2020年12月6日日曜日

長澤まさみ「The Crossing 太平輪」(2014)

長澤まさみが2014年にカンヌに乗り込んで盛大に発表されたジョン・ウー監督脚本の大作映画「The Crossing ザ・クロッシング 太平輪」の第1部と第2部をようやく見終わった。ひたすら長かった。
これを今まで放置してた理由?長いわりにまさみの出演シーンが少なそうだし。

日本での劇場公開がなんと5年後の2019年になってから。そもそも中国における戦争映画って日本人はほとんど見ない。この大作映画に国内の買い手がつかなかったのも必定。

金城武ってもう日本ではあまり名前を聞かない。チャン・ツィイーや長澤まさみ、中華圏、韓国人スターを出演させた話題作だというのに日本公開時にぜんぜん話題を聞かなかった。
この映画は日中戦争よりも、国民党と共産八路軍の戦いがメインの映画だった。太平輪という船が1949年に沈没した事故を描いている。
太平洋戦争と違って日中戦争、国共内戦の映画やドラマを日本人は見慣れていない。それにひたすら長い。そんなこんなでは日本のバイヤーは誰も手を挙げなかった。

実際、白兵戦で日中双方の兵士がたくさん死ぬ酷いシーンが延々と続く。この戦闘が具体的にどこでの戦闘なのかわからない。金城武は台湾人軍医?予備知識がなさすぎて推測しながら見る。野戦病院で血まみれで死にかけた兵士たちを手当てするシーンが続く。

長澤まさみが着物姿で回想シーンに登場。金城をグン兄さんと呼んでいる。え、兄妹なの?予告編でキスシーンとか見た記憶があったので混乱。ああ、やっぱり台湾人と日本人の初恋カップルなのね。
チャン・ツィイーは赤十字のマークのついた病院で兵隊さんの看護をボランティアでやってる。1947年?ということは国共内戦?よく状況がわからない。また回想シーン?時系列がよくわからない。
日本の敗戦後すぐ上海の上流階級たちはダンスパーティー。軍人将校もいる。

みんな華やか。ひたすら中華圏美男美女スターが出てくる。中国兵のイメージと違うw それほどリアルを感じない。けど、こんなんだから農民主体の共産党軍に負けたのかも。
兵士は配給をもらうために偽家族写真を撮ったりするの?内戦に反対する学生は連行されるの?国民党軍が上海市街でこんな虐殺を?この時代の上海を知らな過ぎた。

ヒロイン(チャン・ツィイー)は独身で貧乏で仕事も住むところもない。生き抜くのは大変だ。人を探すために病院ボランティアをやっていた。混乱した状況で人を探すのは大変だ。
と思ったら開始40分過ぎで台湾へ渡る客船太平輪が登場。見ていた時系列がまったくわからなくなっていく。それぞれ戦争を生き抜いてきた人々が台湾でクロッシングというわけだ。

中国の警察は人々が集まって何か要求するだけで見境なくその場にいた人をみんなボコボコにするの?これは中国の伝統?
生きるために客を取る娼婦。それ知りつつ下宿を貸し宿賃を受け取る大家さん。滑稽かつ悲哀。この大家さんは上品で心優しい。

国共内戦の兵士たちの悲惨さを映像で知る映画だった。蒋介石は酷い命令を出す将軍だった。そりゃアメリカにも見捨てられる。敵に投降する師団と通信兵の話とか、血と肉が飛び散る様子とか、全滅する部隊とか、日中戦争以上にこの世の地獄。中国は4000年お互いに殺し合って今がある。
第2部もやっぱり時間軸がよくわからないまま見る。国民党政府は本土で敗色濃厚。上海でもハイパーインフレ。できるだけ早く上海を脱出しないと大変なことになる。

台湾では共産党員(主に学生)が暴力的な摘発に遭う。疑われるだけで銃殺?国共どっちもどっち。恐ろしい。自分に災いが降りかからないように慎重に行動。心に暗い影。しばらく第1部のおさらいが続く。見たことあるシーンが反復。

中国の官憲も兵士もとにかく逃げるやつは追いかけて殴る。昨年来の香港の市民たちが弾圧される映像を見て酷いと感じたけど、これはやっぱり中華民族共通の所作なの?

雷将軍が敵軍に投降したと疑われ妻が事情を聴取される話も酷い。こんな時代の中国に生れなくてよかった。

中国の男は娼婦を甘い言葉で買っておいて終わったらお金を払わないのもお約束なの?台湾行きの船の切符をくれる約束だったのにもらえない。なんで前払いでもわらない?どうせ治安も崩壊してるんだからそいつは殺していい。酷いシーンばかりでブルー。

金城も基隆と上海をあんなに頻繁に行き来してたら色んなことで疑われる。よせばいいのに上海へ行って学生運動にのめり込む弟を連れ戻そうとする。
最後の便がまるで芥川の「蜘蛛の糸」みたいな状況。やっとのことで乗り込んだ船が地獄への船。過積載の船に乗るのは怖い。

第2部では金城の回想シーンでまさみとのかなり濃厚なキスシーンがある。だが、思ってた以上にまさみ登場シーンが少ない。話の本筋と関係ない。金城の回想の中でしか登場しない。たぶん出演時間はトータルでも10分に満たないのではないか。とんだまさみ詐欺。

しかもたくさんの人が死ぬ鬱映画。幼い子どもが船と一緒に沈むシーンとかメンタルをやられる。さらに波間を漂う人々の間でも浮き輪と救命胴衣の奪い合い。殺し合い。醜い。なぜここまで描く?絶対に沈む船に乗ってはいけない。

だがそれでもこの映画は見てよかったと言える。(二度と見ないけどw)
戦争の悲劇と戦闘シーンと人間ドラマのバランスがいいなと感じた。中国人監督の演出は格調高くてそれほど違和感を感じなかった。国共内戦終盤の上海と台湾の雰囲気を知れた。
ところで小舟をチャーターして上海から台湾へ渡ることはできなかったのか?

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