」MVはかっこいい映像の乃木坂。この映像に残された渋谷はいつか懐かしい渋谷になるかもしれない。
で、肝心の特典映像「16人のプリンシパル@PARCO劇場 -ダイジェスト-」だが、正直この企画が嫌いなのであまり真剣に観なかった。
齋藤飛鳥が目当てなのに、飛鳥がほとんど映ってない。
これは要らなかったかもしれない。そもそもプリンシパルはメンバーに多大な負担とストレスを与えた黒歴史。こんな企画が面白くなるわけがなかった。

西野七瀬が夏とはいえ肌の露出が多くないですか?と思った。

2024年11月15日金曜日

レイモンド・チャンドラー「さらば愛しき女よ」(1940)

レイモンド・チャンドラー「さらば愛しき女よ」(1940)を清水俊二訳のハヤカワ・ミステリ文庫(1994年43刷)で読む。処分するというので無償でいただいてきた30年前の文庫本。
FAREWELL, MY LOVELY by Raymond Chandler 1940
銀行強盗で8年刑務所に入っていていた大男のマロイは出所して昔の女ヴェルマに会いにナイトクラブを訪れる。すでに店は黒人たちの店になっていて、カッとなって黒人を殺してしまう。その場にたまたまフィリップ・マーロウが居合わせる。

粗暴な警察と無能な警官。マーロウはマロイを探す手がかりを求めて、黒人殺しの現場となった店の前のオーナー妻を訪ねる。荒んでアル中。

どういう繋がりかわからないまま、マーロウはマリオという男からよく目的のわからない宝石取引に立ち会わされる。金のために。
しかし、いきなり後方から殴りつけられ気を失っている間にマリオは殺されていた。律儀なマーロウは依頼人が殺されたことを恥じる。
この事件現場でアン・リアードンという女と出会う。

ここから先は大金持ち夫人やら警察署長やら精神科医やらと出向いて話をする。これがもう、昔のアメリカ人ってみんな短気で粗暴で嫌だよね……っていうw マーロウがかなり上品で真面目に感じられる。どうしてわずかな金のために、そんなに猪突猛進くらいついていく?マーロウはボコボコにされたり薬物注射されたり脅迫されたり。

自分、チャンドラーのフィリップ・マーロウは「長いお別れ」に次いでこの「さらば愛しき女よ」で2冊目だったのだが、どう読めば楽しめるのかがよくわからず困惑もした。自分にはチャンドラーはあまり合ってないなと感じた。

最後まで読むと、〇〇が実は〇〇で…というような驚きは用意されているのだが、それでも常日頃、刺激的な探偵推理ミステリーを読んでいる現代日本人読者を驚かせるものでもない。たぶんミステリー愛好家はこのハードボイルド小説を読んではいけないと思う。30年代40年代のアメリカ人はこれで十分面白い娯楽小説だったのかもしれないが。

タイトルがぜんぜん合ってないし過大評価だと思いながら読んでいた。最後になって「ああ、そういうことか」と。

昔のアメリカ人は警察官もそれなりに上流な人もみんな言葉が汚く粗暴。とにかく喧嘩早い。
ということは、戦後のGHQアメリカ人将校たちと渡り合わないといけなかった日本エリートは大変だったろうと思う。
自治体の首長も警察署長も悪党というアメリカを、日本人も笑っていられなくなってきた。

2024年11月14日木曜日

乃木坂46「おいでシャンプー」Type-A盤を手に入れた

乃木坂46「おいでシャンプー」Type-A盤(2012年5月2日リリース)をハードオフ青ジャンク箱から救出。
まだ見たことのない個人PVが目当てで連れ帰る。55円。
手に入れたことを忘れないためにここに忘備録とする。

A盤ジャケットは桜井玲香・生駒里奈・中田花奈の3人。なんと裏面は岩瀬佑美子・斉藤優里・市來玲奈の3人だ。たぶん今の5期オタはこの3人を知らないんじゃないか。いや自分も岩瀬と市來のことはほとんど何も知らないけど。

