2021年8月27日金曜日

三島由紀夫「美しい星」(昭和37年)

三島由紀夫「美しい星」(昭和37年)を読む。新潮文庫版で読む。

吉田大八監督の「美しい星」(2017)を先に見てしまった。だがあれは原作とはまったく別物だと思う。なので新鮮な気持ちでしっかり読む。

開始早々に驚く。自分たちを宇宙人だと確信してる一家がUFOを見に行く。この一家が住んでる場所がなんと飯能。そして山の上でコンタクトを取ろうとするのだが、この羅漢山というのが現在の天覧山

自分は過去何回か天覧山に登ったことがあるのだが、この小説の描写がほぼ現地に一致。ということは三島由紀夫は天覧山に来たことがあったのか。

そういえば山頂に茶屋のような廃屋小屋があったけど、昔は営業してたのか。
展覧山はアニメ「ヤマノススメ」にも登場する。飯能市はアニメタイアップで町興しをしてたけど、三島由紀夫に関する標識とか立て札とかは一切なかった。もっとアピールしてもよいのではと思った。

大杉家の主人重一郎(火星人と自覚)は映画では気象予報士キャスターになっていたのだが、原作では材木商の財産を受け継いで株式で暮らすブルジョア無職。短期間大学で教鞭をとったことがあるらしい。同窓会に来てる中年たちが弁護士とか官僚なので、作者は東大とか想定してるのかもしれない。

家族全員が思い込みの強い天然。長男一雄(水星人)は大学をサボり女の子と遊ぶ。大学生の長女暁子(金星人)は赤いベレー帽をかぶったおっとり上品美人。だが思い込みは強い。
兄と妹は、核実験で地球の平和を脅かすソ聯のフルシチョフに手紙を書いたりする。

雑誌の文通コーナーにメッセージを載せる。暁子はその意味に気づいた金沢の男竹宮と連絡を取り会いに行く。そしてUFOを目撃。
飯能に戻った暁子は妊娠4か月。「処女懐胎したの!」
どうやら金沢に行った日にふたりはできたらしい。重一郎は金沢へ竹宮を探しに行くのだが竹宮は偽名。おそらく地元で有名な女たらし色男。

一方、仙台では地球が滅亡することを願う3人の男たち。人が死ぬと喜び祝う。飯能の重一郎宅へ押しかけて人類の運命について双方の主張。もう何が何だかという展開。

この小説をSF小説として読んでる人が多いらしいのだが、思い込みの強い変わり者一家の末路を描いた風刺の効いた社会派ドラマという感じ。そこそこ面白かったけど、宇宙人から見た地球人についての自説演説部分が長くて困惑した。

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