2021年12月29日水曜日

バグダッド・スキャンダル(2018)

「バグダッド・スキャンダル」という2018年にデンマーク、カナダ、アメリカ合作による映画があるので見る。

元国連職員マイケル・スーサンが自身の見聞と内部にいた体験から書いた小説Backstabbing for Beginnersの映画化。それだとどんな映画なのかよくわからないので、邦題はバグダッド・スキャンダル。
監督はペール・フライ、出演はテオ・ジェームズとベン・キングズレー。

国連史上最悪な政治スキャンダル事件「バグダッド・スキャンダル」について、日本では報道を目にすることはあまりなかった。無知であってはいけない。お勉強のために見る。

経済制裁に困窮するイラク国民を救うための人道支援プログラム「石油食料交換プログラム」の裏で行われていた不正により、200億ドルが闇に消えた。
巨大な金と利権が動くところには必ずハイエナが群がる。甘い汁を吸っていく。国連というものは何の役にもたっていないどころか、むしろ害悪であることを強く印象づけた事件。

湾岸戦争後のフセイン政権下、経済制裁によってイラク市民の生活が困窮。で、クリントン政権のアメリカの提案によって、国連がイラクの石油を管理し、販売金を食料・医薬品に変えて市民に届けよう…というプログラムの運営が実は腐りきってた…という絶望。
その全容は、国連側の調査拒否により、いまも不明。

東京五輪も「東北復興」とか「子どもたちに夢を」とかいうテーマがいつのまにか、金に群がる電通・パソナといった利権が骨抜きにし焼け太っていく様をなすすべなく魅せられた。
IOCという貴族政治組織に日本人はウンザリさせられたのだが、国連という組織はそれ以上に腐りきっていた。巨大な組織と言うものは必ず腐敗する。

国連事務次官の特別補佐官で同プログラムの担当者マイケル・サリバン(テオ・ジェームズ)は投資銀行のロビー仕事を辞め、外交官だった亡き父を追い国連での仕事に応募する…ところから映画は始まる。
偉い人コスタ・パサリス(ベン・キングズレー)の意向ですぐに採用が決まる。「彼の子か…」

すぐに事務次官特別補佐官として勤務開始。1995年安保理決議986によって始まった石油食料交換プログラム。「私たちがイラク国民2000万人を食べさせてる」と秘書から説明される。さらに前任者はイラクで事故死したという嫌な情報まで知らされる。
雑貨店にいるとCIAエージェントが接近してくる。「石油食料交換プログラムは誰かに悪用されている。内部に協力者がいる。」
なにせ100億ドルの予算と20億ドルの活動費。これらがきちんと正しく運用されるように監視しないといけない。

イラク市民の生活が改善したかどうか?のサマリーレポートを上司に提出。この上司コスタ・パサリスが長いレポートに文句を言いながらその場でシュレッダー。第一印象から最悪。国連の偉い人にも「ファック!」とか言う人がいるのか。こんな無礼で高圧的な人がいるのか。この男こそがバグダッドスキャンダルのすべてを知る男。その日の夜にはバグダッドへ行かされる。

日本人のイメージする公平と正義は国際政治の現場で通用してない。この主人公も同じように憤ってる。疑問点を質問したりせず粛々と仕事をこなすように言われる。
現地視察で医薬品が闇に流れているらしいと知る。プレスたちカメラを前に病気の少女に狸パシャは涙を流すパフォーマンス。

女通訳から前任者は殺されたと教えられるし、ホテルの部屋には侵入者(諜報機関?)がいるし嫌な感じ。
何より主人公マイケルには上司のパシャが尊敬できない感じがありあり。プログラムを続けるためには国連の邪魔なやつも取り除く。その手伝いをさせられる。これが政治と外交だ。

そしてマイケルはクルド人であることを隠してる女通訳からUSBを渡される。適切な場所で適切な人から発表してほしい。ファイルは暗号化されていて解読できない。そこに諜報機関工作員たちが現れて仲間が殺される。現地国連事務所のデュプレ所長も死んで発見される。やだ、怖い。
あの女通訳ナシームは大物ハニートラップ?!イラクで会ったロシア人フィクサーもニューヨークに来てる?

暗号を解読。サダム・フセインはイラクの原油を不正に安く販売し世界中からキックバックを得ていた。動画ファイルには金を受け取るパシャの姿が。
米英有志連合軍がイラクに侵攻。フセイン政権は倒れたが、イラクはさらに地獄。前政権中枢はみんな粛清。新イラクを担う人材がいない。イラクは金の亡者たちに分割される。

そしてマイケルは国連を崩壊させるかもしれないリストを大手メディア持ち込む。パサリスは身柄引き渡し協定のないキプロスへ逃亡。

世界は汚職にまみれている…という映画。硬派で地味な、映画としての面白要素をそぎ落としたサスペンス映画。
国連はこんなやつらがのさばってるクソ組織。はやくベノン・セバンを逮捕しろ。コフィ・アナン元事務総長も何か言え。

0 件のコメント:

コメントを投稿