2025年6月23日月曜日

周木律「双孔堂の殺人」(2013)

周木律「双孔堂の殺人」(2013)を読む。講談社文庫版(2016)で読む。
この作家の本を読むのは初めて。今作から読んでいいのかわからなかったが、BOで110円で売られていたので手に取った。

警察庁のエリート警視が、伝説の数学者の邸宅となっている元美術館へと向かってる。その邸宅は位相幾何学におけるダブルトーラスな構造になっている。

年の離れた数学科院生妹百合子から位相幾何学(トポロジー)について電話でレクチャー。向かう先の双孔堂にいるはずの放浪の数学者・十和田只人(前作の「眼球堂の殺人」で事件を解いたことで有名人となっている)からサインをもらってこいと頼まれている。
だが、現場に行ってみたらパトカー。え、伝説の数学者降脇と来客の鰐山が密室で殺されて、十和田が容疑者として逮捕されている?!

この本の登場人物が刑事以外みんな数学者なので、数学の最前線にいるような抽象的な会話が続く。たぶんそこは誰も理解できない。話そこそこに読みとばしてかまわないと思う。

登場する大学の数学研究者に木村五郎と鰐山豊という名前が登場する。それって、志村谷山予想の志村五郎と谷山豊がモデルであろうことは容易に想像。本作では五郎のほうが若くして死ぬ不幸。

本庁からふらっと現場に介入してきた宮司に対する所轄の女刑事の態度が異常。2階級上の本庁エリートに対するそれじゃない。顔を見ればヒステリックな抗議とクレーム。
なぜか宮司警視のほうが平身低頭。十和田の早急な書類送検を前に「たのむ1時間くれ」
女刑事は宮司に警視としての仕事を捨てる賭けを要求。この女、事件後に自決か懲戒処分していい。

数学の世界における研究者の光と影の悲劇。そして特殊な形状をした建築を使ったトリック。この本は読んでる途中でも面白かった。かなり満足できたので「眼球堂の殺人」も探して読もうと思う。

大学教養課程以上で数学を取ってない読者はイプシロンとか言われてもちんぷんかんぷんだったと思う。実際、Amazonレビューでは酷評だらけ。建物の構造について「後出し」というなら、綾辻行人の著作のほとんどは「どうせ抜け穴があるんでしょ?」で一蹴できるはず。エラリーやヴァンダインはもっとペダンチック。

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