この盤を手に入れたことで「おいでシャンプー」「心の薬」「偶然を言い訳にして」の音源が手に入ったわけだが、もうCDをパソコンに取り込むことすらしなくなった。もう楽曲にはあまり関心ない。
未使用の握手券がそのまま入っていた。握手目当てでCD買ってた層ばかりでもなかったのか。
今回の目当ては齋藤飛鳥(当時13歳)の個人PV。たぶんまだ見たことないやつ。
この当時の飛鳥はまだ蝶になる前の飛鳥。正直まだぜんぜん子ども。

かわいいカットは慎重に選ばないと出会えない。川後に「ロリ手羽先」とニックネームをつけられるのも納得のガリガリ体型。髪をかき上げうなじを見せるカットは背骨の浮き出方が衝撃。
「二度目のデート」というテーマらしいのだが、13歳でデートとかおかしい。この二人のカットは補導どころか職質案件。中学生が男女で映画見るなら制服で出かけろ。
でもこの飛鳥には男子は全員ひれ伏す以外の選択肢はないか。異常なかわいさ。
それでもまだ人気が出る前の飛鳥。非合法な危険な香り。

ついでに西野七瀬(当時17歳)個人PVも見るのだが、こちらはさらにいけない。西野がぜんぜんかわいくないw これでは後列に甘んじるわけだ。
それに、家庭教師のためとはいえ自室に同級生男子を入れるな。こんなのオタ男子は見ていて何も楽しくないし面白くもない。運営はまだまだ試行錯誤の時期で、奇をてらった映像ばかり作ってる。
しかしこういう演技スキルの積み重ねが2013年秋の「49」出演につながったのかもしれない。

2024年11月13日水曜日

泡坂妻夫「写楽百面相」(1993)

泡坂妻夫「写楽百面相」(1993)を平成8年新潮文庫(初版)で読む。これ、8月にBO110円購入。

泡坂妻夫(1933-2009)は「しあわせの書」(未読)の他はあまり読まれていないらしく(?)、BO100円棚であまり見かけない。
この本は存在を知らず、110円で買えてラッキーと連れ帰ったのだが、今年の9月に創元推理文庫から復刊したらしい。

松平越中守定信の質素倹約令によって不景気の寛政江戸。川柳句集などの貸本出版業若旦那・二三は、馴染みの卯兵衛に「年が明けたら世帯を持とう」と持ち掛けるのだが、卯兵衛は「旦那がいるから」と断られる。ふと屏風に貼ってある役者絵が強い印象に残る。(二三が男で卯兵衛が女の名前で混乱する。)

この卯兵衛は後に行方不明。方々に旦那は誰か?と引っ越し先を聞いて回るのだがわからない。その後、土座衛門となって二三本人が発見。

寛政年間の江戸文化人の関心事は芝居。芝居小屋も寛政の改革のせいで不興。質素倹約に反した山東京伝や役者には手鎖などの刑罰。蔦重(蔦屋重三郎)も資産の半分を没収されるなど圧迫。

そういえば来年のNHK大河ドラマは蔦屋重三郎。だから今年の秋復刊されたのか。
この本を読む限り、蔦重の周辺には十返舎一九、葛飾北斎といった江戸スーパースターたちもいたらしい。もしかするとドラマには松平定信、蜂須賀重喜といった人々も登場するのかも。

この蔦重が今で言うメディアミックスやり手出版業者。角川が映画と連動して本を売ったように、役者絵の大首絵を同時に出してたくさん売ろうという業者。今で言ったら幻冬舎とかか。
二三は葬式や蔦重サロンに顔を出して世間話。やがて、謎の絵師・東洲斎写楽の正体に気づいていく。さらに思わぬ芝居と公儀と公家方スキャンダルについて書かれた発禁本へと発展。寛政江戸ハードボイルド。

三田尻で急死したという尾上菊五郎(二代目)と公家方のスキャンダルって史実なの?!と思って調べたのだが、これは泡坂の創作?
この本をスラスラ読める人はよほど時代小説や江戸の文化と風俗に詳しい人。自分もわからない単語や人物が多数登場。
光格天皇と幕府の尊号問題とか、延命院スキャンダルとか、東京中を散歩してた自分ですら知らなかった。
大人の読み物を読んでる気分だった。自分としては面白かった。

