2021年8月4日水曜日

ドストエフスキー「罪と罰」(1866)

ドストエフスキー「罪と罰」(1866年)を1968年工藤精一郎(1922-2008)訳の昭和62年新潮文庫版上下巻で読む。ついに読む。
Преступление и наказание, Фёдор М. Достое́вский 1866
小学生のときから名前は知っていたロシアの文豪の代表作。だが、ロシア文学はたいていどれも長い。いつか読むだろうとずっと置いておいた。乃木坂46佐々木琴子も読んだらしいので読む。
ロシア文学は読むのがキツそう…と思っていた。だが、一気呵成にとめどなく語られる文体。

暑いサンクトペテルブルクの夏、主人公ラスコーリニコフは貧しさと生活苦の末に大学も辞めてしまった。返す当てのない借金をするために質屋に行く。しかし、父の形見の時計ですらも、前の借金と利子を天引きされ安く買いたたかれる。ほぼ生活破綻してる。この時点で鬱文学。

やっとのことで借りた金を持って街の酒場へ入る。酔っ払いの元下級役人マルメラードフに話しかけられどん底身の上話を聴かされる。貧乏の末に妻からは怒鳴られ酒におぼれて生活苦。娘のソーニャも売春婦となってしまった。
150年前の帝政ロシアも現代日本も絶望的な貧しさと生活苦は変わらない。気が滅入る。

倒叙ミステリーとして読めば読めると聞いてたけど、やはり無駄な会話と情報量が多すぎるかなと感じた。異常にダラダラと長い。読んでも読んでも展開しない。
病身ラスコーリニコフは極端にビビリだったり弱気だったり心臓がドキドキしてる。金がないのに赤の他人にあげたり、官憲や役人に強気発言だったり。

質屋の老婆とその妹殺害も無計画すぎるし、現場から見つからずに逃走できたのもラッキーにすぎない。金目の質草を盗んだけど、それって換金できないよね?証拠になるので埋めるしかない。とにかくひたすらバカ。

あれ?これだけ重罪を犯しておきながら、上巻ではぜんぜん警察がせまってこない。ひたすら妹の結婚とか、大して親しくもない学生ともだちとかとの話ばかり。
妹の婚約者(金持ち)に無礼発言をしてブチギレさせる。マルメラードフが馬車に轢かれて死んで途方に暮れてる残された家族に金を渡すところも見られてしまう。母と妹が貧乏アパートにやってくる。頼りになる友人ラズミーヒンが妹ドゥーニャにホノ字。

殺した老婆アリョーナに質入れしてた父の形見の時計を取り返したい。ラズミーヒンの紹介でポルフィーリー判事と会う。ラスコーリニコフはいろいろ計算して演技する。それでもポルフィーリイは何か知っててそうで不気味。ラスコーリニコフが自分に会いに来るのを待っていた?自分の書いた論文も読んでいる?!

下巻もロシア人の口論シーンが多い。江戸っ子と違ってロシア知識階級はしっかり論理で相手を打ち負かそうとする。マウントを取る。
ひねくれラスコーリニコフとポルフィーリイとの対決が酷い。さらに、金の力で女を支配できると考えるルージンの下劣さが酷い。
策略でラスコーリニコフがソーニャにお金を渡していたことにして母妹とラスコーリニコフの分断を図るとか、泥棒に見せかけようとするとか、やってることがまるで中共。

終盤になってスヴィドリガイロフという、ドゥーニャの件でラスコーリニコフ一家に嫌な目にあわせた男が主人公になってる。こいつもひたすら口論。やがて突然の自殺。

ラスコーリニコフくんは最初から最後までずっとほぼ錯乱状態。殺さなくていい老婆の妹も殺害してしまったことが良心の呵責。
自首してシベリア送りになって母親が精神病んで死ぬとか、自分もそうなったら…と想像して怖い。

ロシア史において農奴解放によって社会が改革されていく時期。ラスコーリニコフのように自分を選ばれた人間と思うような青年の末路を描く。最後は憐れにしても希望の光はある。スヴィドリガイロフのようなニヒリストの末路も憐れ。ドストエフスキーは反面教師によってロシア青年の進むべき道を示した。

上下巻を1週間ほどで読み終わった。なんだか話がぜんぜん予想通りに進まない。読んでてすごくイライラするw 正直それほど面白くはない。惰性でページをめくった。
次は「カラマーゾフの兄弟」を読もうと思う。こちらのほうが面白いらしい。

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