「冷たい熱帯魚」(2010 日活)をついに見る。これ、ここ10年ずっと邦画の怖い名作で名前のあがる作品。埼玉愛犬家連続殺人事件(1993)をベースとした園子温監督脚本による血みどろホラー。
ずっとビビッて見る気になれなかった。公開当時のR18+指定。この映画が園監督で唯一といっていいぐらい評価された作品。
でんでんさんが2010年度日本アカデミー賞で最優秀助演男優賞を受賞したときのはしゃぎようは今も覚えている。頭の狂った熱帯魚ショップのオーナー役を怪演。この映画を見るとしばらくでんでんさんを見るのも嫌になるらしいw
主人公の社本(吹越満)は小さな熱帯魚店を経営する小市民中年。死別した前妻との娘と現在の妻(神楽坂恵)との関係は冷え切ってる。この夫婦がとにかく暗い。娘と3人でいてもまったく会話がない。
この妻が冒頭の登場シーンからおっ〇いを前面に押し出したようなキャラ造形。園監督がおっ〇い監督なのだから仕方がない。(この女優は監督の妻。)
どんどこドラムに乗せて冷凍食品だけで夕食を準備するシーンからしてフザケた感じの演出。夕食中に年頃の娘がガラの悪い男に呼び出されて出かけていくとか嫌だな。
そして娘の万引き発覚。スーパー店長のキレ散らかしぐあいが酷い。親も不良少女相手と同じような口の利き方。なぜ警察でなくまず親を呼びつける?
そんなやりとりを近くにいた村田(でんでん)がなだめて丸く収める。ロードサイドの大型熱帯魚店を経営し赤いフェラーリを乗り回す村田は人が良さそうというか、やたら声がでかくて調子がいい。やたらとガハハ笑い。話術に長けた中小企業の一代社長という感じ。それどころか詐欺師か新興宗教の教祖みたいでもある。人を支配したいんだろうなという人。たぶん秀吉もこんな人だったんだろうと思う。
でんでん村田のペースに暗い社本は強引に巻き込まれていく。家族ぐるみの交流が始まる。村田の若い妻愛子(黒沢あすか)も前面におっ〇いを押し出してて笑う。
園監督、自分の趣味に合わせすぎ。でんでんさんと吹越を見ると「あまちゃん」を思い出す。
社本娘は村田の誘いで大型熱帯魚店Amazon Goldで働く。従業員はすべて若い女性。なぜか白いタンクトップ。なぜか従業員は全員全寮制。どうやら色気で男性客に高級魚を買わせる商売か。これも園監督のおっ〇い趣味全開。
なんか見てて不穏な感じがする…と思ってたら、村田は事務室で社本妻に性暴力。妻も嫌がる感じがない。あの死んだような夫と店で暮らしてるより、刺激を求めるタイプのドM妻だった…。
この妻を足場にして高級魚の取引を持ちかけられる社本。それがカネカネカネの悪逆非道ビジネス。否応なく社本はこの人非人村田の罠にはめられていく。引き返せなくなるまで落ち込んでいく。ずっと時系列が示される。
高級魚投資を渋る吉田(諏訪太郎)は強引な説得の末に金をとられ殺害される。その一部始終を社本は目撃させられる。死体の処分を強引に手伝わされる血みどろ地獄。とにかく村田が怒鳴る。これもクリーピーと同じ洗脳か?
村田夫妻がだんだん本性を出してくる。威圧的で暴力的。こうやって人のいい不幸な小市民を食い物にしていく。社本を支配洗脳していく。そのへんの描き方が微妙に嫌な感じ。
だが、風呂場での死体解体シーンはバカホラーっぽい激グロ。とにかく村田夫妻が現実感がないぐらいハチャメチャ。鼻歌交じりで素っ頓狂に陽気。
村田のビジネスパートナーヤクザ渡辺哲さんもすごく悪そう。「話聞いてんのかコラ。ちゃんと返事しろよ。」いちじるしく粗暴。
事務所に押しかけて来た吉田の弟たちもヤクザ。修羅場なのに愛子はドアの向こう側で従業員とレズキス?!なにこれ。いろいろコミカルでユニーク。
渡辺哲さんの「俺の目を見て言ってみろ」の件の吹越の演技とかも笑う。悲劇と修羅場と喜劇、そしてエロ。とにかく軽くて下品で粗暴な村田が極悪。
社本も警察の側から接近警告してきてくれてるんだからそのまま警察署に駆け込め!これは社本も悪い。
けど、脅されて洗脳されてるなら仕方ないのかもしれない。イジメられっこの心理になってしまってる。
けど、最後の社本の暴走反撃は衝撃的にブラックで血みどろ。園監督、どんだけむちゃくちゃやなことをやるんだ?
酷評する人も多いけど、人間の根源の奥深さと社会の闇を描いた傑作ホラーだと思う。園監督はこれ1作だけで世界の名監督。二度と見たくないけど。
これほど完璧に死体処理をしたら事件も発覚しないのかもしれない。こんな事件が実際にあったとか。平成はやっぱり狂ってた。
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