2024年11月12日火曜日

波瑠「小さな故意の物語」(2012)

2012年夏に放送されていた「東野圭吾ミステリーズ」がこの秋地上波再放送されたので録画しておいた未視聴回をチェック。今回は三浦春馬くん主演の第8話「小さな故意の物語」
原作は「犯人のいない殺人の夜」に収録。脚本は川崎いづみ。演出は並木道子。

高校3年生の夏、仲良し三人組の1人が校舎屋上から転落死。「自殺なんて考えられない…」という主人公三浦春馬くんが真相を探す…という青春ミステリー。
登場人物たちが全員制服姿の高校生だとたちまち赤川次郎の雰囲気。

不審なロッカー荒らし、白昼堂々コンデジで盗撮する先生、なにやらヒステリックな美術部の女子生徒…、怪しい人々でミスリード。
だが、その真相は……。正直これは人に語りたくなるほどの内容はなかった。事故は本当に不幸な偶発的出来事。

このドラマをわざわざチェックした理由は波瑠さん(当時21歳)の夏服白ワイシャツ姿が見れるからw 
今回のドラマは話が暗い。表情も常に暗い。それでいてラストでは泣きながらの真相独白でドラマとして説得力を持たせないといけない。それは俳優としての技量が試される。難しくてあまり得をしない役どころ。あまり魅力を感じない。ストーリーにも感じない。
調べてみたら波瑠さんは現在33歳になっているのか。今もドラマに活躍中。
今回見てみて驚いたのが、美術部女子生徒役で三吉彩花(当時16歳)が出ていたこと。
見た瞬間「そうかな」と思ったが、なかなかハッキリと顔がわからなかった。だが、終盤はしっかり目立ってた。事件のキーパーソン。

たぶん当時は「さくら学院」を卒業した直後。正直このドラマではそれほどかわいく見えなかった。この女優は今年もネトフリドラマなどで活躍。自分の見たところまだはまり役というものがない。個人的に「ダンスウィズミー」と「犬鳴村」がキャリアの頂点な気がする。

三浦春馬は当時22歳。このころは後の悲劇をまったく予想することなんてできなかった。今も「なんでなんだ?」と思うし納得なんてできていない。そっちの方がミステリー。

2024年11月11日月曜日

早坂吝「探偵AIのリアル・ディープラーニング」(2018)

早坂吝「探偵AIのリアル・ディープラーニング」(2018 新潮文庫nex)を読む。
これ、いつものようにBOをうろついてて110円で見つけてキレイな個体だったので購入。

AI研究者だった大学教授の父が自宅で不審死して孤独になってしまった高校生主人公が、父の遺したAI探偵・相以とともに真犯人を捜す…という、全5本の連作短編からなる一冊。

警視庁捜査一課の女刑事、顔に傷のある公安の刑事、そして主人公のスマホ内にいる相以が、AIによる統治を実現しようとテロ活動を行う謎のグループ「オクタコア」の正体へ迫る。

その一方、相以の双子で「犯人」側として開発されたAI「以相」はオクタコア側に盗まれるのだが、オクタコア側の真のボスへと接近していく。

5本どれもアイデアがユニークでちょうど良い。そして焼身自殺したという主人公母の事件へと迫る。

AI相以が、ディープラーニングが不得意な「フレーム問題」、「シンボルグラウンディング問題」、「不気味の谷」といったつまづきを犯す。
そのたびに主人公や女刑事が修正。あくまでAIの出した結論を正しく使うのは人間側ということだな。

正直、予想外にとても面白かった。近未来ディープラーニングAI探偵ミステリー小説。
終盤の「チューリングテスト」のくだりは読んでて混乱したけど。

2024年11月10日日曜日

H.G.ウェルズ「タイムマシン」(1895)

