2020年12月5日土曜日

上戸彩「李香蘭」(2007)

2007年2月にテレビ東京で2夜連続で放送された「李香蘭」を見る。放送当時に録画(アナログ地上波)してDVD-Rに焼いておいたまま一度も見ずに積んでおいたものでみる。たぶんDVDソフトが発売されている。

やっぱりこの当時に焼いたDVD-Rは普通の再生はできなくなってる。なんとかデータを抽出して、さらに編集して別方式に変換してやっと見れる状態に仕上げた。よほど暇でなければできない。それでもやっぱり一部映像が飛んだりする。

山口淑子「李香蘭を生きて・私の履歴書」(日本経済新聞社)をベースにした大作ドラマ。監督堀川とんこう。脚本竹山洋。音楽服部隆之。キャストがめいっぱい豪華。オスカー古賀会長渾身の企画。

このドラマ制作発表のとき上戸彩は李香蘭こと山口淑子と会っている。山口淑子さんによれば上戸彩は李香蘭を演じた歴代女優の中で最年少だったらしい。当時の上戸彩は21歳。
自分にとって上戸彩は「金八先生」と「エースをねらえ」の人。この2つのドラマはしっかり見た。だが、「アテンションプリーズ」あたりからそれほど見なくなって、この「李香蘭」あたりではもう熱心に上戸彩出演ドラマを見なくなっていた。この時代の上戸彩はCM女王。

上戸にとってこの役はかなりのチャレンジ。上戸彩は個性的な顔で中国人美人歌手っぽくない。
それに李香蘭は中国人も日本人とは思わなかったというほど中国語が上手かった。おそらく短期間しか練習時間がとれなかった上戸彩の中国語は、大学で2年しか中国語を勉強してない自分の耳であっても、それほど上手く聞こえない。だが、それを指摘するのは野暮。

中国でロケ。満洲での日本人と中国人が一緒になかよく暮らしている場面から始まる。幼いころの山口淑子は中国語学習に夢中。父(橋爪功)は満鉄で中国語を教えてる。母(名取裕子)は日本女子大卒のインテリ。(京都地検か!)
満州事変で河本大佐が鉄道に爆弾しかけてるシーンとかドラマで初めて見た。この辺の日中の事情は野際陽子さんのナレーションと再現映像でで駆け足で説明される。
天津にいた溥儀を満洲国に迎えるべく営口で出迎える甘粕正彦(中村獅童)のシーンもドラマ映像で初めて見た。川島芳子は菊川怜。最近はすっかり菊川怜さんを見かけなくなった。

撫順で労働争議から暴動。炭鉱が燃える。淑子の見ている場所で友人の父親が憲兵に殺される。そんな酷い時代。中国人たちと仲良くする山口一家は憲兵隊からマークされる。一家は撫順から奉天へ移り住む。淑子は亡命白系ロシア人少女とも仲良くなる。このドラマはずっと中国語とロシア語なのでずっと字幕つき。

昭和8年春節、13歳になった山口淑子は瀋陽銀行総裁の李際春将軍夫妻と養子縁組をする。日本人には理解しがたいのだが、親しくしてる家族どうして行う中国の古い風習らしい。このシーンでやっと子役から上戸彩にチェンジ。このとき李香蘭と名付けられる。
亡命ロシア人一家の伝手でやっぱり亡命ロシア人音楽教師から歌を習い始める。ヤマトホテルでの先生のリサイタルの前座で歌うようになる。そこに放送局の偉い人がきていた。ラジオで歌う。このとき山口淑子は中国人李香蘭ということになる。李香蘭の歌声が満洲全土に流れるようになる。

だが、だんだん日本は国際社会で孤立してる時期。別れも告げずロシア人一家が突然いなくなる。
そして淑子は北京語を身につけるために中華民国の北京に留学。ここでも地元有力者の養子となり別名で女学校へ通う。ここにも抗日の波は押し寄せる。親友も抗日ゲリラ。授業のボイコットを叫んだりする。そして日中全面戦争。
工作員山家亨(小野武彦)が接近してくる。養父が天津市長になる。淑子に川島芳子が接近してくる。「僕の事はお兄ちゃんと呼べよ」
娘が川島芳子と遊び歩いてることを知って父は不安。川島は退廃と自暴自棄の風。たぶんちょっと頭おかしい。菊川怜の演技がかなりヘンテコな感じがする。

