2024年11月5日火曜日

メガトン級大失敗の世界史(2019)

「メガトン級大失敗の世界史」トム・フィリップス著、禰冝田亜希訳、河出文庫(2023)というライトな世界史雑学本が出てるので読んでみた。
これは2019年に河出書房新社から「とてつもない失敗の世界史」として刊行後に改題して文庫化されたもの。文庫裏を読むと世界27か国で刊行されたベストセラーだという。

英国人ライターによるユーモアと辛辣な知られざる人類と世界の大失敗史読み物。

ヒトラーやスターリン、毛沢東といった有名どころはあまり扱ってない。ヒトラーは怠惰で意味不明な男だったが、「どうせいつか大失敗する」と考えていたドイツのエリート層こそが大失敗だったぽい。

そもそも人類は他人をマネして集団ヒステリーを起こす性質を最初から持っていた…という失敗。農業を始めたことが貧富の差と戦争を産んだ原因。(インダス文明のハラッパ―遺跡からは戦争の痕跡が一切発見されていないってマジか)

無計画な灌漑によって面積が10分の1以下に減少したアラル海。それでもまだ琵琶湖よりも広いのかよ。

その土地にいない動植物・昆虫を移動させる行為はすべて痛いしっぺ返しをくらってることを指摘。(日本のヒトスジシマカは古タイヤといっしょに北米大陸に上陸してただと?)

「統治に向いていなかった専制君主たち」としてオスマン帝国の皇帝たちの無双な狂いぶりを改めて知る。

ドイツ帝国ヴィルヘルム2世を「自らを外交が得意な交渉の達人と思い込んでいた。実際はかかわりを持つどの国をも侮辱する才能があっただけだった。」という箇所に笑った。
あとの4人はスコットランド王ジェームズ6世(魔女狩りに夢中)、ロシア皇帝ピョートル3世(成人になってもおもちゃの兵隊遊びに夢中)、フランス王シャルル6世(狂王、イングランドにだまされ条約に署名)など。デンマーク王クリスチャン7世(残虐な狂王)のことは知らなかった。

戦争の歴史では日本のキスカ島撤退作戦とその後の米軍とカナダ軍の同士討ちも簡単に記載。
ケネディ大統領のピッグス湾侵攻作戦の大失敗がキューバ危機で慎重な対応を引き出し、人類を核戦争から救った一面も?

スコットランド王国を財政破綻させたダリエン(パナマ)計画は初めて知った。日本でこれを知ってる人は少ないかもしれない。
外交の大失敗として「チンギス・カンに消された大国ホラズム」を取り上げる。

科学の失敗として
「ドイツ人が発見したX線に対抗したフランス人学者によるN線」
「フランシス・ゴルトンの優生学」
「スターリン時代ソ連の農学者トロフィム・ルイセンコ」
「有鉛ガソリンとフロンガスを広めたトマス・ミジリー」
といった日本人がほとんど知らない失敗を紹介。そして
「自動車死亡事故第1号メアリー・ワード(1869)」
「鉄道死亡事故第1号ウィリアム・ハスキソン(1830)」
「飛行機死亡事故第1号トマス・セルフリッジ(1908)」
「宇宙での死亡事故第1号はソ連の宇宙飛行士3人(1971)」
「ロボットに殺された第1号はフォード車ミシガン工場の労働者ロバート・ウィリアムズ(1979)」
「自動運転自動車の死亡事故第1号はテスラ車を運転していたジョシュア・ブラウン(2016)」
いや、こういうの英国人が好きそうな雑学。次はAIによる事故の死者が歴史に名を刻むかもしれない。

ビットコイン採掘のための電力消費、温室効果ガスによる気候変動、ケスラー・シンドローム(宇宙ごみ問題)、抗生物質耐性菌、などなど。人類にはまだまだ大失敗するかもしれない問題が待ち構えている。

0 件のコメント:

コメントを投稿