小林照幸「死の虫 ツツガムシ病との闘い」(2016 中央公論新社)を読む。
日本住血吸虫のつぎはツツガムシ病。自分はこの死に至る恐ろしい感染症の存在をこの本を読むまで知らなかった。
え、ツツガって聖徳太子が送った遣隋使・小野妹子に持たせた国書「日出ずる処の天子、書を日没する処の天子に致す。つつがなきや」の「つつが」なのか。まさに「ツツガムシ」は「恙」だ。
やはり昔からあった病気で、江戸の昔から新潟、秋田、山形で夏になると農民たちがかかって倒れた風土病。
農民は農作業をしなければ生きていけないのに、農作業をしてて虫に噛まれ斃れる。小さな赤いダニに噛まれると猛烈なかゆみの後に水泡ができ黒いかさぶたができ、リンパが腫れ高熱を出して死に至る。貴重な農作業の担い手がひと夏に村から30人も失われたら?それは影響が大きい。
明治以降になって西洋医学を学んだ偉い先生方が懸命に原因を特定しようと奮闘するのだが、なかなか病原菌を特定できない。明治、大正、昭和と多くの死者。各地に石碑、口碑、祠。村人は神頼みしかない。
各大学と研究所が病原菌特定の先陣争い。細菌学の多くの有名な先生方が登場。その原因菌はリケッチアと呼ばれる…。
動物実験で動物たちも犠牲になるのだが、戦前は人体実験も?!さらに研究者たちからも針刺し事故や原因不明の感染で殉職者も出す。
(日本の優秀な理系高校生は医学部を目指す人が多いけど、感染症とか命の危険にさらされるのに、よく親たちは子どもたちをそんな危険な職業につけようと思える。)
ツツガムシの生態も長い長い地道な研究で少しずつ前進。
ツツガムシ幼虫が動物の組織液を必要とする。栄養を吸収し膨れ上がると地面に落ちて地中。何をエサとしてるのか不明だったのだが、蚊やトビムシの卵から液を吸い取ってた。
戦後は米軍も富士山麓での演習でツツガムシ病に罹患者を出していた。致死率の低いツツガムシの存在を台湾でも確認。やはりアジア全般にいる毒虫なのか。野ネズミのいる場所ならどこもツツガムシが存在する可能性がある。
日本住血吸虫のときにミヤイリガイを絶滅させたように、ツツガムシも全滅させれないのか?
テトラサイクリン系抗生剤の投与で治癒が可能になったのだが、風邪、インフルエンザと誤診すると命取り。怖い。あとマダニ、イエダニも全滅させてほしい。
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