飛鳥部勝則「殉教カテリナ車輪」(1998)を2001年創元推理文庫で読む。
表紙に第九回鮎川哲也賞受賞作と書いてある。初めて読む著者なのだが、新潟の公務員推理作家らしい。
新潟の田舎町の美術館で事務員として働く井村は、ある日、それほど話もしたことのない老紳士学芸員矢部から、たまたま見ていた画集の件で話しかけられる。とっつきにくい人だと思ってたら、話が面白い。
この矢部という学芸員が、かつてたまたま見た肖像画の婦人が妻にそっくりということで興味を持ち、東条寺桂という画家に興味を持ち調べてみた。関係者先を訪問したり、絵画の購入者を訪問したりして聴きこみ調査。
1976年からわずか5年の創作期間に500点以上の作品を書き上げたのだが、1981年に自宅で自殺していた。
桂の絵画に込められたメッセージを図像学(イコノグラフィー)を使って読み解こうとしてると、1976年クリスマスイブに大学教授(桂の義理の父)の家の2つの部屋で、同時に(短い間で連続に)密室殺人事件が発生していた…。
西洋絵画を読み解くための図像学で殺人事件の謎に挑む本格ミステリーという発想が新しい。
ダン・ブラウンの「ダヴィンチ・コード」以前にこういう作品が日本で書かれていたことは驚き。
だが、この本で謎として提示されている2枚の絵画「殉教」と「車輪」は作者の創作らしい。ということは作者が自分で描いたもの?!
矢部がワープロで打ち出した用紙を読まされた井村が、思いのほかに鋭くて、重大な何かに気づく…という、ちょっと予想しなかった展開。
ま、そこに書かれた文章が誰主観なのか?という、叙述トリック系のミステリーではある。ジョン・ディクスン・カー的な雰囲気がある。この手のミステリーが好きな人はたぶん楽しめる。
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