2021年1月13日水曜日

奇蹟がくれた数式(2016)

夭逝したインドの数学者ラマヌジャン(1887-1920)を回想する英国映画「奇蹟がくれた数式 The Man Who Knew Infinity」(2016)を見る。監督脚本はマシュー・ブラウン。
原作本は邦訳も出ているらしい。ロバート・カニーゲル「無限の天才 夭逝の数学者・ラマヌジャン」という本だが自分は手に取ったことがない。

ラマヌジャンはそれほど数学に感心のない日本人でも名前だけは知っているという人が多い。高等教育を受けたわけでもなく学位もないのに世界的に有名になった。若くして亡くなってしまったという物語が死後に語られるようになった。数学者の功績は普通以下でしかない我々にはわからりずらい。

英国の老教授の回想が始まる。数学の才能があるインドの青年ラマヌジャン(デーヴ・パテール)は妻がいるのに仕事がなく求職に必死。だが、英国が支配する当時のインドで学位のないアマチュア数学者インド人青年に期待するような仕事がない。

それにしても「あきれたやつだ。失せろ!」は酷い。服装で浮浪者呼ばわりは酷い。偉い英国人のインド人への眼差しが酷い。こういう歴史的暴言を残したやつは歴史に名を刻むべき。日本で言ったら大正時代。日本人だって差別がある。英国とインド、人々の意識はそんなもの。

自分のノートを偉い人に見せてやっと「これを説明しろ」という仕事(親切?)を得るのだが、それだけの仕事で母と妻を呼び寄せるのは時期尚早じゃないのか?
この妻と母がラマヌジャンが外で仕事を得ることが気に入らない?なにそれ。このインド人は海の外へ渡ることが掟によって禁じられている?

上司の勧めでラマヌジャンは手紙を書いて自身の研究をケンブリッジの教授に知らせる。ハーディ(ジェレミー・アイアンズ)という数学者が手紙の内容に最初は懐疑的だったのだが内容に驚く。このことがなければラマヌジャンはマドラスの港湾局で埋もれたままだった。

手紙の返事が来てラマヌジャンは妻と母を残し英国へ渡る決意をする。髪を切る。母親からは海外の食事で穢されないように注意を受ける。菜食主義者?この辺のインドの風俗はまったくわからない。だが、もうすぐ第一次大戦が始まるという時期。

ケンブリッジへ着くとリトルウッド教授(トビー・ジョーンズ、この人は「ハイドリヒを撃て!」にも出てた。「ミスト」にも射撃が得意なスーパーの店長役で出てた)やラッセル教授は親切だが、無神論者ハーディ教授は冷たい。それに周囲の目が冷たい。

世界最先端の大学にインド人はわずかしかいない。インド人の習慣は理解されていない。肉を口にしそうになって吐きだし口を拭く。これでは英国での生活はムリではないのか?

講義を受ける。先生より数学ができる学生は迷惑。目立つな!出て行け!これが英国人。こんな目に遭えば誰だってストレスで体調も悪くなる。さらに栄養失調。そして英国の気候はインド人には寒すぎる。

ラマヌジャンの研究ノートは「予想」に過ぎない。証明する時間がムダと考えるラマヌジャンをハーディは説得する。「証明が重要だ!」

戦争が始まると外国人に英国人は冷たい。みんな右翼。ケンブリッジのキャンパスも野戦病院?
数学の天才をタダ飯食ってると非難しからんでくる。暴力をふるわれる。英国みたいな野蛮な国に来るんじゃなかった。

分割数の近似式で、組み合わせ論の主幹マックイーンとの対決に情熱を燃やす。だが、体調がどんどん悪化。咳が止まらない。なのにハーディには隠してる。これはヤバい。ロンドンにはツェペリン飛行船が飛来し空爆も。

ラマヌジャンほどの天才であってもフェローの件は否決された。これが世界一の知性の帝国。恥ずべきことだ。不治の病結核で余命宣告。英国に来たことでどんどん不幸になってる。
世間に認められない天才が若くして死ぬ物語はつらい…、と思いきや死なないのかよ!
認められないまま孤独の中で死んでいったんだとばかり思いながら見ていたので意外なラスト。

ハーディが情熱燃やしてラマヌジャンを王立協会会員にしたことは救い。明るくインドに帰って妻に会って一緒の時間を過ごして亡くなったのも救い。

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