「クリーピー 偽りの隣人」(2016 松竹)を見る。前川裕「クリーピー」を原作とする映画。監督脚本は黒沢清。ずっと見ようと思ってた。重い腰を上げやっと見た。
黒沢監督の作品は世界では評価が高いのだが、日本では不評を見ることが多い。とくに若い女性たちから「よく意味がわからない」という人が多い。なぜだ?
サスペンススリラー刑事ドラマの雰囲気で始まる。主人公高倉(西島秀俊)は警察署でサイコパス殺人犯を聴き取り。逃走して署内で人質を取る。説得中に犯人に刺される。人質も喉を切られ、犯人は射殺。なにこのトラウマ事件。
そして1年後。新居に引っ越し。妻が竹内結子という家庭シーン。西島は警察を辞めて大学勤務。仲良しだが子どものいない夫婦という設定。このふたりを見ると「笑顔の法則」を思い出して悲しい気持ち。
西島は犯罪心理学の講義を担当してるのだが、サイコパス犯罪を大学生たちにそんな具体的に教えていいのか?
よせばいいのにお隣りへ挨拶。近所と義理でお付き合いとか面倒とか面と向かって言ってくる愛想のないおばさん。最低限の無難な挨拶すらできないような住民のいる地域はすぐ引っ越したほうがいい。
さらによせばいいのに妻結子は夫が仕事に出かけてる間に一人で人けのない隣家へ挨拶に出かける。そこで香川照之登場。こいつが初見からヤバイ変な人。なぜか真昼間から家にいる。
会話が噛み合わない。礼儀上さしさわりのない質問にも「それどういう意味?」とか攻撃的な返答。こういうやつと関わっちゃいけない。「よろしく」とか言っちゃいけない。
西島は大学の同僚から6年前の日野市一家失踪事件の存在を知る。誘われてその家に行ってみる。日本の荒れ果てた家の不気味さは異常。これ以上介入するべきじゃないからと西島は引き返す。
竹内は西島に、隣家の香川がちゃんとした答えの帰ってこない変人だったことをため息まじりで話す。
大学に警察時代の同僚刑事東出昌大が訪ねてくる。西島はケータイも変えて過去と決別してたので会うのが嫌そう。東出「日野市事件の現場に行ったそうですね?」西島「あそこは犯罪現場特有の感触がある」
1人だけとり残された少女がいる。当時中学生で証言能力はないものとされた。それが川口春奈。
現場になんとなくいたので西島と東出は話しかけるのだが、春奈は警戒感丸出し。それでもあの日の断片的記憶をとつとつと語り始める。
西島とは面識がないはずなのに香川は近づいてきて「なんで家のことを嗅ぎまわる?」とか無礼に文句を言ってくる。竹内結子はなぜかまた感じの悪い香川の家に「シチューが余った」とか言って持っていく。なぜ?夫からも近所づきあいなんてするなと警告されたのに行く?
家に上がって奥さんに挨拶をという段になって、香川の娘(藤野涼子)が顔で「やめろ!」という合図を送ってくる。
竹内はそそくさと立ち去ろうとすると、香川が追いかけてきて「妻は鬱なんです」とか言う。もういろいろ不審で見ていて嫌。
何か重要な話をしてるときに背景を人や影が動く不穏な感じとか、黒沢監督らしい演出とカット。これが見ていて毎回意図がよくわからない。不気味でストレスがたまる。それがホラーとしての演出なんだろうけど。
ずっと香川の不気味さは伝わってくるのだが、サスペンス映画として驚くべき真相が小出しにテンポよくやってくる娯楽映画感がぜんぜんない。
と思ってたらようやく日野市の隣家から5人の遺体が発見されマスコミも騒ぎ始める。ようやく何かが始まった。
香川は竹内に「ご主人と僕とどっちが魅力的?」とか聞いてくる。激キモ野郎ぶりに虫唾が走る。
一方そのころ西島は香川娘から呼び止められ「あの人おとうさんじゃないです。ぜんぜん知らない人です!」もうなにがなんだか。
西島も犯罪心理学のスペシャリストならもっと逞しく有能なところをどんどん積極的に見せろ。香川のペースに合わせるな。
だが、西島はさすがの洞察力を持っていた。家の隣家との配置が日野事件の隣家の配置と同じだ!
香川のことを調べて不審に思った東出刑事は香川宅を訪問(単独行動をさせるな!)、何故か隣家田中家のガス爆発事故現場から遺体となって発見。竹内も大ピンチ。いよいよホラーっぽい展開になってきた。
おい娘。なんで拳銃で香川を撃たない?なんで竹内も協力させられてる?そしてお約束の警察無能。なにが「離れて!」だ。住居不法侵入だ。もっと重大な事件が起こってるだろうが。バカ!元刑事で大学教授のほうが信用度高いだろ。バカ!
あんな理解力の劣る偉いだけのヨボヨボ笹野高史とふたりで現場に急行したってどうにもならないだろ。サイレン鳴らして20人ぐらいで行け!バカ!
案の定、笹野も簡単にやられる。凶悪な連続殺人犯と1対1で対峙するな。西島もバカ。拳銃ぐらい持っていけ!まるでゴキブリホイホイみたいな状況で笑うしかない。
なんか展開がありえない。ひたすらイライラさせられた。実録犯罪サスペンスだと思って見てたらファンタジーのような展開だった。ツッコミどころ満載映画だった。
あまりに酷評を見かけるので、黒沢監督をかばおうと思って見たのだが、これは見なくていいかもしれない。
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