淑子は養父から満洲へ返される。満映の偉い人が接近。山家らに「唄を代わりに吹き込むだけだから」と、ほぼダマされる形で淑子は新京の満映へ。マキノ光雄(徳井優)らに強引に主演女優をやらされる。このへんコミカルに描いてる。 
両親も「淑子なら日中のかけ橋になれる」と女優になることを容認し背中を押す。長谷川一夫との共演も決まる。
昭和14年3月、19歳の淑子は生まれて初めて日本へ行く。下関で船を降りようとするとパスポートをチェックするだけの官吏に「日本人が中国人の格好をして恥ずかしくないのか!」と怒鳴られる。理不尽すぎる。オマエこそ日本人のくせに着物を着てないだろうが!とか反論すべき。

兵隊慰問で李香蘭よりも長谷川一夫の女形のほうがウケがいいとか意外。
長谷川一夫がなんだか偉そうだし怖いし気持ち悪い。「長谷川一夫と芝居をしてると生きた心地がしない」「目の奥が怒ってる」

満映の2代目理事長になぜか甘粕正彦。李香蘭は長谷川から人殺しが理事長やってる満映を辞めるべきだと言われる。李香蘭と親しくしてる作家の田村も満映から脅される。すぐ赤紙が来る。ヤダ、満映こわい。
李香蘭は満映のスターとして満洲の偉い人たち吉岡中将、星野直樹、岸信介、鮎川義介といった人々にも挨拶。
満映との仕事を嫌がった長谷川一夫も満映は脅してた?いろいろ興味深い。日本は満洲のことも教科書でしっかり教えるべき。

「支那の夜」で長谷川一夫にぶたれるシーンがあったことが後に問題になる。「日本人が中国人の娘を叩いた!」「中国人を侮辱した!」台本の通りなんだから仕方ないとはいえ、叩いた男を好きになるなんて中国人には通じない。日中友好にはならない。
このドラマのクライマックスは昭和16年2月11日の東京日劇を切符のない客が7周り半取り囲んだ公演。日中戦争の重苦しい時局に市民たちが中国人歌姫の唄声を聴きたいと列をなした。上戸彩の華やかなチャイナドレス姿での歌唱シーンが残された。

第2部上海編、日劇公演大成功と同時に「李香蘭は日本人では?」疑惑が高まる。だが、大スターは国籍を超越する存在。この時代は女優のプライバシーを吹聴するようなことはなかった。
松岡外相の息子(海軍短現の特権学生)がファンレター書いて来る。なんでいちファンが個別に面会できてるんだよ?上級国民の特権濫用。
中華電影の会長川喜多長政が沢村一樹。この人は李香蘭を助けるために奔走。
服部良一が前田耕陽。この俳優の存在をここ数年まったく忘れていた。調べてみたら今も俳優活動をしてた。

日本の敗戦で上海での日本人と中国人の地位が逆転。街角の中国人が日本人を見ると薄ら笑い。日本人は収容所へ。北京の山口家も全財産を国民党軍に没収。川島芳子は逮捕。だが、この征服者も数年後には同じ目に遭うけどw

李香蘭は文化漢奸として上海競馬場で銃殺刑になると新聞に載る。淑子は日本人なのに!
上海の有力者たちから「中国人として上海に住めば漢奸の件はチャラ。そのかわりに視察旅行に行くように」と持ち掛けられる。だが断る。「私は日本人だから日本の国策に従った」「中国のスパイにはならない」
ロシア人幼なじみリュバチカ経由で戸籍謄本を手に入れる。上海軍政部が紙切れをなかなか認めようとしない。待たされようやく無罪と帰国を勝ち取り引き揚げ船の乗り込む。青春のすべてだった中国との別れ。船で流れるのは夜来香のメロディー。

そして52年後、ここで初めて野際陽子さんにキャストが代わる。エカテリンブルクでリュバチカと再会。そんな激動の人生。
とにかく長かったけど、これも日中の歴史。知らなかったことを知れた。
データが劣化してたけどほぼ全て見通せてよかった。上戸彩のチャイナドレス姿がよかった。

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