まだ見てなかった「グッバイ、レーニン! Good Bye Lenin!」を見る。これはソ連ではなくて東ベルリンが舞台。2003年にドイツで制作公開されヒットした映画。なのでドイツ語。監督はヴォルフガング・ベッカー。脚本はベルント・リヒテンベルク。日本での公開は2004年。配給はGAGA。
1990年のドイツ統合というあの頃を振り返る東ドイツ市民の「三丁目の夕日」映画。
ドイツ統合は今もつい最近のできごと。以後、東ドイツの安い労働者を利用できたドイツ企業は躍進したし、職を失ったガストアルバイターのトルコ人はケバブ屋になった。自由の波に乗れなかった東ドイツの若者はネオナチになった。
映画は1978年から始まる。東ドイツ人宇宙飛行士がソユーズロケットで宇宙に行く栄光をテレビで見る少年。だがその家族の父は西側に行ったきり帰ってこない。母は放心状態。子どもたちは悲しみをかみ殺してる。
母は社会主義の祖国のための教育活動奉仕にのめり込む。
そして、宇宙飛行士に憧れた少年は10年後、テレビ修理を仕事にしている。ここまでずっと主人公青年アレックスの独白ナレーション。DDR建国40周年式典にゴルバチョフとホーネッカーという映像。
暴力反対と自由を求める反体制デモに参加して警察に連行されるアレックス。ナチから社会主義に変わっても官憲は粗暴で野蛮。その様子を目撃した母は昏倒し意識不明。
母が眠っている間にホーネッカー議長は辞任しベルリンの壁は崩壊。自由世界を体験してカルチャーショック。衣食住を党国家から支給されていた人々は初めて通貨の流通を体験。
人工呼吸器とチューブに繋がれ昏睡状態を続ける母を見舞っていたら、ソ連からの留学生看護婦ララとデモ以来の再会。
テレビ修理の仕事を失ったアレックスは衛星放送会社の飛び込みセールスと設置の仕事を得る。業績は好調。
同僚の結婚式編集テープがキューブリックの「2001年宇宙の旅」の空に投げた骨シーン。だが、東側だったアレックスは何も気づけない。西ドイツと東ドイツの人々にはこんなギャップだらけ。
8か月眠っていた母は突然意識が戻る。だが余命宣告。じゃあ家に連れて帰る。だが、ショックは絶対に禁物。母の愛する祖国ドイツ民主共和国(DDR)は健在かのように偽装しふるまう。姉は経済学の勉強をやめてバーガーキングでバイト。バイト先の店長を引っぱり込んで同居中。どうするどうなる?
国境がなくなったために自動車の交通量が激増。東ドイツマルクは西ドイツマルクに交換され入れ替わる。
国営スーパーは西側資本になりかつての日用食料品も入れ替わり手に入らなくなる。旧東ドイツのピクルス瓶にオランダ製ピクルスを移し替える。
母はテレビを要求。かつての教え子や校長先生を家に呼びたい。みんなに演技を要求。
テレビは東ドイツ時代のビデオテープでごまかす。校長はアル中廃人だが無理矢理整えて母をお見舞いさせる。
しかし、窓の向いにある集合住宅にはコカ・コーラの宣伝広告。さすがに母もなにかがおかしいと気づく。
そして母の東ドイツマルクのヘソクリは交換期限が過ぎてしまい預金は紙くず。(期限を2日過ぎたとうだけで無下に断る銀行は酷い。アメリカなら銃を乱射されてる。)
イタリアワールドカップでドイツ(西ドイツ)優勝。
アレックスが眠ってる間に母は外へ出かけてしまう。母は激変したベルリンを見てしまう。レーニン像を吊り下げたヘリが飛んでいく。
アレックスは西側の経済難民が押し寄せてきてるというフェイクニュース映像を母に見せる。理想のベルリン、理想のドイツ民主共和国!
東西ドイツの統合は急激だった。10か月前の生活に戻ることは困難。時代の流れに逆らい留まろうとした家族の悲劇と喜劇。とても味わい深い名作。
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