アガサ・クリスティー「謎のクィン氏」(1930)を1978年ハヤカワ・ミステリ文庫クリスティー短篇集5(石田英士訳)で読む。
THE MYSTERIOUS MR. QUIN by Agatha Christie 1930
5年以上前にBOで見つけて確保しておいた一冊。108円の値札が貼ってある。前の所有者がメシ喰いながら読んだせいか油跳ねなんかで汚い。
神秘の探偵クィン氏の活躍を描く11篇を収録する短篇集。では順番に読んでいく。
- クィン氏登場
- 窓ガラスに映る影
- 道化荘奇聞
- 大空に現れた兆
- ルーレット係の魂
- 海から来た男
- 闇の声
- ヘレンの顔
- 死んだ道化役者
- 翼の折れた鳥
- 世界の果て
- 道化師の小径
それぞれ1本ずつ感想を書いていくつもりだったのだが、それは無理だった。読んだ先から内容を忘れていくw
短編ミステリーというより、恋する男女を観察してる老人目線のおしゃれ短編文芸。チェーホフ戯曲のようにすら感じた。
60代の老人サタースウェイト氏は社交界にも顔を出す資産家英国紳士。たぶん特に仕事などしていない。パーティーなどに顔を出して話題の男女などを観察し、背後にある何かを感じ、時に事件が起こり、それを解決したり納得したり。
すべてサタ―スウェイト氏という小柄な老人による体験主観語り。すべての話で終盤にハーリ・クィン氏という正体不明紳士が登場。
毎回毎回、パーティー会場のお屋敷、事件現場、レストラン、田舎旅館、裁判所、劇場、列車の中などでサタ―スウェイト氏の視界に入ってきて偶然出会う。
このクィン氏と何か少し話をすると物語が展開し始める。ヒントを得て事件(殺人事件でもなければ事件というほどでもないものもある)が解決する。
てっきりクィン氏という名探偵が事件を解決するミステリー短篇集だと思っていた。まったく違っていた。
クィン氏の容姿や年齢や職業、地位、家族、友人関係などの情報がほとんどない。(最終話で意外な特技?が判明)
ホームズとワトソンのようですらない。クィン氏のような存在感と登場のしかたの名探偵は他で見たことがない。強いて言うならミス・マープルが終盤になって登場人物の視界に斜めから入ってくるパターン。
あまりに二人が偶然バッタリ出会う。そんなことってある?名士同士ならロンドンで、カンヌやモンテカルロで出会うこともあるかもしれない。しかし、コルシカ島の海に突き出た崖で視界に現れたときは「もっと驚けよ!」と想ったw
不自然すぎて、このクィン氏と言う人は孤独な老人サタ―スウェイト氏の深層心理と内面から現れる幻覚のようなものか?とも思えてくるのだが、他の登場人物からちゃんと見えていて会話もしている。
そんな短編を楽しめる人のみが評価できる短篇集。「謎のクィン氏」はそれほど有名でもないのだが、わりと人気があるようだ。
これをもって2017年から開始した私的クリスティーマラソンのラスト86冊目。これで自分の持ってるクリスティ文庫はすべて読破。
たぶんまだ読んでないのはアンソロジー短編とか、児童向けとか、戯曲、恋愛小説、自伝、研究本のみ。
自分としては読みたいものはもうほぼすべて読んだことだし、これをもってクリスティ卒業。
しかし、1回読んだだけのものはもうあまり覚えていない。もしかすると2週目に突入するかもしれない。訳者が異なるものは買い集めてしまうかもしれない。
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