H.G.ウェルズ「タイムマシン」を昭和41年の石川年訳角川文庫(平成14年)で読む。
これも無償で頂いて来た古い文庫本。

日本人の多くは「ドラえもん」「時をかける少女」でタイムトラベルを学んだ。誰もがタイムマシンという言葉は知っていても、このH.G.ウェルズの原作を読んだことがある人は少ないのではないか。

なにせ1894年にナショナル・オブザーバー紙に連載されたものが最初という古い小説。
1894年って日本で言ったら明治27年。甲午農民戦争から日清戦争が始まった年。正岡子規も夏目漱石も17歳。

この「タイムマシン」という小説が想像してたのと全然違ってたw
真鍮と黒檀と象牙と石英でできたずんぐりと不格好な形をしたレバーのついた形状らしいのだが、動力源や機構、論理的裏付けについては一切触れられていない。

主人公の科学者は「タイムトラベラー」と呼ばれている。名前は書かれていない。
こいつがいきなり80万2701年後の未来へ移動してしまうw それは危険すぎる。

どうやらそこにテムズ川がある。すでに英語は通じない。そこにいる未来人は5歳児のような知能の小人。体格も体力も退化。
白い衣服を着て果物のようなものを食べている。働いている様子もない。生産的なこともしていない。ただ遊んでいる。文明も退化。

ああ、この小説はディストピア未来小説だったのか。
人類は病気や社会問題を克服し平和な社会を実現したら、そこから退化していった。もう何も考える必要もなかった。
有産階級は地上人エロイへ、労働階級はおぞましい姿の地底人モーロックへと別れていた。モーロックはエロイを捕食してる?!

主人公は溺れかけてたウィーナという少女を助ける。この子と一緒に行動するのだが意思疎通がギリギリ。元の世界に帰るため、失われたタイムマシンを探す。
タイムマシンを作ってしまう人がマッチをすって火をつけてモーロックと戦ったりするw 

命からがら現代の部屋へと戻ってくる。記者と友人たちに体験してきたことを話して聴かせるのだが…、ちょっと待て。それってタイムトラベルしてきた証拠なにもないよね?異世界とかかもしれないし、夢を見ていたのかもしれない。しかし、手元には未来から持ってきた花。

主人公はさらに3000万年先の世界も見てきてた。アーサー・C・クラーク先生もそんな先のことは考えていない。もはや人類は存在してないだろう。地球の環境も今とはまるで違うだろう。

だがしかし、正直言って面白かった。まったく想像を超えていた。ちょっとは知ってる話なのかな?と思ってたけど、まるで知らない初めて読む話だった。
終わり方も味わいと余韻がある。これは誰でも一度は読むべき。

そして以下短編

盗まれた細菌
コレラ試験管持ち逃げ騒動。19世紀から細菌テロという概念があったことが驚き。

深海潜航
水圧耐性試験もなく、そんな簡単な潜水艇(鉄球)で深海に挑むとはなんと危険な…。19世紀人ならではの楽観的なチャレンジ。そして海底人との遭遇。

新神経促進剤
数百倍精力的に動ける薬、それは他人よりも1000倍速く動ける薬だった!そんな薬を簡単に他人に与えるな。オリンピックで西洋人が簡単にドーピングに手を出すのはこういうことか。

みにくい原始人
19世紀人の想像する人類とネアンデルタール人の戦い。

奇跡を起こせた男−散文による四行詩−
何でも想いの通りになる超能力者?!え、夢オチなのこれ。

くぐり戸
夢見がち空想青年が人世でたびたび目撃する「くぐり戸」についての幻想短編。

どの短編も味わいがあって面白い。

2024年11月9日土曜日

吉村昭「虹の翼」(1983)

吉村昭「虹の翼」を文春文庫新装版(2012)で読む。500Pを越える長編。
1978年に京都新聞に「茜色の雲」として連載後、1980年に「虹の翼」と改題され単行本化。
6年前に108円で購入しておいた積読本で読む。

二宮忠八(1866-1936)の生涯を描いた伝記だが、自分はこの人を江戸時代の人だと勘違いしていた。それは新田次郎の短編小説「鳥人伝」で読んだ浮田幸吉(1757-1847)と混同していたかららしい。

