2021年8月13日金曜日

玉城ティナ「惡の華」(2019)

「惡の華 AKU NO HANA」(2019 ひかりTV / ファントムフィルム)を見る。監督は井口昇。脚本は岡田麿里。
主演は伊藤健太郎だが、玉城ティナ、飯豊まりえ、秋田汐梨というフレッシュなヤングスターを目当てに見る。マンガ原作があるようだが何も予備知識がない。

主人公中学生は山に囲まれた田舎町で悶々としている文学少年春日高男(伊藤健太郎)。不良にカツアゲされても「どうやって恥ずかし気もなく生きていられるのか?クソムシども」という文学的問いかけなどしてしまう少年。3年前からの回想シーンが始まる。

文学少年は勉強はあまり得意ではないようだ。同じクラスの優秀な美少女佐伯奈々子(秋田汐梨)に密かに思いを寄せている。
その一方で仲村佐和(玉城ティナ)はクラスの問題児。テストを白紙で出して教師に「うるせえ!クソムシが」と言い放つ。狂気の目をした少女。

いまどきめずらしく体育の授業で女子たちのブルマに熱い視線を送る男子生徒シーンがある。カメラが男子の視線のようにブルマと太ももを追う。
忘れ物をしたと学校にひとり戻った少年。そこに落ちていた佐伯さんの体操着袋を手にとり、ブルマを顔に押し当て息を深く吸い込む。「シャンプーの匂い…」
人の気配を感じて慌てて体操着をつかんで逃げ出してしまう。

翌日、クラスで問題になる。「俺は罪人だ…」良心の呵責に苦しむ。
自転車で河原を走っているとそこに仲村。「あの山の向こうまで自転車に乗っけてって」と要求。「なんで…?」
じつは仲村は一部始終を見ていた。玉城の目つきがタダモノじゃない。
「バラさないでやってもいいよ。その代わり、私と契約しよ♥」笑いながら無茶な要求をしてくる。変態作文を書くように要求。

変態少年と狂ったドS女。タイトルこそボードレール「惡の華」だが、設定はほぼ谷崎文学の香ばしい匂い。
こういうの、中学2年になったら何が変態で何が変態でないかをしっかり教えるべき。生真面目すぎて自分の変態性に悩む少年とか憐れでしかない。

今度は給食費がなくなったとちょっとした騒ぎ。「犯人は仲村じゃね?」という空気になるのだが、春日は「なんの証拠もないのにそういうこと言うな!」とかばう。給食費はすぐ出てきて冤罪は晴れた。この様子を見ていた佐伯さんは春日に良い印象を持つ。「かっこよかったよ。春日くん♥」爽やかな笑顔で話しかけてくる。
「いい古本屋があるから今度一緒にいこうか」w 

だが、そこに仲村が狂気のような目でこちらを見ている。「作文は?」春日はボードレールを渡すのだが、仲村はブチギレ。春日に佐伯さんの体操着を無理矢理着せる。「ド変態がァ!」「どんな気持ち?」「私も春日くんと同じ変態なの」

だがなぜか春日は佐伯さんと古本屋デート。佐伯さんは無防備でイノセントなお色気を中二男子に見せてしまう。この役は秋田汐梨にとってギリな挑戦だったかもしれない。
そこに仲村。出現の質感がほぼ悪魔。デートが終わるまでに佐伯さんとキスをするように命令する。「なにカッコつけてるの?佐伯さんの体操着を着てるくせに」「自分はド変態野郎だって認めな!」

そして春日は佐伯さんに告白。佐伯さんが素直でピュア。うれし涙を流す。そこに仲村乱入。

この女が怖い。教室に体操着を返しにいくのだが、一部始終の告白を黒板に書くことを要求。狂ってる。本物の変態女。
さすがにこのシーンはヤバすぎると思ったのか?なんだかミュージックビデオのようになってた。

