昨年2月に「身代わり忠臣蔵」という時代劇映画が公開されたので見ておく。原作は土橋章宏の小説(2018 幻冬舎)。脚本も土橋章宏が担当。監督は河合勇人。東映京都撮影所で製作。配給は東映。
この映画はなんとムロツヨシ主演。吉良上野介とその弟孝証(たかあき、乞食坊主)の一人二役。孝証には兄に金をせびることしかできない。兄からも吉良家家臣たちからも蔑まられる。それは酷い。
江戸城松の廊下での刃傷事件は浅野内匠頭が悪いのだが、喧嘩両成敗の原則と、背中に斬られた傷があるということは「逃げたのでは?」「武士としてふさわしくないのでは?」という疑いを柳沢吉保(柄本明)からかけられる。
上野介もかなりの重傷。もしこのまま上野介が死ぬと吉良家はお取り潰しとなる危機。
家老の斎藤(林遣都)は孝証に借金帳消しと1000両で上野介の身代わりになってもらう。
そして大石内蔵助は永山瑛太。この主演キャストの2人の共演はなんと「サマータイムマシンブルース」(2005)以来なので実に19年ぶり。
2005年当時のムロはほぼ無名キャストだったのだが、それが今では主演。すごい出世ぶりだ。
屋敷で暮らしてみると、上野介はかなりの暴君だったことを孝証は知る孝証。やさしい性格の孝証のことを家来のみんなが好きになる。
そして、お互い名乗りをあげずに吉原で出会い、短い間に親友となった孝証と内蔵助の友情。
しかし、赤穂の仇討が不可避と知ると自らの正体を名乗り、柳沢の陰謀を孝証は内蔵助に暴露。赤穂藩の浪士どもを本所の吉良邸におびき寄せて全員討ち取る計画?
もはや全員武士として主君の仇討を遂げて死ぬことが希望。その行いは正義と理解する孝証は、なんとか赤穂藩の再興を期待するのだが柳沢に押しとどめられる。もう赤穂と吉良の人々を守ることはできないのか…。
元禄時代から日本人に愛され、GHQに危険視され、多くのドラマや映画が作られた「忠臣蔵」。それは同時にもっとも胸糞悪い悲劇。
しかし、この映画は「こうだったらみんな幸せだった」という展開と結末を用意した、異世界忠臣蔵。
みんなの気持ちを大切に尊重した結果、じつに爽やかな仇討にストーリーを変えた。年配の人が見たらきっと呆れて口あんぐりかもしれない。時代は変わった。
土橋章宏の脚本が良い。男同士の友情だとか愁嘆場だとか、見ていてくどくなく、むしろテンポが良い。必要のない見たくないシーンはばっさりカット。見る人によっては納得できないストーリーをエンタメ娯楽作へとまとめあげた。
あんまり事前に情報を入れないで見始めたのだが、川口春奈が吉良家屋敷の奉公人女中・桔梗として登場。思わず、川口春奈は帰蝶や!とつっこんだ。健気で賢く殿さまへの忠誠心のある美しいヒロイン的な役どころ。みごとな存在感。
あと、ずっとナレーションが聴いたことのあるような声なのに誰だかわからずモヤモヤしていた。エンドロールを見て、森七菜だとやっと気づいた。
脇役から敵役までみんな見せ所があって個性があって適材適所。映画脚本としてほぼ最良の出来。
そして、この映画を見た一番の理由は加藤小夏さまが出演しているから。芸妓の小夏さまが美しく可愛らしかった。きっとワンシーンのみの出演だと思ってた。少ない出演シーンだったけど、十分見どころがあった。
主題歌は東京スカパラダイスオーケストラ「The Last Ninja」。とてもアガれる曲で、この曲をエンディング曲に選んだセンスもよい。119分という長さもちょうどよい。
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