二宮忠八は慶応二年、伊予国宇和郡八幡浜浦矢野町に生れる。
(ちなみに二宮忠八はH.G.ウェルズと同じ年生まれの同学年)
裕福な商人だったのだが二人の不良兄のせいで家は没落し一家離散。忠八は呉服商で子守などしながら凧をつくってわずかな稼ぎ。しかし勉強ができて聡明。やがて当時最先端産業だった写真館で働くようになる。惜しまれつつ写真館を辞め今度は伯父の薬種商の仕事を手伝う。のれん分けさせてもらえるかも。
だが、八幡浜浦に戻って今度は測量士を手伝う。また凧づくり。忠八のつくる凧は八幡浜浦の名物。忠八は変わり者呼ばわりされていることを知っている。もう凧づくりは止めよう。

徴兵適齢に達していた忠八は適性検査を経て軍隊へ。薬種商で働いていた経験を買われて薬剤部へ。
樅ノ木峠でカラスが滑空する様子を見てひらめいた忠八は以後「飛行器」を夢見る。薬剤師の資格を目指しつつ、「玉虫」の形態をヒントに飛行器の研究を続ける。固定翼にゴム管動力のプロペラ模型飛行器を試作。新婚だった夫人にも秘密を明かす。

日清戦争中、死を意識し始める。死んだらこの研究は埋もれてしまう。勇気を奮って上司に上申書。今はまだ動力の問題があるけど、こいつは必ず飛ぶ!飛行器があれば戦況に有利!

だが軍務多忙を理由に長岡外史大佐と大島義昌旅団長から却下。やっぱり誰も空を飛ぶなんて信じないし。
平壌攻防戦時に赤痢で死にかけるも奇跡的に回復。内地へ戻り療養。

病から回復し精力的に医薬品を配分する仕事に精を出す一方、飛行器開発への情熱は冷めない。方々へ駆け合うのだが、誰も空飛ぶ機械に関心を示さない。(そのころオットー・リリエンタールがグライダーで有人滑空に成功していた)
野戦病院務めでは戦功もなく出世も見込めない忠八は軍に絶望。

大日本製薬株式会社に入社。有能社員でどんどん昇給。どんどん出世。大阪と東京の薬業界で販路を広げるべく奔走し多忙。
会社にとって必要不可欠な人物。重役になっていく。
その間に欧米ではツェペリン飛行船が事故を起こしたりして気球はダメだなという雰囲気。

身を立ててお金を貯めて飛行器研究をと焦る日々。だがついにその日がやってくる。ライト兄弟の飛行機を新聞で知る。忠八は悔し涙と悲嘆。
以後、日本も飛行機の重要性に気づく。航空機の試験飛行のニュース記事と記録の記述が続く。
忠八は製薬の仕事に打ち込む。取締役として監督不行き届きの不正経理問題発覚で引責辞任。

同じ愛媛県出身の白川義則中将の知己を得る。忠八は軍隊時代に飛行器研究の上申をしたが却下されたことを告白。
実は忠八の研究は軍で知られていた。以後、急速に日本人の間で二宮忠八という研究者がいたことが知られて行く。あの恨んでも恨み切れない長岡外史から長い長い謝罪と贖罪の手紙も来た。戦争中の軍務で忙しかった長岡は上申書を棄てたことすら覚えていなかったという。

もしも長岡に時代の先を見る目があれば、最初の飛行機の発明者の栄誉は日本人になっていた可能性はかなり高かった。
いちばん寂しく虚しい苦悩をしたのは忠八だが、薬業界でそれなりに成功者だった。自分は二宮忠八をてっきりプロ航空機研究者だと思ってたので薬業が本業だったとは意外だった。

もし飛行機を発明したのが忠八だったら、その後の膨大な飛行機事故犠牲者に心を痛めていたに違いない。忠八は飛行機死亡事故の記録もずっと記していた。

この本も吉村昭の筆致は淡々と飛行機誕生前夜と試験飛行と忠八の生涯年表を記録している。