教室を墨汁まみれにして春日と仲村は逃走。山の向こうへ一緒に行く。雨に降られて閉園した遊園地。
そこになぜか佐伯さんがやって来る。必死。佐伯さんがとことんピュアでいい子。どこまでも春日くんのことが好き。不機嫌になった仲村は春日をド変態クソムシと罵り春日を裸にさせる。それでも佐伯さんはピュアな恋愛を通す。仲村は捨て台詞を吐いて立ち去ろうとするも春日が追いすがる。

そして春日独白。本当はボードレールなんてわからない。僕はからっぽ。
佐伯は「わかった。もういい。」と立ち去る。仲村は「惡の華」を泣きながら踏みつけズタズタに割いて去っていく。
そして3年後、春日は高校生。抜け殻のように毎日を過ごしていた。なんか、健太郎が昔の市川実日子そっくり。春日の父は飲んだくれて家庭も暗い雰囲気になってる。
今度は常磐文(飯豊まりえ)と出会う。まりえってぃも激しくかわいい。春日はこの少女が古本屋で「惡の華」を読んでいる姿を目撃。激しく動揺。
常盤さんは読書家?小説のプロットを書いているのだが、その内容がほぼ自分のことのよう。「これは僕だ!」常盤さんは小説を書くことを決意。

常盤と楽しそうに話しながら街を歩いていると佐伯とすれ違う。男連れ。「懐かしい!」「メール交換しよう」と近づいてきて「あの子も不幸にするの?」と嗤う。佐伯さんも性格悪くなってる…。

再び中学時代の回想。春日、仲村、佐伯の3人は相互に無視しあってる。
春日は仲村の家を訪ねる。父と祖母、3人暮らし。父にも仲村のことはわからない。部屋に仲村の殴り書きノート。読んでるところを見た中村は激怒。仲村はさらに狂ってた。今度は春日の側から仲村に「契約」を提案。この街で一緒に山の向こう側を探そう。
仲村「契約させてやるのは私だろうが!ド変態野郎!」冷たく蔑むような微笑。

「もう本はいらない」という春日は河原に段ボールハウスの家を建てていた。女子たちが水泳の授業中に春日は佐伯以外全員のパンツを盗む。それが佐伯にとって一番酷いことだから。

佐伯さんは段ボール小屋で春日にセックスを要求するも拒まれる。「僕は仲村さんが好きだ」
佐伯は段ボールハウスに放火。佐伯は仲村に「春日くんとしちゃった」「ねえ今どんな気分?」と嘘報告で逆襲。

仲村と春日はさらに大問題児になっていた。仲村と春日みたいな子を持った親も気の毒だが、このふたりと関わってしまった佐伯さんが一番気の毒。

そして再び高校時代。常盤さん「私はからっぽ。無理してたのかな」かつての春日と同じことを言ってる…。
佐伯さんから食事に誘われた。仲村さんとはあれ以来会ってないと言うと、佐伯「ずっと逃げてたんだね。がっかりした。」
そして夏祭り。仲村と春日は八木節のやぐらで焼身自殺を図る。

ここまで狂った中学生映画はめったにない。ドM男子を見て楽しく笑おうと思ってたら、重厚過ぎる文学作品だった。三島谷崎だった。「害虫」という映画も思い出した。

中身空っぽなのに「周囲は全部クソ!」という中学生に特別な変態性など何もない。こどもたちに変態性はいらない。「惡の華」はいらない。ダメ男の文学作品よりも、ひたすらポジティブな成功体験談だけを国語授業の教材に使うべき。

常盤さんもよくこんな壮絶過去を持った男とつきあう気になれる。まりえてぃだけがこの映画の清涼剤。

玉城にとっても挑戦だったはずだ。そして佐伯さんを演じた秋田汐梨さんに強いインパクトを受けた。撮影当時16歳ぐらいだったはずなのに、変態性をテーマにした狂気のピカレスクフィルノワールって仕事にしてもヘビーすぎ。
自分としては井口監督の仕事に敬意と拍手。

主題歌はリーガルリリー「ハナヒカリ」

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