内海隆一郎「鮭を見に」(1993 文芸春秋)という本をもらってきたので読む。処分されそうな本は読んであげないと気が済まない。
内海隆一郎(1937-2015)という作家の本を読むのは初めて。じつは名前も知らなかった。1991年から1993年にかけて文芸各誌に掲載された4作からなる一冊。
鮭を見に(別冊文藝春秋 1991年194号)
定年した62歳男性が鮭が遡上する川を見たいと北斗星で北海道に行く途中、車内で無賃乗車女子児童と出会い、おばさんのいるという札幌へ行って…という文芸短編。
とても味わい深い。自分の脳内では映画として映像照射されていた。
海向こうの故郷(オール読物 1992年5月号)
これも60男が父の葬儀で芳名帳に懐かしい名前を見つけ、戦争中の東北の炭坑での家族の生活、元マタギの坑夫、朝鮮人坑夫の安さん、といった記憶が蘇る…という短編。
これが異常に味わい深い。ビターすぎるラスト。これは中学高校生に読ませたい文芸作品。
蜜柑畑の下(オール読物 1993年1月号)
瀬戸内の島で、島民に日給を払って蜜柑畑を掘り返す謎の老人と、島の駐在警察官による疑惑と騒動。
これも自分の脳内では面白い映画として再生。味わいがある短編文芸。
窓辺のトロフィー(別冊文藝春秋 1992年201号)
翻訳業の大学講師先生が酒場で元ボクシング世界チャンピオンと飲み友達になる話。これも自分の脳内では一篇の映画。味わい深い余韻。
シン・ウルトラマンでメフィラス山本が「河岸を変えよう」と言ってたシーンがあったのだが、あれって本当に酒場で使われる言葉だったのか!w
4本すべて心優しい眼差しを感じた。この作家の肖像写真を見ると、納得の風貌。
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