「スターリンの葬送狂騒曲 The Death of Stalin」(2017)という映画があるので見る。人類史上最も冷酷で非情で陰湿な大量粛清と殺戮を行った独裁者スターリンの突然の死とその後を描いたブラックコメディ映画。
原作はフランス人。脚本監督はアーマンド・イアヌッチ。まだまだ当時を知る人が多く存命中のロシアではこんなコメディ映画は無理で、やっぱり英、仏、ベルギー、カナダ合作による映画。日本での配給はGAGA。公開当時からちょっと関心あったのだが、今になってやっと見る。
スターリン亡き後の共産党内の熾烈な権力闘争。日本も佐藤内閣の後に三角大福のような熾烈な自民党総裁レースはあった。日本と違うのが、共産党独裁体制では権力争いに敗れれば粛清されるということ。見る側は登場人物たちのその後の運命を知っている。
邪知暴虐の王の饗宴。自由に粛清リストを作成し秘密警察が粛々と仕事をこなす。側近も秘密警察も、まったく正義を取り違えている。なぜに傍にいるお前らがスターリンを殺さない?
党第一書記フルチショフはイメージが違うが、NKVDのベリヤはいい線いってる。自分が写真で見て知ってたベリヤは若い頃の写真だった。スターリンの傍にいてぶくぶく太っていったのか。
モロトフもマレンコフも、ミコヤンもブルガーニンもいい感じで似てる。カガノーヴィチは名前も知らなかった。
ヒトラーの片棒担いだ側近たちが後にどんな運命をたどろうとも同情はしなかった。スターリンの側近たちも同じ。地獄を見て死んでほしい。
スターリンから生放送中のコンサート会場に電話がかかってきて録音を所望。録音してない放送局は慌ててもう一度収録しようとするも女流ピアニストが拒否。恐怖政治体制に支配される市井の人々の滑稽な日常。
ピアニスト役の女優がどこかで見たことがあると思ってたら、2008年にボンドガールもやったことのあるオルガ・キュリレンコだ。
医者はみんな殺してしまってヤブ医者しかいないという。ほんとか?
予想に反して粛清処刑自体のシーンは銃声と「同志スターリン万歳!」の声のみ。それでもやはり残虐。
収容所での処刑シーンで流れてる音楽がショスタコーヴィチっぽい諧謔の音楽で素晴らしい出来。
この映画を見ても歴史のお勉強にはならないと思う。権力者たちの下品な会話が続くコメディー戯曲。これを上映させなかったロシアは今も変わってないかもしれない。西側諸国とはロシアは今も違う。人が死に過ぎ。
GAGAの日本公開予告編が酷い。日本の予告編はどれも毎回同じ。
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