赤川次郎「ネガティヴ」(1994)を集英社文庫(1998)で読む。「小説すばる」1992年12月号から94年2月号まで「サイコ・ホラー・ノヴェル」と銘打って15回連載されたもの。
こいつも処分されるというのでたくさんもらってきた古い赤川次郎文庫本の中からランダムに取り出して読んだ1冊。
僚子は一般的専業主婦だったのだが夫の角田が人気流行作家になってしまい生活の質がグレードアップ。良い部屋に住めるようになり、高校生の娘エリも私立の女子高へ通う。
だが夫は外に愛人を作って浮気。ほとんど家に帰らない。「俺が稼いだ金をどう使おうが自由」
そんな僚子にハンサムで危険な雰囲気のジゴロ俳優が接近。スリに奪われた財布を取り戻してくれたり、雨の日にパーティーまで送り届けてくれたり。なぜかこちらの行動予定を把握している。
こいつは角田の雇った俳優。以前にドラマのオーディションで会ったのだが、暴力事件の前科があってドラマ出演は無理だった。この中原という俳優に黒木という役名を与えて妻を誘惑させ、それをネタに小説を書こうという寸法。
これが読んでいてすごく厭。あまりページをめくりたくない。
海岸に顔と指紋を焼かれた男の死体。歯形から身元が中原と判明。ということは黒木は誰?
被害者について聴きこみをしてる刑事が角田に接触。中原と男女の関係になってたらしい元マネージャーに話を聞きにいこうとしたら、火災?!マネ死亡。
さらに僚子をラブホテルに呼び出して黒木に写真を取らせ、写真をネタに体を要求してきた元教師も死体となって発見。さらに刑事も殺害。次々と死体。
これ、読んでる最中はヒッチコックの難解なやつかと思ってた。「異色のサスペンス」と言われたら「はあ、そうですか」と言わざるを得ないような、まるでダメなクリスティのスパイスリラーみたいな、ハチャメチャでカオスな展開。
黒木は僚子を好きになったと言っておきながら、娘のエリに手を出そうとホテルへ。
さらに角田はまだ書き上げてもいない連載分の原稿が編集者の手に渡っていることに混乱。
これ、ページの残りから判断して、どうしたって現実的な着地をしそうもない。
と思ってたら、やっぱりSFホラーなジャンルだった。それを知らずに読んだ読者は「…。」という虚無の気持ちになったかもしれない。赤川次郎は自身がカフカにでもなったつもりでこれを書いたのかもしれない。
これまで予備知識なしにに赤川次郎を6冊読んだのだが、どれも他人にオススメできるほどには面白く感じてない。強いて挙げるならホラー小説「白い雨」は面白かったと言えるけど。
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